「紅麹」服用、死亡者計4人に 新たに2人、遺族から連絡―小林製薬・:・ 止(と)められない、止(と)まらない

時事通信社の記事である。


健康補助食品(いわゆるサプリメント)は、特定保健用食品でも、機能性表示食品でも

食品衛生法
食品表示法
食品安全基本法
流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法

に基づく調査が必要な要件となる。あくまで食品である。ちなみに、
特定保健用食品と機能性表示食品の違いは、特定保健用食品は行政府(消費者庁)が認定した食品、
機能性表示食品は事業者・事業団体が規定に基づいて効果の資料を提出申請して、書類不備の有無だけを確認した上で行政府(消費者庁)からラベルを取得した食品である。

後者は効果があることを行政府が明確に認めた食品ではない。なんでこんな制度があるかというと、第二次安倍政権におけるアベノミクスの一つの柱だった政策で作られたものだからだ。消費者の観点で作った訳ではなく、こういうラベルを作ると、売れるという企業の観点を取り入れたものだろう。いわゆる最近発覚した裏金の成果だと思われる。当時は、ニュースにはなった。報道機関も悪い言い方はしていなかったが、それは今のテレビや新聞雑誌の広告がそういう商品だらけになっていることを考えると、分かるだろう。


その上で言うとこの事件は、自治体が初動対応する事件である。
どういうことかというと、大阪が既に動いているが、食中毒などと同じで主として動くのは、地方の衛生管理局(保健所)になるのだ。もし、これに事件性(毒物などの意図的混入)が疑われるなら、各県の警察が動くことになる。

だから、ここまで時間が経過してから発覚したとも言えるだろう。

私が確認した限りでは、ことの発端は昨年のようだ。9月以降に生産された紅麹のサプリメント(コレステヘルプなど)において、何らかの想定外の成分が含まれていたものがあったようだ。ちなみに、この期間でサプリメントを製造をしているのは、小林製薬に関係する3つの工場で大阪工場(2023年12月末に閉鎖)、富山小林製薬(富山県)、アピ池田工場(岐阜県)だったようだ。昨年9月以降なので、既に閉鎖済みの大阪工場も含めて問題が発生しはじめたと考えられる。

そして、最初に指摘があったのは、医療機関からで大々的に販売停止と回収の発表をする2ヶ月前だったようである。ただ、この指摘というのが、シトリニンが含まれているのでは無いかと言う話だったようで。そのピンポイント調査をしたようだ。そして、個別検査をして含まれていないことを確認した訳だ。だから、販売続行されたと考えられる。

で、それから2ヶ月立って止まったのは、きっと何人も報告が上がり始めたことで、正常品と、問題があるとされた品とを比べる追加の(物質/原子)スペクトル分析を行ったのだろうと思われる。そこで、何か分からないが一部のロットに、本来は含まれていないはずの物質があるという結果が見られたと考えられる。そこで、まだ何かは特定できないが、出荷を取りやめ、回収に動くことにしたのだろう。


即ち、毒性や作用はまだ不明だが、一部のロットにはこの原因になった可能性を伴う異物が入っている可能性が高いということだ。ただ、腎臓疾患は症状が出にくいので、気が付かない人もいるだろうし、元々コレステロールとかの値が悪い人は、疾患が既にある人も含まれるはずなので……結果的に、それが影響していると思っていない人も多いし多かったはずだ。医者でさえもそう思っていたはずなのだ。それが、全ての情報が重なるにつれて、そういう問題じゃ無さそうだとなり、どんどん被害の可能性がある報告として上がりはじめた訳だ。

今後も、可能性死亡者はどんどん増えていくことだろう。ただ、本当にこれが毒であり原因なのかは分かっていないので、最終的には5月頃までに出るとされる分析結果を待たないと何とも言えないだろう。多分、これほどの大事になっていて、厚労省も動いているので、遅くても来週中ぐらいには出させるとは思うが、どういう理由で最終的な物質特定が出来ないのかも分からないので、最悪で5月頃になるかもしれない。

ただ、それがもし毒で全て因果ありになるかは分からない。急性で発症してすぐに亡くなられていたりすると、その可能性は否定できないという形になると思われる。



この問題が複雑になっているのは、食品なのに薬のようなものだからである。薬や医薬部外品なら、重篤で未知の症例があればすぐに厚労省に報告されるからだ。しかし、食品の場合は、最初に書いたように、薬や医療に関わる法律ではなく、食品の安全や衛生に関わる法律に基づく、だから、所管するのが主に事象発生源の自治体になる。

さらに、ややこしくしているのは、機能性表示食品というお墨付きに見えるラベルがあったことだ。これによって、まるで国が認可した薬のように機能しているからである。でも、この機能性はただの機能性を示す表記基準に従っているよというラベルなので、意味があると思う方がおかしいが……まあ、これがアベノミクスの成果の一つなんだろう。

即ち薬っぽいけどあくまで食品。だから、食品の範囲でのルールしか適用されない。よって、それにそって調査していたら、酷く不味い状況になりつつあるというのが今の現状になるだろう。小林製薬は、本当に会社の存続にも関わりかねない状況になり始めている。ただ、実際問題として、これはあくまで食中毒か食品に意図的、またはたまたま異物が入ったといったそういう話である。味噌に虫が入って回収と同じなのだ。

今回は食害が出ているので、食中毒案件に近い。でも、世間から見ると健康食品が薬に見えている人が多いので、薬としての対応を期待している訳だ。特に、服用したつもりの者(これは食品なので食べ物であって服用ではない)は……そう考えるだろう。

どちらにしても、飛び出ているスペクトルが何だったのかを早急に示さないと、この問題は前進しない。しかし、昨日の報道の段階では、1ヶ月~2ヶ月で最悪5月頃という見通しである。大学と連携して調査しているようだが、それがもし国公立の大学ならば、自治体などの行政府がどこまで動けるかによって、前倒しできるだろうが、そういう動きを自治体側や国の行政機関が見せているかどうかも、重要である。


この先どうなるかというと、報道もだいぶセンセーショナルに伝えているので、小林製薬は本当に創業以来の危機に向かっていくかも知れない。また、紅麹を使っている他のサプリメントなどにも影響は広がるだろう。毒性がないものでも、販売減などにむかっていくということだ。また、紅麹をつかっていないものでもサプリメントというだけで影響が出てくるかもしれない。実際問題、サプリメントは健康を維持するのに手軽だが、病気などを治すものでは無いし、飲み合わせや日頃の食生活で接種する栄養価とのバランスによっては、体調を中長期的に悪化させる場合もゼロとは言えない。

そういう部分に対する考え方も、これを機会に考える人が増えるだろうから、在り方が変わっていくことだろう。

後は、特定保健用食品と機能性表示食品の2つに対する認識も世間にもう少し浸透することだろう。機能性の方は、特定にはなれない白物で、毎年後から調査が行われて機能性から落ちていく食品が一定数ある訳で、この機能性の廃止や、ちゃんと先に審査する体勢へと変更する動きが始まってもおかしくないだろう。まあ、自民党、公明党の政権の間は無さそうな気がするけど。

それから、この問題、小林製薬だけが悪いように報道は伝えていて、初動が遅かったと報道は言っているが、その遅い初動で小林製薬が発表しているプレスに対して、いくつかの報道機関の初動の報道は必要な詳細を伝えていないものがあったことも問題だ。

ここで大事だったのは、

「一部の紅麹原料に当社の意図しない成分が含まれている可能性」と「腎疾患」と「回収」の3点だから、この3つが絶対に入っていなければいけないわけだ。

それらを、3点セットで報道に入れて回収を急ぐように報道は後押ししなければいけなかったが、その成分に関する内容を端折っている記事が沢山あったのだ。だから、腎疾患がある人が発症したんじゃないの?という話が土日を跨ぐ形で出てしまっている。そして、週明けて火曜日辺りから、そうじゃないのかと理解し始めた人が増えて今に至る。

これは本来、情報を伝えるプロである報道も要点を認識せずに流したという点において、問題があることを示している。もちろん、それで被害が減ったとは言わないが、報道の仕方によってその事件や事柄に対する最初のイメージが大きく変わることを理解して記者は記事を書き、情報を伝えるべきであると、改めて書いておく。

ちなみに、健康のためにというなら、高いサプリメントを買うよりも濃縮果汁還元の野菜ジュースとかの方が、危険性は低いだろう。まあ、野菜ジュースでも極めて悪い腎疾患を抱えていると飲めないし、一部の薬との飲み合わせは注意が必要なんだけどね。何でもずっと使えば良いとか、絶対に大丈夫というものはないのだ。それは製造工程でも欠陥が生じることはあるということだ。ただ、人が亡くなるようなことは、そうそうない「はず」というだけで……実際には、分かっていないだけで、他にも何かの食べ合わせ飲み合わせで、障害に至るケースはおきているかもしれない。それが何らかの形で世間に規則性や法則性として示されたとき、こういう問題につながり始めるのである。