新しい有機発光ダイオードでOLEDの焼き付きを完全解消!?…… 世の中の研究者もだんだん誇大広告をする時代になったのか?

tomshardware.comの記事である。


記事によるとOLEDの焼き付き(経年劣化による発光量の低下)を減らす技術として、寿命の短い青色の有機発光ダイオードに絶縁カプセルを使った封止を行う方法が、論文として公開されたそうだ。これを使うと、省電力性の大幅な向上(数十パーセント)と焼き付きからの解放が永久に進むと記事ではしている。

まあ、実際には永久に焼き付きがなくなることは自発光型のディスプレイでは未来永劫ないが……
本当のところは、一般的な液晶(LCD)などのバックライト半減寿命である5万~10万時間の範囲内で且つ、常時同じ画像を表示し続けることがなければ、焼き付きは殆ど無くなると言うのが正しいだろう。

ちなみに、焼き付きは実際に焼けるわけではない。だからバックライトを使うものや光源反射型の液晶だと起きない。液晶で起きるのはドットが反応しなくなることによる抜け、または反応低下である。抜けは、液晶素子が故障して動かなくなるか、動きが不安定になることでバックライトの光が常時透過したり、常時透過しなくなるという現象だ。反応低下は液晶素子の動きにばらつきが生じる事で起きる乱れである。同じ色の画像ベタを表示しているときによく見られる物で、正常ならその色で安定した表示になるが、ちらちらと粒状ノイズが走るようになる現象である。これらが、液晶の場合における劣化だ。

OLEDの場合も、ドットとライン毎に表示制御するためこれと同じような症状を持っているが、この他に焼き付きがあるのだ。この焼き付きというのは、例えば青色なら青色、赤なら赤色のような色をずっと表示しているとその色だけが、だんだんと暗くなっていくという現象である。何故暗くなるのかというと、表示時間が長いドットは劣化して明るさが他の使われていない色より劣化するからだ。

これ、アスペクト比の異なる(上下に黒帯が表示される)映像を年中流している場合や、固定された文字をずっと表示している場合などに、ずっと同じ色の部分だけが極端に明るく見えたり、文字の部分だけの色味が変わることで、焼き付いているように見えることから、焼き付きと言われるようになった。昔はインフォメーション用の大型プラズマモニターやブラウン管モニターなどでは同じ表示をずっとしていることがあり、見られた現象だ。但し、一般の人がそれを目にすることは殆ど無かっただろう。それが分かるのは、朝など最初のOS起動時ぐらいだからだ。今は、業務用でも液晶(OLEDはコストが高いのであまり使われていないはず)なので、そういうことは殆どないだろう。

ちなみに、この焼き付きを防ぐためにパーソナルコンピュータで生まれたのが、懐かしのスクリーンセーバー(Screen Saver)である。

で、ここからが元の記事の本当の意味なる訳だが、RGB型のOLEDだと元々波長の短い青色の寿命が短いとされるため、それが出やすいとされる。その問題を大きく改善出来るかも知れないと言うのがこの技術になる。中小型のモニター(スマホやPC用の中型ディスプレイ)ではRGB型の製品を使っているので、この影響が出る可能性があるからだ。ただ、これで焼き付きサヨナラとは行かない。結局、明るさは必ず使っていれば低下する。それは、無機タイプのLEDの電球などでも起きる。有機タイプのOLEDで起きないはずはない。

ちなみに、LGなどが供給する大型のOLEDテレビだと3原色のOLEDは使っていないものも多くある。白色OLED(WOLED)と蛍光体フィルター(RGB+色抜きのW<白>)を使って色を出しているものもあるのだ。そういう製品だと物理的に青色の光源寿命が短いという影響は受けない。ただ、やはり焼き付きは使い方次第で起きる。だから、OLEDのモニターは点灯時間などを一定のブロック毎(メーカーによって範囲は異なる)に管理してブロック輝度キャリブレーションする機能を持っている製品も多くある。