セブン、そごう・西武に続きヨーカ堂売却を検討 …… セブンアイは「内容の事実は全くございません」
東洋経済の記事である。そしてその下はよくあるこういう記事が出るとすぐに発表される否定広報文である。ただ、これが出てくるとたいてい数ヶ月後~1年ぐらい後には、検討があったことが示されるので、事実として、売る決断はしていなくても検討や打診をしている可能性はある。
物言う株主だったバリューアクトが提案をはじめたのが離れはじめてから、この話が出てきているのを見ると、バリューアクトが述べていた事は正しかったが、手遅れになってしまったということだろう。そもそもこの問題の始まりは2015年にサードポイントがイトーヨーカ堂等の分離を求めた事から始まっている。そして、最後に求められたのが今は株式を殆ど保有していないバリューアクトが22年にスピンアウトを求めたそれである。
これらはいずれも報道が、セブンの言葉を支持し、株主が海外投資会社の提案書を読まなかったのか、毛嫌いしたお陰で経営陣側の主張が通った訳だろう。そもそも、ネットでも外資は糞みたいに感情論で語る人も多かったが、最近になってやっと気が付いた人も多いことだろう。そのままで何とかなるなんてことはなく、生き残るためには、会社は利益を出して客を集めなければいけないという事実に。
今イトーヨーカ堂は首都圏~関西のみの店舗網になり、昔のドミナント出店による福山市より東では天下だった総合スーパーの勢いはない。既に店舗網としては絶滅危惧種であることを考えると、これが失敗だったことは、容易に想像が付く。
しかしまあ、取引先金融機関を介してでも、そごう・西武や他の専門事業と一緒に出資比率を下げるなどして分社すれば、もう少し上手くいっただろうに、この壊れてきて手が着けられなくなった順に一つ一つボロボロになった外装を二束三文で手放していくとしたら、凄い経営センスだよなと思う。まあ、次に売却するなら、スーパー事業だけでなくコンビニ以外を全て1つの事業体(持ち株会社)として他社に売ることだろうが、果たしてセブンアイはそれをやるのだろうか?次は赤ちゃん本舗だとか、LOFTだとかやったりして……。
元々最適だったのは、セブンアイグループ(ホールディングスではなくグループとしての一定の繋がり)は残した状態で、百貨店からスーパー、コンビニ、その他の専門店まで資本出資比率を一定程度持つ方法だった。イオングループと同じ方法だ。しかし、今出ているのが売却になっているということは、それももう困難に成りかねないほど手を失っていることを意味している。これが、コンビニとの決別になるのか、それとも資本比率を大幅に薄めるのか知らないが、最悪の場合は投資ファンドを経て数年後にライバル企業に買われる可能性もあるだろう。
今の、セブンアイのコンビニ以外の状況は本当に深刻だ。それを招いたのは、それを容認してきた経営陣と投資家と報道機関である。民放はセブンが、広告主だったのもあるのだろう。
最大の問題は、イオングループなどの他の企業では稼ぎ頭となっているショッピングモール事業(セブンアイクリエイトリンク)すら、業績がパッとしないことにある。結局は、全部セブンアイグループ内企業同士の100%子会社か、他社との合弁出資子会社で、店頭上場していないので、それぞれの子会社企業がどういう経営計画と予算で動いているのか分からない事が、世間が求める需要とかけ離れた投資に向かって赤字体質を生んでいることを意味している。
ちなみに、衰退のイメージが強くなると、より衰退が加速するのも小売りに限らず販売を手がける事業の特徴だ。
本来なら、その起死回生にリブランドを図ることが多いのだが、イトーヨーカドーはそれをしてこなかったからそれも失敗の要因となった。多分今のイトーヨーカドーに対する支持者の雰囲気は、リブランドを望んでいない層が占めているだろうし。品質が高い。少し値段は高いが良い物とかそういう話が多く見られるからだ。実際にはそうでもないという話もあるので、昔から馴染みの店の贔屓も結構あるのかもしれない。
何せ、世間でそれを見た時に、そういう層ばかりを狙っても売れないから、今に至っている訳だし。だからといって、反転してそういうブランドに転換することも既に出来ないほど投資家から見てお荷物扱いの風が強いとなると……もう縮小しかないという流れになりその先が描けないわけだ。
即ち、この後もしファンドに売却するとしても、その後イトーヨーカドーというブランドが全面的に別のブランドに刷新し変わる可能性もある訳だ。
それは、パンパシフィックがユニーをアピタ、ピアゴとドンキホーテのブランドだけに置き換えて行ったのと同じ手法だ。
ちなみに、元々そのブランドが好きだった人も、最初はそれに嫌悪したとして、暫くすると慣れるものである。まあ、慣れなければ他店に行くだけで……店のブランドだけで選んでいた人が離れても、成功すれば、むしろ客が増えることになる。
まあ、そういう状況だと考えると、売却先を含めて検討しているのは不思議なことじゃないし、事実はないとは言うが、実際には検討している方が自然である。
それよりも、これがヨーカ堂だけなのかそれとも、コンビニ以外を一括なのか、出資比率としてセブンとの関係を維持出来る程度の比率を残す計画なのか?などの方が実は大事だ。完全に決別するなら、それは即ちグループ経済圏であるPB(プライベートブランド)の商品などにも影響を与えることになるし、商品の仕入れなどにも影響が出てくるからだ。逆に、緩やかな繋がりを残しつつの関係なら、順当な方法であり、もっと早くやれば良かったことをやっとやるだけだ。
それ故にかなり厳しい状況になることは否めずヨーカドー(ヨーカ堂)ブランドが生き残れるとは限らない。