自民幹事長「法には抵触せず」 党大会での自衛官国歌斉唱巡り …… 制服着用は自衛官として参加。私的なら一般にスーツ着用だが、その前に施行令87条第2項の3に違反では?
毎日新聞の記事である。
この発言自体が既に異常事態だろう。普通は、防衛大臣が責任を取って辞任か更迭されるべきレベルの話だからだ。
そもそも制服を着て行事・一般イベント・催事・祭事などに参加している場合は、私人ではなく公人と見なすのが日本及び世界における軍人及び自衛官、国家公務員、公務員の通例である。民間でも、会社章などの徽章(きしょう/身分や立場を示すピンバッジ)が付けられている場合は、私人ではなく組織からの出席として扱われる。
今回写真などで出ているものが、AIなどで加工されたもので無いなら、これは公式に自衛官として参加したと見られる。即ち、参加した自衛官は処分対象になり、それをもしも防衛大臣や士官、官僚が指示したり、総理や閣僚、その他大臣などが知っていたのであれば、全て相応の処分(説明責任)が必要になる。
何故、そういうことになるかというと、これは文民統制の問題に繋がるからである。
今、米大統領と米国務大臣などの動きを見て思う人もいるだろう。あれは、これとは別問題だが……
そもそも軍事力というのは、時として社会に大きな影響を与える毒になることがある。
政権に極端に軍事力が近づいてしまうと、国民が総選挙などでその政権を否定して、違う政権になったときに、古い政権と一緒にクーデターを起こすことだってないとは言えない。日本は、実際に大日本帝国時代に何度か軍部が暴走しており、軍部の中でも陸、海、満州で統制が一体化せず各々勝手に動いていたという現実がある。最後の最後には、玉砕放送の前後にまでクーデターを企てた軍部の輩までいたほどだ。
だから、政治や企業などとの関係を自衛隊法と国家公務員法で縛って、特に政治については特段の影響を与える行事への参加を認めない仕組みを作ったのだ。そうすることで、国民の投票によって選ばれた政治家による文民統制が常に安定して働くようにしているのである。その下で、軍事力は動くというわけだ。ちなみに、選んだ国民が首相や大統領の野心や乱心に気が付かないと、米国のようになる。もっとも米国は、民主党の候補だったハリス氏との消去法で選ばれた訳だが……パーマーあたりが候補だったら違ったかも知れない。
今回のこれがどんな問題かというと、端的に言えば自衛隊法第61条における
政治的行為の制限に抵触する恐れがあるのだ。
これの本則では
隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。
2 隊員は、公選による公職の候補者となることができない。
3 隊員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。
3 隊員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。
というのがある。
そして、これと対になる自衛隊法施行令というのがある。これが重要なのだが、
第86条で法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的目的は、次に掲げるものとする。
一 衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の長又は地方公共団体の議会の議員の選挙において、特定の候補者を支持し、又はこれに反対すること。
二 最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査において、特定の裁判官を支持し、又はこれに反対すること。
三 特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対すること。
四 特定の内閣を支持し、又はこれに反対すること。
五 政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対すること。
六 国又は地方公共団体の機関において決定した政策(法令に規定されたものを含む。)の実施を妨害すること。
七 地方自治法に基づく地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ、又は成立させないこと。
八 地方自治法に基づく地方公共団体の議会の解散若しくは法律に基づく公務員の解職の請求に関する署名を成立させ、若しくは成立させず、又はこれらの請求に基づく解散若しくは解職に賛成し、若しくは反対すること。
二 最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査において、特定の裁判官を支持し、又はこれに反対すること。
三 特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対すること。
四 特定の内閣を支持し、又はこれに反対すること。
五 政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対すること。
六 国又は地方公共団体の機関において決定した政策(法令に規定されたものを含む。)の実施を妨害すること。
七 地方自治法に基づく地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ、又は成立させないこと。
八 地方自治法に基づく地方公共団体の議会の解散若しくは法律に基づく公務員の解職の請求に関する署名を成立させ、若しくは成立させず、又はこれらの請求に基づく解散若しくは解職に賛成し、若しくは反対すること。
第八十七条で法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的行為は、次の各号に掲げるものとする。
一 政治的目的のために官職、職権その他公私の影響力を利用すること。
二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し、又は提供せず、その他政治的目的を持つなんらかの行為をし、又はしないことに対する代償又は報酬として、任用、職務、給与その他隊員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て、又は得させようとし、あるいは不利益を与え、与えようと企て、又は与えようとおびやかすこと。
三 政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費若しくはその他の金品を求め、若しくは受領し、又はなんらの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与すること。
四 政治的目的をもつて、前号に定める金品を国家公務員に与え、又は支払うこと。
五 政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し、又はこれらの行為を援助すること。
六 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。
七 政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、若しくは配布し、又はこれらの行為を援助すること。
八 政治的目的をもつて、前条第一号に掲げる選挙、同条第二号に掲げる国民審査の投票又は同条第八号に掲げる解散若しくは解職の投票において、投票するように又はしないように勧誘運動をすること。
九 政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し、若しくは指導し、又はこれらの行為に積極的に参与すること。
十 政治的目的をもつて、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し、若しくは指導し、又はこれらの行為を援助すること。
十一 集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。
十二 政治的目的を有する文書又は図画を国の庁舎、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他政治的目的のために国の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
十三 政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し、若しくは配布し、又は多数の人に対して朗読し、若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し、又は編集すること。
十四 政治的目的を有する演劇を演出し、若しくは主宰し、又はこれらの行為を援助すること。
十五 政治的目的をもつて、政治上の主義主張又は政党その他政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これに類するものを製作し、又は配布すること。
十六 政治的目的をもつて、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し、又は表示すること。
十七 なんらの名義又は形式をもつてするを問わず、前各号の禁止又は制限を免かれる行為をすること。
二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し、又は提供せず、その他政治的目的を持つなんらかの行為をし、又はしないことに対する代償又は報酬として、任用、職務、給与その他隊員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て、又は得させようとし、あるいは不利益を与え、与えようと企て、又は与えようとおびやかすこと。
三 政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費若しくはその他の金品を求め、若しくは受領し、又はなんらの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与すること。
四 政治的目的をもつて、前号に定める金品を国家公務員に与え、又は支払うこと。
五 政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し、又はこれらの行為を援助すること。
六 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。
七 政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、若しくは配布し、又はこれらの行為を援助すること。
八 政治的目的をもつて、前条第一号に掲げる選挙、同条第二号に掲げる国民審査の投票又は同条第八号に掲げる解散若しくは解職の投票において、投票するように又はしないように勧誘運動をすること。
九 政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し、若しくは指導し、又はこれらの行為に積極的に参与すること。
十 政治的目的をもつて、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し、若しくは指導し、又はこれらの行為を援助すること。
十一 集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。
十二 政治的目的を有する文書又は図画を国の庁舎、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他政治的目的のために国の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
十三 政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し、若しくは配布し、又は多数の人に対して朗読し、若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し、又は編集すること。
十四 政治的目的を有する演劇を演出し、若しくは主宰し、又はこれらの行為を援助すること。
十五 政治的目的をもつて、政治上の主義主張又は政党その他政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これに類するものを製作し、又は配布すること。
十六 政治的目的をもつて、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し、又は表示すること。
十七 なんらの名義又は形式をもつてするを問わず、前各号の禁止又は制限を免かれる行為をすること。
2 前項各号に掲げる行為(第三号の場合においては、前項第十六号に掲げるものを除く。)は、次の各号に掲げる場合においても、法第六十一条第一項に規定する政治的行為となるものとする。
一 公然又は内密に隊員以外の者と共同して行う場合
二 自ら選んだ又は自己の管理に属する代理人、使用人その他の者を通じて間接に行う場合
三 勤務時間外において行う場合
という自衛隊法施行令という令があるのだ。
公的だったらアウトだったと思い込んでいて、私的(個人的)なことなので、という話で幹事長が通すのであれば、これは残念ながら施行令87条第2項3違反になるので、ギリギリも何もなくアウトになるだろう。
まあ、国歌を歌うこと自体は政治的な意味があるものではないというなら、その限りではないのかもしれないが、小泉大臣がSNSにアップしてしまっているなら、それは政治的な意味合いを持って行われたと解釈することが容易に出来る訳で、普通に考えるなら最低でも防衛大臣を速やかに更迭すべきである。
後は、総理が知らなかったならその限りではないが、任命責任の追求はされるだろう。
本来ならこういう形で問題視されることになる。今は報道も社会も政治家の法律の遵守に対して愚鈍になっているので、そこまで至らない可能性が高いが……これが、末期の石破時代ならかなり世間に強く叩かれたことだろう。今の政権でそうなるかは分からない。というか、新聞もテレビも事実に対する対応の手段よりも、専門家がどこが悪いか、悪くないかで議論するような話に持っていって時間を稼ぐのだろう。
しかし、当該の記事を読んで思うのは、もう官僚もザルなのだろう。底の抜けたバケツぐらい酷いのかもしれない。官僚になりたがるエリートは今や少ないというのも影響しているのかもしれない。質が足りず必要な量の確保になるということだ。
法令とかを把握していないから、大臣などに求められたらその通りに動くだけになっている可能性が高い。もっと言えば、大臣や大臣の側にいる秘書も担当になった後に、それに関係する法令を読み込んでいないと見られる。結果、こういうことを安易にやってポイント稼ぎをしようとするわけだ。
元来、軍や警察などの組織は、盾<防護>でもあるが、使い方を誤れば鉾<武力>として危険な存在にもなり得る。
だから、過度に政治やビジネス(知名度向上など)に利用してはいけないと定めたのにも関わらず……これである。
力は守る為には惜しみなく使われるべきだが(これが自衛官や警察官、保安庁などに対する社会の敬愛と彼らのやる気や自信に繋がる)、それ以外の戦い、産業、社会政治からは中立的で距離を保つべき存在だ。それを戦後80年以上過ぎて忘れてしまっているのが今の政治や社会なのかもしれない。そういう社会になればなるほど、トランプ大統領のような人間が政治に生まれやすくなることを意味しているのだから、社会全体がそれをもっと自覚すべきである。
尚、自衛官には選挙権がないと思っている人もいるかもしれないが、選挙権はあるし、投票も出来る。その時に特定の候補者に入れることも可能である。もちろん、衆院選で行われる裁判官の国民審査も可能である。即ち、選挙そのものの権利を失っている訳では無い。失っているのは、政治や選挙に関わる活動や発信をSNS、ビラ、演説、公開討論などで行うことなどになり、広く頒布の目的を持ってそれを行うと、違反行為になる。
今回の場合は、歌った自衛官どうかというと、歌った本人は大臣などの指示があったなら、処分対象になるものとは言えないだろう。問題になるのは、SNSで発信した大臣や自衛官に出席と歌うことを指示した官僚、閣僚、幹部、上官になると思われる。本人に自発的出席の意向があったなら、その限りではないが……
はっきり言えば、こういう政治に関わる場に自衛官を呼ぶことは、何のメリットもないが、(他の政党も同じかもしれないが)自民党もポンコツなのでそれすら忘れて政治利用に使ったら、法令違反だと言われて……焦っているというのが現実だろう。これが、社会で特段問題視され更迭などに広がるほどには今の政権の支持率であれば低いと思うが、本来なら、最低でも防衛大臣は更迭すべき事案である。
まあ、よほど支持率が低い内閣でも、これですぐに首相が変わるかというと、支持率は一段下がるものの倒閣まで突き進むかと言えば、戦争などを知る世代がどれだけいるかによるだろう。昭和の頃ならこれが倒閣の始まりになった可能性は高く、凄い支持率が高い政権でも、数ヶ月で解散に追い込まれただろう。平成の中期を過ぎた世代になると、これが支持率が下がり始める切っ掛けで、大臣の更迭をして何とか持ち堪える感じ。
平成末期から令和の今だと、大臣にスポットが当たる可能性があったとして、大臣を更迭せずに説明責任を果たさせるで有耶無耶にして終わり、支持率はこれだけでは大して変わらないか少し下がってくるぐらいと見られる。それで許されるから、国民がやって欲しい政策よりも、自分がやりたいことを、何でもやりたい放題する政治になってしまってきているとも言えるが……
そういうところをもっと大事なことがあるとか思い込んで、国民自身が理解していないのが今の世だろう。
でも、明文化されているルールを守らない奴は、そもそも自分の好きなことを優先するだけの人である。
