スマートフォンのカメラがプロ仕様のカメラを超えられない理由…… ショボいプロ仕様の話
年末に変更を行い、今日からこちらでの記事投稿になる。数ヶ月前にここに移せるように準備はしていたが、このタイミングになったのはちょうど年初で時期が良かったからである。ウェブリの方からは自動的に飛ぶようになっているはずだ。最近あまり、暇もなく独自の記事は書いていないうえに、調べ物も中途半端なものが多いので、間違いもそれなりにあると思うが、今後も楽しんで貰えると幸いである。
さて本題、CNETの記事である。
海外の記事でも理由記事が増え始めているが……やはり理由記事は質が低い物が多い。誰でも共感しやすいように作っているのだろうが、そもそもこれとかプロというより記事書きとしてもアマだろう。プロならプロをちゃんと元に記事を書かないとダメだ。何故、RX100 Mark Ⅶから入るのか?それが、驚きのように扱う時点でも凄い。
カメラにプロ仕様というのは、何なのか?それを考えながら読んだら、ソニーのRXとかαとかQX1とかフジのX100とかプロと言うよりも、大衆向けのそこそこ製品や当時(今でも)のトンデモ製品だった。
プロと言えばソニーのプロカムコーダーや、フジフィルムのGFXシリーズなどの製品だろう。あれらは本当にプロ向けの芸術を愛する人が使う製品であると言える。それだけの覚悟がないと買えないし、買ったとしても、それを良い道具として使い熟せないだろう。家族写真や動画を撮るための道具じゃないからだ。
そもそもプロ向けのカメラは、この先も無くなることは決してないだろう。当該の記事に製品の話ではなく、いわゆる本当にプロユース(商業用)を前提に作られているカメラ(個人でも購入出来るが買うにも安くはないし、撮影後の編集もデータ量などに伴うコストが高く容易じゃない白物)のことだ。これらのカメラの特徴は、何と言ってもストレージの速度が圧倒的でハイビットでの処理ができる事にある。
最近は、一般向けのカメラやスマホでもプロキシデータを保存出来る製品があるのだが、より圧縮比が低いレートが使えたり、音声データなどにも特異な設定が出来るものもあるのが特徴だ。GFXなどは億単位の画素を扱えるスチルカメラであり、文字通りの化け物といえるほどの精細度となる。スマホの億画素は、拡大するとガッカリするほどにドットが潰れて格子状のノイズや、まるで模型(フィギア)や出来の悪いCGのような立体感のない質感が見えるが、ちゃんと必要なピッチの画素センサーを使えば最大限拡大しても、スマホを上回る色味を再現し、立体感を構築できることを示してくれる。スマートフォンがこれに追いつくことは未来永劫ないだろう。
もしも、スマホでそれが出来る時代が来たら、プロフェッショナルカメラもまたその技術を取り込むはずだからだ。
<スマホにできる事は、カメラにできないこと>
尚、スマホがコンデジや一眼などの専用カメラを超えられないと良く言うが、それはある種では間違いである。
そもそも、スマホしか出来ないことが既に沢山あるからだ。例えば、SNSへの投稿はスマホの方が早いし、記事にもあるがコンピューティングを用いた合成フォト(Camera HDR)の技術は、スマホの方が進んでいる。いわゆる記憶色の再現性はスマホは最強であり、これと同じ事はコンデジではまだ出来ないものが多い。やらないとも言えるが……
その結果、スマホで撮影することに満足している人が、コンデジやビデオカメラを買って使うと、上手く撮影出来ないとか色味が違うという問題にぶち当たることもしばしばある。それが結果的に、カメラの方が上位のはずなのに、ガッカリして顧客を逃してしまう原因にもなっている。この記事もそうだが、カメラを持つこと=プロフェッショナルという見方をしている記事が出ている時点で、その障壁があることを示している。
例えば以下の写真はスマホではなくカメラで撮影したものだが、これスマホなら簡単にタップで焦点を合わせることができたり、後で焦点を変更することが出来るものまである。しかし、カメラだと機種にもよるがこの手前に焦点が合うとは限らない。後をぼかすにも焦点距離の設定やレンズの焦点ズーム域設定を合わせなければいけない。色味も場合によっては調整する。オートホワイトバランスに頼ってはいけないかもしれない。まあ、専用カメラはメカニカルシャッターが搭載されているのが普通なので、それの差も設定の差(手間)に影響している。
その代わりといっては何だが、これは1インチセンサーで撮影しているので、等倍でもノイズらしいノイズは見られないだろう。
これがスマホだと、若干の粒状感が出てしまう。そこがメリットなのだが……果たしてその通りに撮影出来るかは腕前による。
これを考えなくてもセンサーサイズの制約の範囲内で誰でも手軽に綺麗に撮れるのがスマホだ。それをある程度自分で設定して撮影時にアレンジして表現するのが専用のカメラである。尚、ソニーなどは、その専用のカメラのように使えるPhotography Proなどのアプリを供給することで、スチルカメラやビデオカメラと似た雰囲気を撮影させる方法も提案はしているが、元々カメラで色味などをいくつも考えて撮るなら、スマホより専用のカメラの方が操作性は良い。どうしても、スマホだと画面タッチによる操作が必要だからだ。
スチルカメラは、被写体を画面や、ファインダーで確認しながらも、複数の細かな調整が出来る。ダイヤルやボタンが複数あることで、操作の仕方を覚えてしまえばボタン操作をしながら、絞りなどを調整しつつ、シャッターを押したり、フォーカスロック操作をしてそのロックを使って別の本来撮りたかったものに被写体をずらして撮影するといったことも出来る。
尚、スチルカメラやビデオカメラがスマホの利点、コンピューテーショナルを取り込む時代は来るのかというと、全てを取り込むのは、なかなか難しいだろう。理由は、演算性能が足りなくなるからだ。そもそも、スマホがコンピューテーショナルフォトを熟せるのは、高性能なSoCを搭載している事もあるが、もう一つ理由がある。それは、センサーやカメラ系の制御がショボいからだ。要は、カメラとして見ると機能が少なく、メカニカルよりデジタルで処理しているお陰で、高性能なSoCで力業での処理が出来る訳だ。
それに対して、専用のカメラで画質を求めている製品は、そもそもフルオートで制御する場合に制御出来る部分がより多くなる。
例えば、ズームはデジタルズームが中心のスマホ(一部光学もあるが、機種は少ない)だが、デジタルカメラは光学+デジタルが殆どの機種に採用され、デジタルオンリーの機種の方が少ない。光学の製品でも、手動と電動と様々ある。
このズームの差があると、当然だが絞りの差が出てくるし、単焦点でもシャッター絞りが搭載されていない製品は少ない。これは、スマホだと光学ズーム搭載を除き、ソフトウェア絞り(デジタル)で擬似的に調整する以外はカメラ1つ毎に絞りが違う単絞りである。即ち、ここを制御する必要はなく、後からデジタル処理でそれを擬似的に生み出すか……それとも何もしないかの選択だけだ。
まだある。シャッター制御は電子併用シャッターであることが多い。最近は一部の安価な製品で電子オンリーもあるが、これも重要な要素になる。これらを考えると、スマホと全く同じSoCでは例えコンピューテーショナルフォトをやろうとしても、同じ品質より下がってしまう恐れがある。だから、スマートフォンと全く同じ物を取り込むのは難しい。そして、スマホもカメラと全く同じものになっていくことは出来ない。ただ、双方ともどこかで許容するレベルに近づけることは出来る。
それが、今スマホで殆どの人は十分だとか、スマホの方が使い勝手は良いし、カメラは望んだ色味が出る程ではないから、スマホの方が……と言われる理由になるわけだ。
しかし、だからプロ用とか専用のカメラが完全に消えることは難しい。それは、結局のところ目指しているものが異なるからだ。
スマホの場合は、確かに誰でも簡単にお望みのプロフェッショナル感の映像や写真が撮影出来るだろう。だが、それは貴方がカメラを自分で設定して撮ったわけではない。カメラが貴方のお好みっぽい色合いを考えて撮ってくれたのだ。場合によっては、いくつかの撮影結果の中から貴方は一番良さげなものを選ぶだけで良い。貴方は、単に構図を選んだだけである。
それに対して、専用のカメラは、オートモードでもそのシャッターの瞬間にカメラが光を捉えた範囲内の色味しか表現はしてくれない。この先、それをある程度改善してくれるカメラも出てくるかも知れないが、多分だがそれはオプション設定を選ばないと機能しないあくまで付加価値程度になるだろう。だから、カメラを使う人がカメラの限界を知る必要がある。さんさんとお日様が照りつける太陽の下では、Ⅰ/30では白飛びするとか……そういう要件を知っておく必要が出てくる。
そして、それを理解すると、コンピューテーショナルフォトではまず撮れなかった特殊な撮影もできるかも知れない。例えば、どう考えても明るい現場を暗く撮るなんて、コンピューテーショナルフォトでは無理だろう。しかし、これが廃坑など人の気が無い場所なら、神秘的になるはずだ。そういう撮影を意図的にそして美しく確実に出来るのはカメラの特権だ。まあ、スマホでもオート撮影を解除すれば出来るだろうし、編集ソフトで弄れば出来るが……。自分が撮った瞬間の画を見て思ったもの(色、シーン)だと楽しめるそれがより強く印象付けられるのが専用機の強みである。
一方で、ただ沢山取ること手軽に撮ることなどを求めるなら、スマホを上回る代物は存在しない。それだけだ。
尚、スマホの限界には、記事の内容以外にもいくつか理由がある。
それは、熱の問題である。スマートフォンには高性能な集積回路が多量に搭載されている都合上、熱量が多いという問題がある。
ソニーのXperiaやシャープのAQUOSなどでは近年夏場に撮影できなくなる場合があることが話題にもなるが、大規模センサーは熱量が多くなり、消費電力も合わせて大きくなる。さらに、上記したように高画質なセンサーなどになれば、演算に求められる性能も上がる。ASICだと専用にすることで、それらのなるべく減らし、さらに筐体を大きくすることで熱密度を下げることが容易だが、スマホだとそうもいかない。
他にも使い方としての問題もある。これを知っている人は少ないだろうが、そもそもCMOSやCCDなどのセンサーは太陽などの光を直接撮影すると劣化するというのを知っている人は少ない。だから、最近は、夕日や朝日をフィルターなどを使わずにそのまま撮影する人も増えている。これが大判のセンサーになると光の感度が上がるため、熱損傷が起きやすくなるのだ。即ち、壊れやすくなると言うことである。通常太陽を撮影するときには、大型センサー(1インチ以上でカメラを長く使うつもりなら使った方がよい)NDフィルターを使って減光するのだが、これをしないと……暗部などでノイズが載りやすくなったりする。長時間、太陽を中心に入れると、センサーの加熱警告が出たり、センサーの一部ドットが欠けることもある。
スマホの場合は、明るいレンズを使っていても、センサーは小さくある程度太陽光が入っても大丈夫な程度に制御はしているだろうから、そうそう問題は起きないが、これが大口径になってくると……集光量が短時間でピーク超えする恐れがある。大口径センサーはカジュアル向けだとそうそう使えないのだ。
スマホが普及したことで、我々はカメラを身近につかうようになった。だから、カメラの使い方もある種雑になった面がある。どこにでもカメラを向けて撮影する習慣が多くの人に付いたのだ。そして、スマホはそれに適したセンサーの制御をしなければいけなくなった。その一方で、専用のカメラがそれに適した物になっているわけではない。センサーそのものですら、その使い方をするとすぐに光飽和(熱損傷)が起きてドットが抜けてしまう恐れがあるものも存在する。
そこにもまたスマートフォンとカメラの境界線が存在しているのである。
尚、スマホでもプロ仕様は存在する。iPhone Proがあるように……Xperia Proもプロである。これらは、ある種、既にスチルカメラを大きく上回る特性を備えている。コンピューテーショナルフォトが出来て、且つSNSにアップ出来る。画質は一眼には劣るとしても、コンデジの一インチセンサーに匹敵する製品もある。それはある種のプロフェッショナル向けである。
ただ、これが好んで商業用のカメラの代わりという点でプロとなるには難しい。
それは、結局のところスマートフォン(電話)であってスチルカメラやビデオカメラなどのカムコーダーではないからである。それは、形だったり(操作)、中身の仕様だったりがどうしても違うからである。超えられないからではなく、そもそもの役割と目的が別なのであって、その役割や目的が中途半端に間にあったものが、消えたのは結局どっちつかずだからだ。
QX1とか今あれば買ったって……大半の人は今あっても買わないだろう。あれを買うなら、普通のカメラを買った方が良いし、GoProなどのアクションカムを買った方が良いだろう。まあ、iPhoneなどを使っていて満足できない人にコンピューテーショナルフォトなどを内蔵することで、ウケる可能性もあるが……ステップアップしてくれには、QX1のままでは足りないのだ。

ソニー/コンパクトデジタルカメラ/Cyber-shot / RX100VII / ボディ/ブラック / 1.0型積層型CMOSセンサー / 光学ズーム8倍(24-200mm) / 180度チルト可動式液晶モニター / 4K動画記録 / DSC-RX100M7

ソニー/コンパクトデジタルカメラ/Cyber-shot / RX10IV / ブラック / 1.0型積層型CMOSセンサー / 光学ズーム25倍(24-600mm) / 可動式液晶モニター / 4K動画記録 / DSC-RX10M4
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