Samsungが1.4nm(SF1.4)をキャンセルされる恐れという噂がXで流れる
wccftech.comの記事である。
流しているX.comのリークは1つだけであり、恐れがあるという内容なので、実際には投資するかどうかの検討段階にあるとかそんなところだろう。そもそも、2nmというノードも実際のトランジスタゲート長は2nmではなく、5nm水準である。トランジスタを繋ぐ回路は2nmの部分もあるだろうが、FinFET以降はこの回路の太さも場所ごとにリークが多くなるとエラッターに繋がる場所は、太さをある程度フレキブルに変更出来る時代になっており均一ではない。即ち、この半導体をnmで表記するやり方も、企業がある程度自由に決められるのであって、それで同じ数字の他社のノードを同じものとして認識出来る訳ではないし、そもそも同じ会社のノードでも、同じノードで製造していても、製造している半導体の種類によって平均した回路の質(細かさ)は変化することもある。
元々、ゲート長で数字を出していたIntelがIntel 7(10nm)以降でTSMCやSamsungと合わせてしまった今、あまり価値はないと思った方がよいだろう。
その上で、Samsung側がもしもSF1.4という世代を次世代として開発していて、その他にSF1.2やSF1.6のような計画がないなら、SamsungはSF2を最後に新しい世代の開発を断念し、今のところはSF2までで打止めにする可能性が高い事を示している。
ただ、1.xnm世代は、水平でトランジスタスイッチを構成していたものを90度スピンさせて垂直にし縦に積み上げる形に変えるものなので、シリコンウェハーの面積比では確かに集積できるトランジスタ数を増やすことも出来るが、製造の複雑度が上がる上に、立体的なスイッチ構造になり熱が隠る恐れがあるので、高いクロックで動作する高性能高発熱のトランジスタ部分にそれが使えるかどうかは分からない。
この問題は、TSMCやIntelにも言えることで、N2やIntel 18A/20A世代においては成功すれば、電力効率や熱効率の改善を十全に果たすが、その先にあるこの16A以下の世代がそれを保証するものでは既にないのだ。研究や開発は続けているものの、すぐに投入できるとは誰も思っちゃいないだろう。投入できると言い続けたのは、Intelの暫定じゃ無かった前社長ぐらいである。TSMCもN2の安定にいまはコストを割いており、先はまだはっきりとはしていない。
Samsungは、SF1.4をいつまでに投入すると決めていたなら、それを一端仕切り直す可能性が高い。これは、GAAの投入を急いだ結果コストだけがかかり、結局他社と同時期まで掛かってやっと安定するかもしれないぐらいになったことを考えると、急ぐ理由がないと分かったからだろう。急げば設備投資のコストが大きくなり、成功しなければ膨大な損失になるからだ。ならば、他と同時期に投入できる程度に調整した方が良いし、そもそも2nmほど研究結果も出ていないなら、NANDフラッシュなどで成功しているTSVなどの方向に投資を進めて、積層による密度向上を図る手もある。
もちろん、トランプ大統領の関税政策などを見て、撤退を視野に入れているのかもしれない。
いずれにしても、SF1.4はまだブレークスルーが必要なはずで、今のままだと単純にこれまでの明らかに小さくなり高速になり、消費電力が絶対に下がる微細化になるとは言えない。そのブレークスルーをSamsungが見つける必要も今はないのである。むしろ2nmを着地させることの方がこの事業の存続には必須であり、それなら一端研究のレベルを下げてというのは有り得ることだ。
もっとも、もうシリコンベースの半導体は限界点に到達しているといっても過言では無い。もちろん積層や、トランジスタを縦構造にすることで、まだウェハインチ辺りのトランジスタ数を増やすことは出来るが、トランジスタが増えて性能も上がって、クロックも上がり、消費電力が明確に大きく下がる時代は終わった。
これからは、極限まで性能を上げるなら多層にするか、複数のチップを接合して使うかといった方向になっていくだろう。今も既にそうだが価格も、一定の性能を超えると、コストが下がらずむしろ今よりも上がるはずだ。それこそが、プロセスノードの限界点であり、今まさにそこに到達して来ている中で、例え14Aクラスの半導体をどこよりも先に開発し、量産出来る体制が出来たとしても、N2やSF2よりも優秀である部分がいくつもなければ、移行が進まないという結果になるだろう。