Apple、Epicの開発アカウントを突如停止。Epicは痛烈に批判 …… 底なし沼に落ちたリンゴと名前負けしつつある叙事詩(Epic)
PC Watchとwccftech.comの記事である。
まだAppleとEpicは係争中のはずで、一応Epicに有利な方向になってはいる。ただ、法廷で係争するにも金が掛かるわけで、開発に掛かる費用を抑えて、こっちに躍起になってしまったことや、Epicが独自に開設しているゲームストアが未だに黒字にならないことなどもあって……厳しい状況にある。
法廷では、訴訟もEpicが一部勝訴するなどしているが……。ゲーム市場はコロナ後から縮小傾向にあり、最近はリストラを進めている状況にある。そこで、Apple向けの開発アカウント停止となると、さらに厳しい状況になるのか……ならないのか……ちょっと良く分からない。今どれだけApple向けに依存した売上げ利益があるのかは不明なので、何とも言えない。
ただ、確かなことはAppleもStore関税を固定したまま削減するつもりがないということだけは間違いない。むしろ今はインフレで物価が上がっているので、下げたくもない、本当は上げたいと言うのが本音かもしれない。ただ、それが露骨に見えるのでmacなどでゲームを充実させたいAppleに大手のゲームベンダーが乗っかるかというと、こういう話が出てくるなら厳しくなるだろう。Appleの気持ち一つで開発アカウントをロックダウンされる可能性があるのだから。
まあ、去年の状況を見る限り、Appleに対する評価は既に投資家のサイドでも急激に低下を始めており、これからApple向けにという企業が増えるとは思えないが……。だからこそ、ここを死守しないとAppleはじり貧になりかねない恐怖もあるのだろうと思われる。
ここからは蛇足だ。
ちなみに、この問題ジョブズ氏がいたならどうなっていたか考えると、外部ストアは認めないが、売上げ貢献度に応じた料率変動制にした可能性はあるだろう。サービスの負荷度と貢献度に応じてマージンを変更する仕組みを考えた可能性は十分にあり、その代わり、物価高などになると、最小値が上がったり、固定費分の支払いを求めたりという仕組みを作ったかも知れない。
こういうのはプログラムを組むまでは大変だが出来て安定してしまえば、運用も楽になり、評価も得られやすい上に、販促キャンペーンなどをタッグを組んで打つといったことも出来ただろうから、ジョブズならそういう仕組みを金を掛けても作って既に運用していた可能性は十分にある。それが上手く行けば、長い目で見てもっとカジュアルソフトウェアやゲームを引っ張り込めただろうし、新しいサードアプリの開発も進んだかもしれない。
しかし、ティム・クックの体勢では当初からそういう遊びは殆どなく、ジョブズ氏の後継としてきっちり果たしてきたのが足跡(ジョブズの後継として就任してから後の登壇など)をみると分かる。ジョブズが作り上げた仕組み(システム、当初一部はシナリオもあっただろう)に沿って進んでいたのが見えるからだ。だから、Lightning Connectorなどもギリギリまで頑張った。
これは、ジョブズ氏が提言し作ってきたエコシステムを守ることに強く執着していることを示している。そして、それを逸脱しないし出来ないと言う意識とプレッシャーがヒシヒシと感じられる。多分、これは相当生前のジョブズ氏に言われたことなのかもしれない。何せ、ジョブズ氏は1度Appleから追い出された側であり、その後どんどん売れなくなり、最終的にApple(当時はApple Computer)に、自分の作った会社NeXTが買収されそこから社長に返り咲いた人だ。その間にはOSのオープン化までした時期もあったほど揺れていて、ボロボロになっていた。
それをOSもサービスも当初のクローズドに戻し、オンリーワンにして立て直したのがジョブズだ。相当その反省と教訓があったはずだ。そう考えると、ティム・クックの体制はそれを堅実に守り続けてきたように見える。
そこにある意味、限界が近づいているのだろう。サービスの成長、新しい市場の開拓には魅力的なハードデバイスを出すというのもあるにはあるが、例えスティーブ・ジョブズが存命だったとしても、今も彼が、この世界にないような斬新なハードを出し続けていたとは私は思わない。ただ、今の現実にあるAppleと彼がもし存命であったと仮定したときのAppleは今とは違う会社になっているかもしれないと思う。下手すると、ハードを切り離してソフトウェアのメーカーとか、サービスのメーカーになっていてもおかしくない。Netflixのように映像制作とかに注力しているかもしれない。
ジョブズという人間は、そういう自由に理想を形にしながら、組織を変化させて良い方向に向けていく力を持っている人だろう。それに対して、ティム・クック氏は、とにかくある信念に基づいて形態を守る人だ。だから、こういう時に成長に繋がる妥協点や開発体制を作ろうという流れにならず、ダラダラとイメージにマイナスとなる案件が続くことになる。今まではそれでも、凄い新製品とか、販売数量の安定などで何とかなってきたが、ここに来てそれも陰ってきていると見られ始めているので……そろそろ、リーダーが変わる時期かもしれない。