EVがこれほど期待外れになった経緯とは…… Appleの開発断念で始まった逆戻りの話。

CNNの記事である。


そして以下はWSJの記事である。(有料)

さらにこのような記事増加の元となったがAppleがEV開発を断念したという記事である。

そもそもEVの普及を後押ししてきたのは、各国政府の補助金制度や減税政策だった。これがだんだんと厳しくなると同時に、中国景気の腰折れによって、EVの販売台数が激減し、さらに昨年は欧州で自動車運搬船の火災というセンセーショナルな事態が起きたこと、そして、欧米の冬場の異常気象でEVのバッテリー反応が冬に低下し、走行距離が落ちる事態も多発するなどして……評価が大きく下がりはじめた訳だ。

この他にも、この1年だけで、

・タイヤの摩耗が早い

これは、電気自動車の場合はバッテリー重量が車体重量を押し上げること、トルク性能が高く加速が良い上に、内燃機関の車ように燃費への影響が少ないので、ゼロスタートからの加速が内燃機関を使う車より速くなりがちで、低速で摩擦が起きやすい(ハイブリッド車でも同様の特性がある)などが上げられる。

・事故を起こすとバッテリーに一見損傷がなくてもバッテリーは廃棄物になる

これは、使われている電池の主要成分であるリチウムの鎖が崩壊すると燃焼発火が起きやすいため、再利用時の信頼性が担保出来ないからだ。だから、保険などの会社にとってもガソリン車ならそれほどコストが掛からない事故でも金が掛かることが痛手であり、企業的にもエコなのかが問題になるという話が出てきたわけだ。

・中国の販売減で一部EVの資産価値が大幅に目減り

これは、いわゆる車輌を有形財産やプレミアム試算投資として保有していた人が、その価値を失ったことで手放しはじめたということ。


などが記事でも示されるようになり、EVの未来は一気に剥落しはじめていた。そして、極めつけがAppleの開発断念である。AIにそれを集中し、一端は開発から手を引くことを選んだようだ。その流れのなかで、環境団体などは、EVの方が環境に良いと訴え続けているが、常識的に考えると、EVへの強い流れは一端弱まるだろう。

最も、完全にEVシフトが終わる訳ではないだろうが、一端はHVやPHEVなどへの寄り戻し向かうのは明確だろう。

ちなみに、日本ではEVの普及が他国よりも進んでいないが、その理由は単純だ。電気代が高いこと。元々補助金も弱く車輌の価格が高いこと。充電スポットが少ないこと。ハイブリッドが普及していること。ガソリン車でも燃費がそれなりに良い車種が多いこと。

そして、この国は南北に長く、島国で、列島の大半が平地ではなく山地や盆地である。それ故に雨期に相当する時期と蒸し暑い湿った夏、それから雪が多い冬というシーズンがあるだけでなく、それらの特色がたった半径50~200km圏内で変わるという世界でも珍しい先進国故に、フル電動車に向かないというのもあるだろう。まあ、政府は電動車普及を後押ししていたし、今も税制ではかなり踏み込んでやっているが……。国民はそれを望んじゃいない。日本では最終的にFCVをどうにか環境に優しい生成方法を見つけ出し、採算に乗せる方法を見つけて、普及させられるかどうかといったところだろう。


尚、この影響を期待外れの影響をもろに受けているのは、中国と米国、欧州である。特に中国はEVの販売が完全に失速してきているようで、今年の春節にはEVのトラブルに関する報道もいくつか流れていたようだ。次に買い換える時はEVではなく、PHVやPHEVを選ぶだろうという人も増えている。

欧州では価格が高すぎる現行の車輌を買うメリットを失っており、それより数年後に実現するであろうと考える全個体電池などを搭載した車両に想いを馳せる人と、EVは懲り懲りとしてPHEVやPHV、HVに戻る人が増えて居るようだ。

米国は最初のCNNの記事の通りで補助金の煩雑さやらいろいろが絡んでいることと、そもそも、既に欲しい人には十分行き渡り、暫くは買い換えない流れというのも影響していると思われる。まあ、今は物価が高いので数年でバッテリーの摩耗が進んでくる電気自動車を買おうと考える人は世界的に減っている。そこに、Apple Carの開発中止も絡んでしまったことでより大きくこの手の記事が量産されているのだろう。