もう上位CPU価格は上がっても下がる事はない …… TSMCの3nmウェハー単価は18000ドルに突入。10年で3倍超

tomshardware.comの記事である。


これは、Creative StrategiesのBajarin 最高経営責任者(CEO)が報告したレポートの抜粋のようだ。

記事はAppleのA7(2013年、Samsungで製造された28nm High-K Metal Gateプロセス、iPhone 5sに搭載された)から現在のA18 Pro(2024年、TSMC N3E FinFET)での価格を最初に書いているが、当時は28nm向けのシリコンウェハー1枚辺りの価格が5000ドルだったそうだ。それがA17やA18の現行世代では、18000ドルまで上がっているという。

ちなみに、N2 GAAFETプロセスでは、安くても2.5万ドルを超える見込みで、3万ドルに大台に載るともされている。昔は、製造コストや開発コストもそれほど上がらなかったから、新世代のプロセスの価格を前の世代の最上位と同じに据え置いて売っていたが、今は開発コストや製造上の難易度(複雑度)が上がっている上に、物価の上昇によって以前より猛烈なペースで価格が上がってしまった訳だ。

一応記事では、A7の頃はトランジスタ数が10億しかなかったが、今は200億にも達しているということで、価格が上がる理由を説明している側面もあるが、それは価格とは関係ない。基本的に、技術の難易度が限界に達しつつあるから、何らかのブレークスルーがない限り価格が下げられないという点と、物価の上昇で価格が下がらなくなったという点の2つが影響している。後は、その価格でも買い手がいるかいないかの問題である。今はまだいるから、上がっているということになる。

尚、記事の後半には、プロセスの成熟に対するトランジスタの集積密度の変遷も書かれている。最近は伸びが鈍化しており、密度向上がもっとも進んだのは、Apple A11とA12の頃のEUVへの転換をする頃だったとしている。そして、最新のノードでは、SRAMのスケーリングが困難になっており、密度の向上が著しく低下しているとしている。

Appleは現在性能の向上(IPCの上昇)よりも電力効率の改善に重きを置いているのもその影響で、それが功を奏しているとも評価しているようだ。


まあ、次のノードは同じダイサイズならもっともっとお高くなり、下手すりゃ今の2倍に達してもおかしくない訳だ。そうなると、上位のスマートフォンの価格はさらに上がるかも知れない。その価格で売れるならば……だが、売れなければ価格は下がるだろうし、半導体のサイズも小さく抑えるか、性能を引き下げることになるだろう。

ただ、どちらにしても最上位と呼ばれる製品の価格は、今後売れる間は下がる事はないということを示している。強いて言えば、IntelやSamsungがTSMCと同等のプロセスノードを商品化できて且つ、価格競争をしてくれればもしかすると多少は下がるかもしれないが、それでも18000は超えるだろう。価格において競争はとても重要と言うことだ。