押し寄せる再開発の波、ネット通販に押され…渋谷・東急本店も閉店 …… ネットは関係ないし、再開発が出来る間は良い。
読売新聞オンラインの記事である。
ネット通販に押されてと書かれているがその前のリアル店舗としても既に百貨店は多くの人の日常にはないという点が抜けているのが面白い。
そもそも、百貨店といっても多くの百貨店は昔の百貨店とは違って中にはテナントが増えており、直営は減っている。どちらかというファンションビルや古いショッピングセンターの1フロア版(店毎に区切りがない古い箱SC)という雰囲気だ。昔は直営売り場多かったと思うが、今は地方も都市部も、ブランド店が多い。それが示すのは別に百貨店という箱である必要そのものがもう無くなっていることを示している。
はっきり言えば、ショッピングセンターでも百貨店に入っているのと同じブランドのテナントが入っていれば、それで完結する話だ。強いて言えば、百貨店なら、物産展とかがあるイメージだが、それもショッピングセンターでも行われることが増えて居るので……ここしかないはなくなったと言える。ネット通販とかいう前の問題で、○○百貨店に買い物に行こう!?という感じではなく、近くの○○という服屋さんに行くと、○○百貨店の中にある訳だ。
この場合は、もし新宿にある百貨店が、例えばイオンモール新宿店とか三井アウトレットパーク新宿になって、そこに同じ店があったとしても、百貨店じゃないからと、少し遠い百貨店内の同じテナントまで通うなんてことにはならない訳だ。むしろ、そこに映画館とか、劇場とか入れば、以前より客が集まるかも知れない。
これが、百貨店の現実ということだ。百貨店の包みとかよりも、百貨店に入ってくるテナントのブランドに変わり始めた頃から、もう百貨店は百貨店ではなく、都市型のショッピングセンターと同じ、商業ディベロッパーに過ぎないのだ。そして、それを理解して生かすつもりかどうかが問われている。
だから、人が再び集まる施設に生まれ変わるために、再開発するならそれは悪いことじゃない。地方では、それもせずに百貨店=高級な地域のステータスという発想に拘り続けた結果、不良債権になり最後には取り壊しに数年とか要するケースもあるのだから。下手すれば、当時の一等地のはずの跡地は数年の廃墟を経て、駐車場になるのだから。
<百貨店のイメージが80~90年代から抜けられない報道>
尚、報道機関などに感化されている人が多いのか、百貨店=高級とかステータスシンボルのように今でも扱っているが、それもそろそろやめるべきだろう。
そもそも、人々がそれを利用しないから、廃業(閉店)するならそれはもう価値を失っているのだ。固執する人は確かにいるが、固執したこれは良い物だと言っても、周りの人がそう思っていないから潰れるわけで、実はその袋などに価値があると思っていても、世間ではそうでもないことを示している。懐かしんでくれることはあっても、それ以上にはならない。
その状況になったとき、じゃあそこにそのままそれが合って良いのかを考えることが大事だ。もし、一等地なのに人が集まることもなくなっているなら、早めに人々が来たいと思うような施設に生まれ変わることが求められる。それが低層でも良いからスーパーマーケットならスーパーマーケットだろうし、複合施設だというなら複合施設だろう。それをやらずに、固執していると……最後に破綻して、廃墟が長く残り、やっと更地になっても平面駐車場とかになり、駅前などのような一等地だったとしても人が集まらないが故に電車などの便も悪くなるだろう。
日本は何かとネットという言葉を使うが、実際にはネット通販の前からこれは起きていたことだ。百貨店でしか揃わない時代で、且つ品質が良かった時代があったが、それは総合スーパーでも、ディスカウントストアでも揃うようになり、その影響で百貨店はより高級志向へと動いたのが80年代から90年代だった。この頃に子どもが遊びに行く屋上遊技場などが老朽化なども重なり減っていった。ある意味ではちょうど良い転換点となったが、逆にそのイメージが強くこびりつくことになったのだろう。
即ち、百貨店も毎日は行かなくても、時々遊びや買い物で何でも揃うからと人が集まる大衆の場所だった時代があったというそれが消えた後のことばかりを今世間や報道は見ているのだ。下手すれば百貨店関係者すらも……それこそが百貨店だと……だが、他の小売り業種が誕生する中で、差別化するためにそういうブランディングをしただけで、そうじゃなかったんだという視点が抜けている。そういう選択をした百貨店が多く残り、そうじゃないところは潰れるか、百貨店以外の小売りに転換したところもある。そこを見ていないことに、百貨店の呪縛という苦悩があるとも言える。
上記した、よりハイクラスのブランドもショッピングセンターなどに専門店が入るようになり、ファッションビルや宝飾専門店などが個別に店を出すようになると、百貨店よりそちらの専門店に行く人が増えて行く。だから、百貨店はそれをショッピングセンターと同じように囲い込まざる終えなくなり、そうなると百貨店だから行くのではなく、百貨店にあるその店に行く人が増えていくようになった。もちろん、外商もあるし、祭場もあるのでそれだけじゃないとは言え、それの効果より日々の客が来ないと一等地での維持費はペイできない。外商で稼げるなら、別に一等地じゃ無く、訪問販売員が回るだけの方が利益が出るだろう。
直営の売り場も残っているが……直営だけでは成り立たない(集客が減る)部分が増える時点で、既に百貨店は、都市型ディベロッパー(ショッピングセンター)に転換し始めていたのだ。そこをもっと認識すべきということだ。まあ、百貨店の称号をおろせとまでは言わないが、ある意味でイオンリテイル(GMSブランド-イオンやザ・ビッグ、イオンスーパーセンタ-を展開)がイオンモール(ディベロッパー)に出店するような形で都市型SCや商業ビルを作るイメージにしていかないと厳しい。それが始まったと考えれば、別におかしな話ではない。
いわゆる時代に沿わない古いものから次の時代に耐えられそうな新しい物に脱皮しているだけである。
遅蒔きながらかもしれないが、始まったそれを惜しむだけでは無く、期待する方向も大事だ。この記事を見ていると、そういう視点が足りない。というか、最近多い百貨店系の記事に見るのは、お先真っ暗風に書かれているものが多くて、嫌になる。
称号というか会社が大事なら、百貨店という名称なのに中身はスーパーマーケットのような形でも、私は良いと思うのだ。それが、その地域で必要とされる店の姿なら……百貨店と言えば惣菜売り場ですというなら、それだけ直営にして、後は専門店でもよい。外商はその専門店の商品と時々やる祭場での商品を扱えばOKだ。テナントが埋まる間は客もくるし十分に利益が出るはずだ。ただ、古いままの建物では、それもままならないだろう。