イトーヨーカドー福島、郡山、帯広で相次ぎ閉店 再来年までに33店舗閉鎖…… 現状で生き残りは「困難」で食品スーパーでも困難だろう。
J-CASTの記事である。
この記事を見ても分かるのは、「論理的には経営再建は可能」という程度であり、再建が出来ると確証できるほど大胆なものではないということだ。商業施設では百貨店からコンビニまで全て集めて、完全子会社において相乗効果を狙っているのかと思われた時代があったが、セブンアイがやったのは、単にそれらの事業者から美味しいところだけ、セブンイレブンにチュウチュウと吸い上げて、弱らせるだけだった。それが分かった時点で本来ならもう分社を株主も求めるべきだったが……今では、それすら難しいだろう。
バリューアクトも既に離れているので、ある意味大きな成長性、両立性というのはないと考えられる。
だから今は、いかに事業を効率的に減らして行くか、一方でコンビニだけを収益性の面で強くしていくかに向いている訳だ。ただ、それが普通の最善であり、これからを見据えた最適ではないことには触れずに。
関東に事業集約して成長できるかというと困難だと言える。その理由は、関東に他県などから事業者進出が相次いで行われており、それが競争を生んでいるからだ。特に食品事業は、低価格を売りにするスーパーセンターやディスカウントストアも各地から進出しており、それらは潰れた店舗を改装して進出するケースもある。また、ディスカウント薬局であるコスモス薬品のような店だと、コンビニすら潰したり、コンビニがない地域でも進出して集客することがあるほどの勢いがあり、北への進出は進んでいる。この会社の場合は、同じ地域の店でも、店舗毎に価格が違う点も面白い点だ。
ディスカウントストアでは機械・省力で買い物や商品充足が可能な店も出てきているし、まいばすけっと(イオングループ)のように都市型の小型店(コンビニ型スーパー)を増やす形で、成長している店舗もある。
こうやって、新しい売り方で広がる店舗に勝てるような投資ができなければ、廃れていく訳だ。その廃れる方向に進んできたのがイトーヨーカドーだ。結局、セブンイレブン以外の店舗にまともな投資をして来なかったツケである。
<津田沼店が撤退をするかは分からないが、
それを招いてきた典型例を示しているのが津田沼店なのは確か>
さて、イトーヨーカドー 津田沼店の話も書いておくと、閉店するかしないかの基準は、上にレストランがあるからとかではなく、単純に店に客が来るかどうかと、その店に客が来るように企業側が投資を続けているかどうかに掛かっている。潰れるのではという話が出てくるのも、当該の記事にあるように上層階が飲食店というタイプが厳しいという話があるのも、実は同じ意味で繋がっている。要は、店を世間が必要とする時代のニーズにあった業態(店の雰囲気やスタイルを含む姿)に変化させていないという現実を示しているからだ。即ち、人が集まる店として投資していないのだ。
イトーヨーカドーの最大の問題点は、今の大量閉店もそうなのだが、店の姿を見直すことには投資せずに撤退していることにある。ネット上に限らず、潰れて困るという人が東日本には沢山いる。彼らの声をちゃんと分析していれば、いくつかの店舗はある程度の投資をすると、イトーヨーカドーブランドのお陰で、少なくとも数年程度は黒字になり、投資をペイできた可能性が十分にあったものも含まれていたりする。
私が見る限りではあるし、人口減少(他の商業圏に人が移住して逃げる)度合いが想定より大きくなければだが……。
閉店させているのだ。何故、閉店させたのかというと、店の業態を今の社会に合わせたスタイルに変えることを考えていないからだ。それが、結果的に古き良き昭和の時代が好きな人を寄せ集めてはくれるかも知れないが、若い人や新しいスタイルの専門店で買い物をする客を集める力に欠けており、客が減るのだ。それは、別に関東以外から撤退すれば改善されるとかそういう話じゃないのだ。関東、東京圏の大都市部でも同じ問題があるのだ。だから、この会社の状況は未だに深刻なレベルで改善出来るかどうかの瀬戸際にあり、一部のファンじゃなければ、厳しい見解になるのだ。ただ、きっとお金とか絡んでいる人もいるだろうから、そこまで言わないだけで……。
本当は、ファンだったらそれこそここが問題だと言うべきなのだ。私はファンじゃないし、元々毒舌家なので書いている。
話を戻して、店のスタイルの問題を津田沼店に当てはめると、上層階の飲食店というスタイルが廃れているのに、ずっと改善や投資もせずに放置している。これがイオングループで都市部でも維持したい重要店舗なら、きっと大改装をしてフードコートを中層か低層にでも置き、上層にシャワー効果で利益が出そうな店を置くか、立体駐車場の土地も同社の土地なら、駐車場も潰して広い3階層ぐらいの物販や滞在型店舗の商業施設にし、その上(4階より上)2階層3階層を一部駐車場にしたり、屋上ガーデンにでもすれば客が上まで来る。
車で来た人は上の階の駐車場を使うから、上から1階の食品売り場で買い物をして、最後に上に戻っていくか、最初に上層の商業施設などで少し遊んでから、下で買い物をして帰るからだ。これが今の時代のというか津田沼店における理想的な姿になるだろう。
津田沼の場合は、新津田沼駅の南北で、イオンモールとヨーカドーがあり、イオンモールは低層3階層で平面、ヨーカドーは中層8階層で立体という違いがある。人々が隅々まで回遊しやすいのは平面である。この2つが並んでいるとどうしてもイオンモールに店も客も集まるようになる。もし、これが両方とも平面に近い低層の商業施設なら南北で相乗効果が生まれる可能性もあるが、そうなっていないから一方が廃れるのだ。
立体に上がったり降りたりする仕組みは、目的が決まっているとエレベーター、階段、エスカレータから目的地にそのまま移動し、目的を終えたらすぐに離れる特性があるため既にシャワー効果がない。その昔、百貨店などでシャワー効果といっていたそれは、1日中その商業施設内で屋上遊園地などもあって遊べるぐらいの時代があったからだ。
それを理解しているから、イオンは中層型の店舗を減らしてきた。都市型でも大きな店舗でも3層から4層以内の店舗か狭小に的を絞ってきている。これは、西日本にあるゆめタウン(イズミ)などでも言える。広さを確保するため2階層でその上を駐車場にするとかいう店舗ある。ヤマダなどの家電店などでは1階が駐車場で、2階が店舗というところも多いはずだ。あれも、広い駐車場と、平面で広い店舗を確保するための手段である。
イトーヨーカドーはそういう店舗の回遊性やバリアデザインの発想が昭和止まりなのだ。その結果、潜在的なブランドファンとなる顧客お得意様がそれなりにいても、お得意様すら全体を回遊してくれない。だから、売りたい物に客の目がむくことがない。結果、収益性が伸びない。お得意様すら全体を回らないなら、そういうお得意様ではない商圏全体の顧客は、来てもくれなくなる。
それが撤退を決断する流れを生み、撤退するから客から見ればこの会社はダメだと思われたり、価格競争力が下がっていくという問題が起きる。お得意様から見れば品質は良く価格は少し高めで良いが、一般から見れば品質は確かに高いかもしれないが、価格も高いし、そもそもその商品がある場所までたどり着くことも、目に付くことも無いのでそれすら評価の対象にならないのだ。それは、店の数が減っていけば余計に深刻なレベルで広がっていく。何故なら、その店の昔ながらのノスタルジー浸れるスタイルを知らない人が増えれば、ただの不便な店だからだ。
逆に言えば、昭和横町のように、1年に何回か、浸れる場所として家族を連れていくには良いかも知れないなんて……冗談でも笑えないぐらい、それは総合スーパーとして見れば黒字から遠のいていく。
ここまで書いて、重要な事を書くと、閉店の話はあるが、出店や大規模改装、スクラップアンドビルドの大規模な計画情報は今のところイトーヨーカドーからは出ていないことにある。多分殆どのまともなアナリストなら思っているであろう、最大の懸案だ。
これは、結局、二束三文処か、債務を棒引きしているので事実上損失のままに切り捨てた百貨店事業と同じ問題を持っているのだ。それは、GMSはGMS、スーパー、スーパーで、百貨店は百貨店であるということだ。その一方で、コンビニだけはそれらのいいとこ取りをして成長した。だけど、これらから取り込む美味しいネタが無くなった今、海外のコンビニを買収したし、もうあまりうま味もなくなって……支えることも出来ないから捨てることにしたようにしか見えないのだ。
まあ、私がヨーカドーに2回だけで、1回は冬用のジャケットを買った(もうずいぶん前だが今も着ているので質は良かった)ぐらいだが、今もその品質があるのなら、足りないのは業態への投資である。しかも、店の業態・スタイルという部分であり、それに金を出さないことが最大の問題だ。
ちなみに、ヤマダ電機も一時期閉店が相次いだが、あれ閉店後に一部の店舗は業態を変化させて復活させたところもある。今は、住宅なども扱うので、そういうのも含めた店舗を広げたことで、ある程度改善させたわけだ。
ヨーカドーの最大の問題は、縮小と集約が成長になると思い込んでいることと、ヨークベニマルのようなSSMがその切っ掛けだと思っていることだ。これらは、いわゆるその中間の業態(バリエーション)を考えていないことを示しており、もしも食品スーパーも成長するという時代が終われば、また同じ穴に転落するだろうことが予想される。イオンも他のスーパーも地場の中小のスーパーですら、新業態の模索を続けているところは多い。店舗ブランドがいくつもある地場のスーパーも世の中には沢山ある。
知っているだろうか、イオングループのマックスバリュ西日本はフジと統合して、フジ、フジグラン、パルティ・フジ、マックスバリュ、ザ・ビッグなどの店舗ブランドを持つ事業者になっている。これが多様なニーズに合わせた業態ブランドの在り方でもある。これは、ローソンやファミリーマートがいくつかのコラボレーション店舗(他社と協業した店舗や一体型店舗)や特殊業態店舗を出していることでも見られることだ。
セブンアイグループはそういうが全く無いとは言わないが、他より乏しい傾向にある。だから、ある意味でブランドとして見ると確実(間違いがない、品質が一定で好みならリピート率が高い)で強いが、新しいユーザーを発掘するという点では、極めて弱いのだ。M&Aしても、結局その色に留まってしまうので、それを一番大きな一社に集約してしまう傾向が続くなら……周りは弱って行く。
セブンイレブンは国内最大手のコンビニでいまのところ衰退する兆しはないので良いし、スピードウェイは同じコンビニ系だからそれでもまだ相乗効果を作りやすく良いが……そもそも、これから攻めたり守ったりする他の会社は、それ(業態を生み出せないこと)が今のところ仇になっているのである。