歌手セリーヌ・ディオンさん、難病「スティッフパーソン症候群」告白…… 免疫疾患は病気との闘いではなく、一生の付き合いになる。

朝日新聞デジタルの記事である。


セリーヌ・ディオンと言えば、映画「タイタニック」の主題歌に使われたMy Heart Will Go Onが大ヒットしたことで一躍トップスターへと上り詰めた歌手である。当時、この音楽のセールスは映画の興行収入記録とセットで、世界記録を打ち立てたはずだ。日本でも、それの効果があり、セリーヌ・ディオンの後の楽曲がいくつか、CMやドラマの楽曲に使われた。

<免疫系疾患の現実は健康な時と同じを望むと厳しいが……
                    考え方次第では新たな挑戦に繋がる>

Stiff-person syndrome(スティフ・パーソン症候群/SPS)というのは、元々はスティフマン症(stiff-Man syndrome)と呼ばれていた病気だ。この記事ではスティッフとなっているが、どっちでも良い。日本だとスティフの方が言いやすいだろう。そもそも、元の発音はスティではなく日本語の本来の50音を当てるならstiはスチィフ(ッは入らない)の方が良いだろうが、今ではティが使われる。
Manはジェンダーの関係で個人(人)を意味する語に置き換わった。尚、stiffとは硬直(して痛む、肩が凝るとか足が痙るとかそんな言葉で「強張る」などともいう)を意味する。
即ち、日本語でいえばこわばる人症や、硬くなる人症候群、人硬直症である。

症状は主に、歩行などが上手く出来なくなることから始まるとされる。症状が悪化するにつれて痛みや筋肉のひきつけが腹筋やももなどの筋肉でおきて、歩き方が不自然になるのだ。症状が進行すると、痛みが強く慢性的になり、しゃがんだり、屈んだりといった行動が困難になる。

また、病気が進行するとけいれん発作などが起きるようになり、体を動かす際の軋み(痛み)が神経を刺激する影響なのか、大きな音などにも敏感になる。嫌な疾患である。

尚、この病気の原因がどこから来るのかはまだはっきりと分かっていないが、神経伝達物質の一つであるGADが何らかの因子で増えることによって症状を発症していると考えられている。

ついでに言えば、治療方法は、免疫療法が効果的ではないかとされている。ただ、この病気が難病指定されている原因でもあるのだが、症例数が少なく、大規模な臨床での治療研究が進まないことや、免疫療法は根治療法ではなくいわゆる継続療法で寛解に近い状態に持っていく方法であることから、治療コストなどの問題もあると考えられる。

まあ、病気になって仕事が出来なくなればお金も稼げない訳で、日本のような保険制度がなければ、医療費も継続的に掛かる。その時に、この治療にお金を払うより、家で痛み止めを飲みながら療養する方向に向かっていく訳だ。そもそも、こういう難病は、数多くあるが、その症状を診療したことがある医者は少ない。だから、なかなか病名に辿り付くのにも時間が掛かるだろうし……

まあ、はっきり言えばこの病気は、痛みやこわばりを緩やかにして、体調が良いときには仕事がそれなりに出来、その反動で悪化したら休むといった生き方に変えていくしかない病気である。免疫系の療法をする病気の多くは、こういう病気と一生共にしていくものが多い。それを悲観して自棄にならないことや、心を病んでしまわないようにする事が一番難しいのである。特に、治して復帰してみせると意気込んでいたり、それを周りが強く期待すると、数年後に病んでしまう人もいる。

彼女がそうならず、病気と向き合って歌を失わずに、共に生きる手段を早くに見つけられることを願う。出来れば自分が歌うことだけではなく、歌う人を育てるとか、そういう道も選びつつ、体調が良いときには新曲などに挑戦してくれると、きっと新しい道が開けることだろう。


病を転機に道が変わっていく人は多い。
世の中には、本当に沢山の病気があり、それで生活が一転することも決して少なくはなくしばしばあるのだ。
そして、病の非情な点は、皆が元の健康な状態を取り戻すとは限らないと言うことだ。最悪の場合、大した病気じゃない病でも亡くなることはある。だが、それより怖いのは、命はあるが、どんどんできる事が出来なくなっていく進行性の難病疾患だ。これらの病気は治すのが理論上今の医学では不可能なものもある。上記の疾患がまさにそれで、原因かもしれない物質が分かっていても、その物質が何故増えたのかという根本が分からなければ予防も治療も出来ないのだ。

物質が分かっているなら出来るはずなのに何故か?と思う人は多いだろうから、説明しよう。

何故それが増えているのか(増え始めたのか)が分からない限り、そもそもその物質は原因なのか?が定かではないからだ。
もっと分かり易く言えば、別の原因があってそこから副産物としてこの物質が出ているとしたら……副産物の量を中和して、副産物による症状はある程度抑えられても、その原因を治療しないと病気は治らない。もっと言えば、中和剤(薬)が切れれば悪化する。

これは、水道管から漏れている水を幾ら、吸い上げても、漏れ出す水は止まらないのと同じだ。漏水箇所を修理しなければ漏水は治らない。

だから、この手の病は何らかの理由で自己免疫や快復力などが作用して治るケースを除けば、生涯付き合っていくことになる。
これを機会に治療法が見つかればよいが、そう簡単には行かぬだろう。出来れば歌えなくても、体調の良いときに何かのイベントなどに参加するぐらいの環境は維持するなどして、病気と付き合い、同じような病気を抱える人を結びつけるような、存在にまで強く生きて欲しいと願う。






















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