埼玉・八潮の道路陥没「本格復旧には2~3年」…… 応急はもっと早く、一方で本格は最小でもそれぐらいと述べたのですよ。
読売新聞オンラインの記事である。
今回は、下水管が地下10mより下で最後の点検後3年経過の間の早い時期に穴が出来ていたと思われるため、大陥没になったと思われるが……その代償は現在1名の安否不明の行方不明者と大きな陥没と、そして大規模な節水要請となった。
ちなみに、一部のニュース情報番組を数日見た限りでは空洞の調査にドップラーを使う調査車を使ってという話も出ていたが……今回の八潮のケースだと半年や一か月前にその調査車で回っても危険な空洞は確認出来なかった恐れすらある。その辺りの報道はないのが悲しいところだ。きっと問題の奥深さを報道機関も理解出来ていないのだろう。
今回の下水管破損がもたらした問題で重要なのは、地中深くにあるトンネルや配管ほど破損した状態を放置していると、空洞が縦に大きくなること、地中奥深くだと、検査車両で直近の検査をしていても、陥没に繋がる空洞まで検査音波が届かず見落とす可能性があることを示した事である。基本的に、走行しながら検査出来る音波探知車は浅いものなら2m程度、深い物でも5~6mぐらいまでしか検査出来ないものが多い。それ以上になると、定点観測機材を使うか、ボーリング型の掘削調査になる訳だ。
だから、本来なら地中の深い場所にある埋没管やトンネルほど、崩落危険度が多少でもあるなら、速やかに応急措置を講じることが望ましい訳である。
八潮のこのニュースではタイトルでは2年~3年としているが、大事な部分が抜けている。本格復旧で見た時、少なくとも2年~3年である。これは、2年~3年ではなく、完全復旧を見通すなら今の時点で2年~3年は最低条件だと言っているのだ。
これは端的に言えば、応急復旧は別だと言うことだ。この応急復旧というのは、取りあえず他に周辺の陥没などの危険がない、周辺住民の基本的な生活は問題ない状態だが、道路などは迂回路を使う必要があったり、多少の不便が生じることがあるというものである。
まあ、他に大きな問題がないなら応急復旧や措置ぐらいなら、数ヶ月(早ければ1ヶ月~2ヶ月で出来るかも知れないし、1年とか掛かるかも知れない)ぐらいで出来るとは思うが……。
その一方で、完全な形(元の姿)となる本格復旧は今考えられる状態にないということの裏返しでもある。
何故かというと、これの一番恐ろしいパターンは、同じような5メートルより下にある下水管の破損や破損が近い老朽管が他にあった場合、上からの空洞検査だけでは状態が分からない可能性もあり、中を見る必要があるからだ。
そして、既に壊れた場所より、それを優先しないといけないのだ。今の崩れた場所よりも、まだ崩れていない他の場所の対策を優先しないと、そっちが崩れた時に人的被害や、修復に対するコストが爆発的に増えることが分かっているからだ。今回の例がそれだ。だから、まずそういうところの調査をして、それが確認出来たところで、下水管の流れをどのように切り替えて行くかを決めて、最後に計画に基づいて対処を進めるということになる。
そうなると、応急的な措置は早めに行われるが、最終的に元の状態に戻すまでには残念ながらいつになるかを今の段階で説明出来ないという話になる。ただ、一応の目安として言えば、普通(これまでの工法から考えた場合)なら2年か3年は掛かる内容だろうと述べたに過ぎない。
即ち、報道機関は要点が間違っているとも言える。
本来なら、本格復旧より、周辺住民が陥没の危険度などを認識しなくてもよい期間が被害者の捜索が終わった次に来る2番目である。そこがいつなのか?が大事だ。そして、最終的に完全に元の状態に戻るのが、少なくとも2年~3年はかかるというなら、本格復旧は今の見通しだと2年~3年以上と書かねばならないのである。
逆にいえば、記事の内容として見ると周辺住民などが知りたい要点から外れていると言える。