メタ、10-12月期減収も明るい見通し示す 時間外で急騰……IT系記事との違いが明確に分かるのが、これ。
以下はWall Street Journalの記事である。金融経済紙なので、過去の発表との対比があるのが特徴だ。
それに対して、以下はITmediaの記事である。
この対比は面白い。実にらしいとも言える。これは、見ているものと蓄積している情報が異なる事で、生じている差であるといえる。ただ、投資とか将来性とかいう側面で考えると、WSJの方が会社の短期~中期における事実と可能性を伝えていると言える。
まあ、商品のついでに業績を出したならITmediaの記事で良いのだが……この内容だとタイトルは減収などを入れずに「Meta Questの次世代」を予告したことを前面に出すべきだっただろう。
前者(WSJ)はあくまで過去にトップのザッカーバーグ氏がどういう見通しを立てていて、結果どうだったかを見ている。投資家も、それを見た上で期待値を示したから、株価は急騰したわけだ。(まあ、明日(今日)も上がるとは限らないが……)
それに対して、ITmediaの記事は減収大幅減益を重点にして、Meta Questの次世代がという話になっている。だから、株価が時間外でどう動いたかは知らないだろう。これだけを見るとMetaは落ち目に見えてくるはずだ。そして、それを救うのがMeta Questなんじゃないかと……。
WSJはAI関連が成長しているからとなっている。ITmediaの記事はハードウェアであるQuestの次世代への期待なのも日本のIT誌らしいところなのだ。
これは、よくあるタイプの日本の記事だ。実はこの手の記事は、大手の大衆紙でもよく書かれているからだ。書きたい事を書きたいイメージで書いた感じだ。ただ、それに過去の業績発表で経営者や役員が投資家に示した約束の実態が示されないということが、日本の記事の怖いところだ。
この記事の差も、投資を過去の約束や発表に対する信憑性(正確性)から見た期待という線ではなく、今日発表された業績という結果という点と、これから売り出す品という点で見ていることの違いだ。
WSJがこの記事を書けたのは、過去の発表でザッカーバーグが何を述べていたかを知っているか調べた人が書いているからだ。過去の決算で、ザッカーバーグはこれぐらい落ちる予想となったと言った。だけど、実際の下げはそこまででは無かったとしたら、株価などの期待は、過去にそれだけ下がった分より良かったのだから上がるのだ。そこまで悪化しないように頑張ったということになるからだ。
その上で、今成長しているのが何か、次に出すものがどれだけ売れるモノか?というのも大事だ。WSJが見ているのがAIなのは、Meta Questなどのハードへの期待をさほど投資家も持っていないことを意味している。いや、将来的には主に企業を中心にそれなりの普及は示すかも知れないが、Questシリーズは期待通りからは今の段階でもほど遠い。メタバース自体が国内でも海外でも、報道はそれなりに扱っているが、これはMetaが広告として金を蒔いている効果もあるのだろうと思われる。
そういう点を見ると、今metaが伸びているのは、Meta AIを再編して事業に向けた投資を強化したことに対する評価があることだろう。
実際にAI事業は好調に進み始めている。
むしろ、metaverse事業への投資は今縮小しているのだ。
ここが、米国の投資関連の紙面と日本のIT関連という名なのにハード視点の雑誌系との差でもある。もっと分かり易く言えば、もうコンシューマでも買えるビジネスのようなものよりも、その裏で動く企業やプラットフォーム上のビジネスで生じる利益を重視しする方向にmetaも変わってきていることを示しているのが、WSJであり米国の投資をする人々の見立てでもある。広告や消費者の好み、購買意欲モデルだけでは回らないと言うことだ。
これはMicrosoftがWindowsとOfficeという誰もが買っていたソフトウェアビジネスから、Azureというクラウドプラットフォームに主軸を転換したのと似ている。もちろんそれが、OfficeやWindowsと連動し、MSアカウントを通じてOne Driveなどのサービスの基盤にもなっているが、多くの人はAzureに契約してクラウドビジネスをしておらず、これらの直接契約は企業や個人でもそういうビジネスをしている人に限られる。そして、それが今やマ社の屋台骨を支え、全てのコンシューマも含めたサービスと繋がっている。これは、Amazonも同じだ。AWSが基盤ECなどに繋がっている。ECがAWSという事業を生み出したが最終的に、事業の収益性としてはAWSがECを飲み込んだ形である。
そこにMetaも方向性を変えてきているということになる。
個人で見ると、見たいのはMeta Questの新世代がどんなものかなどに向きがちだが、こういう業績発表の場合は、IRの報告書も示すなら、過去の発表に対する成果の発言をちゃんとトレースしなければいけない。その上で、Questがというなら決算発表でQuestの次世代をアナウンスぐらいにしておけば良かっただろう。