米、ウクライナに主力戦車「エイブラムス」31両を供与…… 戦況を変える可能性は現状では低いが、ロシアはより強硬になる恐れ。

日経新聞デジタルの記事である。


ドイツもLeopard 2の供与を決めポルトガルもドイツから供給を受けているLeopard 2の供給方針を示しているのでNATOの方針ということになる。

尚、エイブラムスと日本では読んでいるが、正式にはM1 Abramsである。エイブラムスというのは、戦闘機で言えばRaptorとかLightning IIといった名称と同じである。日本では戦闘機だとF-22、F-35と書かれるが、戦車はエイブラムスと揺れるのが変わっている。
M1は Chrysler Defense(クライスラーディフェンス)が開発した。その後、クライスラーがこの事業を手放し、米軍需企業であるGeneral Dynamics Land Systems(ジェネラルダイナミクスランドシステムズ)が買収し保守や生産を引き継いだ。

ちなみに、現在 米国ではNext Generation Combat Vehicle(NGCV)という選定作業が行われているが、これにM1戦車の後継という項目はない。M113 armored personnel carrier(多目的装甲車)の後継や、M2 Bradley(歩兵戦闘車に相当する戦車)の後継について選定が進んでいる。結局戦車は、主砲に頼る一方で、機動性が弱い上に、車内からの視認性が低いため、撃破力が低いからだ。対戦車相手ならある程度意味があるように見えるが……戦車は敵方が人と車輌を交えた乱戦になると一気に劣勢になるという問題がある。

M2が主力へと変わったのは、これ主となる武装が25mmの機銃なのだが、それ故に歩兵師団などと一緒に行動できるだけの近距離戦闘能力も持ち、対戦車に適した半自動照準ランチャーミサイル発射装置(弾装は1基で最大2発)も装備されており、深さの限界はあるが、河川を横切るなど水陸運用ができる事、湾岸戦争などで戦車を上回る戦績を残したからである。

そういう点では、既に米国は戦車を重視していないと言うことでもある。ただ、米国ではこれに限らず、バイデン政権がどんどん武器を供与する中で、国内外の有事に備えた武器の備蓄在庫が急激に減ってきており、それの充当が出来る目処が経っていないという話もチラホラ出ている。まあ、最先端兵器は供給していない(他の国などに供給可能なもの)、米国領土領海の防衛に影響するものではないが、そういう話もあるわけだ。これは米国連邦政府の予算の問題でもある。


では、これでウクライナが勝利するかと言われると……まあ、難しいだろうと私は思っている。
これは、ロシアが戦車隊でウクライナを落とせなかったのと似た結果が、下手すれば起きるからだ。

そもそも、米軍は戦車の欠点を知っているから、M2 BradleyやM3 Bradleyを主力に変えてきた。戦車は籠城している建物などを破壊するには向いているし、戦車相手の戦闘なら確かに乗員の腕や装備、能力の差がものを言うが、的となる人一人を狙うには向かない。しかも近距離になると、反応が追いつかなくなる。そして、主砲が向いている方向を攻撃するため、攻撃対象を読みやすい。さらに、視界(視野角)が狭い上に、霧や靄などがあると、大型の戦車は的になりやすい。そして、重たい(M1はM2/M3の2倍の重量がある)。燃費も悪い。

これは、ロシア軍の戦車や装甲車がハンドランチャーで落とされていった流れがまさにそれなのだ。これと同じ事をロシアがやれば、欧米の戦車もやられる可能性はある。

それが分かっていても何故供給するかというと、求められたからというのと戻れないからだろう。これは政治的な話であり、同盟の中でのお互いの俺もやるのだから、お前もするよなという関係性の問題や、結束の問題でもある。
ウクライナ側から見れば戦車があれば勝てるって言っているのも大きい。でも、それで勝てるかと言われると、難しい。戦車は燃料も喰うし、電撃作戦ようなものを一気に進めて相手が対応をする前に終わらせるならともかく、そうじゃないなら今のピンポイント攻撃が出来る時代には、必ずしも戦車は有用な兵器ではないからだ。
それでも、武器が足りないならあって不便なものではないという白物だ。

それを、ロシアから見てどう考えるかと、ウクライナがどう使うかだ。

もし、これでウクライナからロシア本土に対する電撃作戦が行われるなら、ロシアは戸惑いなく戦略核を使用するだろうと私は考える。それは、ウクライナが対象であって、欧米を狙うことはないと思うが、それで欧米各国が、ウクライナを守るために核を使うかどうかで、破滅かそれ以外かで戦争のステージが変化するだろう。たぶん、欧米もNATOなどに加盟していない国に対して核に対する応酬で核を使う事はないと思うが……。WWII以来類を見ないほど緊張し、どちらに付くのかを問われることになるのは間違いない。

一方で、もしも単に防衛や奪還のために使われる場合、衛星写真などで分析されると戦車隊はゲリラ攻撃などの餌食になりやすい訳で、ロシア側の練度が高いなら、去年のロシア製戦車がどんどんウクライナ軍に破壊された流れが、今度は逆転し、前線に配備したウクライナ軍に譲渡された戦車が負ける流れも有り得る。

この場合、欧米がさらなる兵器の供与をするのかがまた問われるだろう。

もちろん、これで戦況がウクライナに有利になる場合もあるが、東部を奪還して勝利を宣言するという流れだ。

ただ、最も確率が高いのは、結局この先も今までと変わらずミサイルや砲撃などの攻撃を受け続け、戦車を入れても東部の戦闘は一進一退が続くというのが、一番大きな可能性だろう。やはり最終的に着地するのは、シリアと同じようなウクライナの荒廃になるだけかもしれない。



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