「消えたコメ」茶わん26億杯分 在庫分散、国も把握できず…… これをゴシップというのだよ。

日本経済新聞社の記事である。


日経もこんな内容で記事を書く時代なんだと思うと、泣けてくる。まるで雑誌である。本当に、昨日だったか書いたゴシップ記事の話のようだ。そろそろ新聞記者もちゃんと計算して、おかしな点に気付けよと言いたい。

茶碗1杯は大人が食べる標準的な大きさの茶碗なら凡そ白米だと60~70gである。65gとして、計算すると26億杯(碗に盛った食べ物の場合の単位は、膳が正しい)は17万トンではなく、16.9万トンになる。

じゃあ、この量は多いのかというと農水相が毎年の米の生産量と各食料の国内自給率のデータを見ると分かる。

ここで大事なのは、国民が食べる米の量の平均が年間51kg程(令和5年度ベース)であること、令和6年の概算での収量が734.6万トンだったという点だ。これを元に計算すると、実は人が食べる米(史実米)の生産量と実際の消費量から見た残量が分かるのだ。


日本の総人口は2024年10月度時点で1億2379万人である。これを元に、計算すると、日本の米の生産量は734.6万トン、1人当たり51kgを年間で平均して食べていて、日本の人口1億2379万人が年間で食べる量は、6,313,290,000kg、トンに換算すると631万3290tという計算になる。すると余りが103.5万トンほどになる訳だ。716.6万トンだった一昨年と比較しても十分に余ることになる。尚、年間の政府備蓄は20万トン/年の追加になる。輸出米は年間で約2万トンのはずで、最近は増えていても5万トンは超えてないだろう。

昨年から今年の次の新米が出る迄で考えると、問題は無い。

消えたのは17万トンなのか16.9万トンなのか知らないが、それが消えたとしても、本来なら米が不足するなんてことにはならないはずなのだ。まあ、実際には全ての米がご飯として食べられるわけでもない。子実用の中には、もち米もあり、それは20万トン前後生産されている。

これらを令和五年の出荷量716.6万トンで計算した場合、そこから推定で45~60万トンぐらいが市場で、単体のお米として販売される予定のない子実用米である。666.6万~671.6万トンということになる。年間で国民が消費する米の量は、631万3290tである。

余りは、35~40.3万トンである。まあ、ギリギリと言えばギリギリであるが、17万トンをここから引いても、まだ17から20万トン以上残る。


それが、インバウンドせいじゃないかと言っていたのが昨年のことなので、その話も計算して見よう。

実際にインバウンドで来ている旅行客数は、昨年年間36,869,900人で、2023年の報告だと旅行目的の平均滞在日数は6.9日である。
例えばこの人達が、7日間3食茶碗1膳分の米食(65g)をしたとしよう。日本人ですら3食米を主食にしている人は少ないと考えると、数字的には高めのはずである。その条件でも、49,608,450,450gの米を消費する程度になる。トンに換算すると49,608トンである。5万トンだ。

この旅行者が米を食べ尽くすことはあり得ないのである。


最後にもう一つ書いておくと、輸入米も日本にはある。これは、昨年だと10万トン輸入されている。それでも、米不足とされた。それは本当に26億膳分とかのレベルだったというなら、おかしな話である。少なくとも30万トンぐらいが行方不明で、さらに今期は50万トンぐらい行方不明じゃないと、価格が高値になることはあり得ないのである。



もっとも、米の価格も実は農林水産省が相対取引価格を発表している訳で、それを農水省が決めているのに下げられない時点でおかしなことである。消費税収等を稼ぎたいから、何が悪いとか米が消えたとか、理由を付けて値上げしている可能性も無きにしも非ずである。


新聞社などがこういう地道なデータ処理から問題を取材し、探ってくれればどこか原因にたどり着けるかもしれないが、そもそも、どの社もずっと自称専門家と肩書き専門家に取材して、可能性だけを引っ張り出すいわゆるgossip(噂)を続けている。それが、結果的に何者か分からないが、価格をつり上げたい人が儲ける現場になっているのであろう。それが、財務省や農水省が狙った税収増の戦略かもしれないし、どこかの企業や商社が稼いでいるのかもしれない。少なくとも、農家が意図してやっているということはない。消えたではなく、消えたものを見つけ出したとき初めてそれは事実になり記事になるのだ。

有識者も政府や官僚も消えているという話で済ますなよという話でもある。そこを、記者が政府や農水関係者に対して追求するのも仕事だろう。なんで日本は、記者がそれすらやらなくなったのだろうか?もう、謎だ……と記事にすればOKという段階で、平凡な週刊誌と変わらない。だから、過激に突っこんでいく週刊誌が、流行しそれを真実だと思う人が増えてしまったのだろう。