TSMC、3nmチップの量産を開始--次期「iPhone」でバッテリー持ち強化の可能性も…… GAAFETはまだ先。

再びCNETの記事である。


TSMCでも当初予定ではGAA(Gate-all-around)FETが採用される見込みだったが2nmに延期されたことで4/5nmの改良版となった。

また、同じN3でも当初の計画されていたAノード(α)と現在のBノード(β)は別物であり、少しノードの回路幅を見直して歩留まりを安定させたとされている。

尚、現在進行形のノードは、N3(Early Node(A・α)→現在はB またはβ Node)、
N3E(Enhanced Node-今年2023年後半までにアクティブへ)、
N3P(Performance、N3S-shrinkを含む-2023年後半までにアクティブへ)、
N3X(extreme node、2024年を予定)
が開発中または投入されている。

Apple A17 SoCはN3またはN3Eと考えられているが、どちらなのかは定かではない。噂ではEという話が出ている。
ちなみに、Apple M3はN3PかEになると考えられる。そしてXはx86向けのGPUやCPUまたはサーバー向けARMになると考えられ高クロックで大電力でも使える製品となる。

しかし、現実問題として言えばN3だからN4より1nm微細になった訳では無い。実際にはプロセスノードそのものは殆ど変化がなく、部材の調整と、熱密度を分散したり、クロックが大きくなる部分の回路幅をなるべく厚くなるできるように、設計を見直し、逆にクロックを落として運用できる回路や、発熱が殆ど出ない部分を、より細かくすることで性能を上げていく手法である。これは、Samsungのお陰で見えなかった部分だが、TSMCにとっても4/5nmが決してよいものでは無かったからこそ選ばれた手法なのだろう。

ただ、それを持ってしても改善が難しいのが、レジスタ内のRAM素子(L0キャッシュ/SRAM)とされており、これは少なくとも、現行の技術では微細限界に達していることが示されており、微細化するほどに性能の悪化が見られ始めているようだ。改善には、何らかの全く新しいブレークスルーが必要になる。場合によってはSRAMから離脱し他のRAM(FeRAMやMRAM、PCMRAMなど)が花開くかもしれない。

ついでに言えば、1nm分の回路量は、TSV(貫通ビア)を用いた多層回路の技術で回路を重ねることで、トランジスタ数を増やす方向である。



これの初代がiPhone用となっているのは、iPhone用の半導体なら失敗の危険が低いからであり、もしも失敗してもある程度ソフトウェアでカバーして貰えるからだと考えられる。iPhoneは前のA16 SoCでGPUのTDPを枠内に抑えられず失敗したという苦い経験が先月リークされている。

これは、ray tracing(RT)コアを内蔵する予定だったが熱枠内で出来なかったということのようだ。こういったことがある程度可能なのは、AppleがSoCとOSを一体的に開発しているお陰であり、性能隠蔽が可能だからに他ならない。何より、AppleのプロセッサーはIntelやAMDのプロセッサーより集積度が高い一方で、クロック周波数も低めだ。それに設計も非公開なのである程度失敗があってもカバーが出来る上に、性能もその製品群ではトップランカー故にTSMCとしても最初にテープアウトを掛けやすい。

自ずと、AppleとTSMCは蜜月になるわけである。

尚、3nmでは同じ性能の4nmと比べて消費電力は10%台~30%台の減少が想定されている。そのため、バッテリーの持ちが強化されるとしたら、同じ性能を維持するかしなければ難しいと考えられる。それでも、大きく性能が上がるとすれば、iPhoneの場合はAndroidに比べてバッテリーの容量そのものが筐体のサイズの割に小さいので、それを大きく増やしてくるかまたは、命令セットやサブ回路を強化して処理を効率化することで、CPUやGPUに掛かる負荷を減らして電力消費を抑えるかで対応するのだろう。

今、命令セットが同じならプロセスノードだけで大きく消費電力を下げることは今では困難である。そのため、省エネルギーでより高性能なものを仕上げるには、よく処理する命令をCPUやGPUから切り離して専用の回路に落とし込むか、集積度を上げてクロックを下げるか、命令セットを見直して結果の抽出に掛かるクロック数を減らすかのいずれかの技術を組み合わせつつ、N3プロセスの説明で書いた回路の特性毎の最適化を設計時に行うしかない。

昔は、微細化するだけで大きく減った電力も今では、より細かく計算しなければ出来なくなっているのだ。
これが、GAAFETで再び大きく減る時代になれば良いが、GAAでは製造難易度が更に上がりコストが今より上がると考えられている。そのため、例え省エネルギーになっても、価格が想像以上に上がる可能性もある。





この記事へのコメント

2023年01月05日 11:31
あけましておめでとうございます、ウェブリブログから移転されたことに今気づきました。
あまりコメントはしておりませんが、いつも興味深く拝見させて頂いていますのでありがたいです。