「ロシアの高精度ミサイルの在庫はほぼ枯渇」 ウクライナ国防省高官 …… 世界の関心は既にウクライナから離れ始め……

CNNの記事である。


ウクライナとロシアの記事は、以前よりかなり減った感じだ。日本でも欧米でも減少傾向にある。特に、ポーランドにミサイルが落下してからは、報道の雰囲気も各国で変化が見られる。結局、あれからウクライナが自国のミサイルと認めたのかも報道はされていない。各国の首脳はウクライナを擁護したものの、この話題は欧米のメディアでも……タブーとなった訳だ。

そこからは、徐々に報道のウクライナだけに強く正義を与える方向での報道はトーンダウンが始まっている。まあ、日本はあまり変わっていないが……。今は、FIFAのお陰でかなり報道が減っている。少なくとも、世界の首脳陣や報道関係者からみればウクライナのゼレンスキー大統領という存在が厄介になってきているのだろう。

報道と西側政府が自分達で撒いた種だが……。

CNNのこの記事は、そういう部分を如実に示している。以前ならこの手の記事に次の一文は含まれなかっただろう。

「CNNはロシア軍のミサイルの在庫について確かめることはできない。ウクライナ当局は以前、ロシア軍のミサイル在庫を少なく見積もっていた。」

という文面だ。これが、あるということはウクライナの政府高官も鵜呑みに出来ないということだ。このところ、米国では、ロシアとウクライナを和解させようという発言が少しずつ出てくるようになったのも、変化の1つだ。この背景には、中国や中東、インド、北朝鮮、シリアなどなど、欧米の力が及ばない地域からの武器部品の輸入は可能だからである。

そもそも、ピンポイント攻撃に必要な半導体は80年代~90年代の後半の先端半導体とソフトウェア技術があれば、成立する。凄く分かり易く言えば、Playstation 2に使われていたEmotion EngineとGraphics Synthesizerぐらいの性能があれば、GPSやGLONASSを介した位置射程への攻撃は出来る。尚、このクラスなら半導体プロセスノードは250nm(0.25μm)のプレナー型半導体で成り立つ。

ただ、ミサイルが自ら内部のセンサーと衝突回避システムで敵の攻撃を不規則に避けるとかになると、無理だろうが……。

何せ、ロックオン攻撃は、ICBMやSLBMで60年代から70年代には既に開発されており、ピンポイント誘導兵器は、ほぼ70年代~80年代に完成された。それをさらに多用途でRPGレベルまで小型にした製品は、80年代後半までに確立され、90年代には旧型の一部が今のテロリスト指定されているところにまで流れるほどに安価になった。

そもそも、今のロシアが果たして最先端の高精度誘導兵器を使っているのかは分からないが、中長距離からの攻撃なら、今の最先端を用いる必要など既にない。最新型と後方互換性がある安価なユニットを使ったGNSS連動ピンポイント兵器があれば良いからだ。このためのA-GNSS装置は、アジア製なら下手すれば数百円で手に入るだろう。これは簡単に言えば、スマホのGNSS/RNSS程度の精度なら、お安いのだ。

では、高精度とは何かというと、日本で言うとガーミンなどが登山用などに開発しているGPSユニットがそれだ。サブメーター級やセンチメーター級の精度で位置を特定できる信号波(RNSS/GPSならL1S/L5Sがサブメーター級、L6D/L6Eがセンチメーター級)を利用した高精度測位システム、高解像度センシング(赤外線、紫外線、可視光線、その他レーダー反射波のいずれかで最先端の技術を用いた物)や、複数の演算を同時に行えるまたは自立して演算し、攻撃回避や攻撃目標の弱点を狙うことが出来る機能を備えるという兵器のことだ。これらのいずれかまたは全部があると高精度となる。

実はミサイルでここまでの兵器は、生産されていても戦略的に限られた数しか作られていないはずだ。
本当に、確実に相手を射止めることが出来る決戦兵器としてまたは、自国を守る最後の切り札として使われることが多いのだ。何故なら、これお値段がかなり高くなるはずで、且つミサイルは消耗品であるため、まともな軍なら、こういう兵器を全部垂れ流すことは殆どないのだ。

今回の場合は、馬鹿じゃなければ今使っている兵器は古い兵器や寄せ集めのミサイルのはずだ。
下手すればロシアでも作れる誘導兵器を使っている可能性も高い。元々、旧ソの頃には米国とそれなりに戦える誘導兵器を作っていた歴史はあるからだ。

この辺りは、欧米やウクライナが言っているほど、今の先端技術がないから物が作れないはずとか言える話じゃない。そもそも、今の施設攻撃に使える程度の誘導兵器は何年前からあるのか?考えると、ロシアが今のステルスとか、統合型のCICやアビオニクス、コンマ数メートルの全自動回避や追尾、標的誘導の技術を追求しているなら、確かに難しいが……戦争だと言うならば、殺した数とか与えた打撃の数でさえ多ければ良いわけで、世間体(世界)の批判をかわすために市民の犠牲を減らそうとすれば精密誘導の方が好ましいという程度だ。

そう考えると、ウクライナが言う高精度の在庫がないからもう終わるかのような話は成立しない。
まあ、実際だからCNNは以前も同じ事が言われたと書いたのだろう。


そんな中で、このところウクライナも金策に必死になっている。既に欧州の支援が細り始めているからだろう。
最新の話題ではNZの下院で演説することが決まったようだ。

ウクライナの場合は、ロシアより国力が弱く、既に財務状況は火の車だ。それをロシアの不当な侵攻によってということで、各国から援助を受けて、成り立つ状況にある。これは、逆にいえば、それを失うのが先なら、ウクライナが明日にでも降伏する可能性があり、逆にそれがずっと続くなら、ロシアが継続的に戦費を出すのが困難になれば、終戦とは言わないが、徐々に攻撃は緩み、今の北朝鮮と韓国のような関係になると考えられる。

他にも選択肢はあり、最悪はロシアが核を使うとか、他の国にも飛び火するパターンだ。また、シリアのように何年も続いて荒廃するパターンもある。ただ、少なくとも今米国や欧州は徐々に、ロシアと和解することをウクライナにも求めようとしている。今のままだと世界が景気後退に入りはじめ、ウクライナ支援が出来なくなる怖れもあるからだ。

だが、ゼレンスキーのミサイル関連の発言を見る限り、プーチン政権の求心力が大きく落ちずに、来年欧米や日本で景気後退が起きると……欧米の支援も困難になるだろうから、墜とされる可能性はある。これは、今ロシアが苦戦しているとしても、1年後もそうだとは限らないということを意味しているのだ。実際に、2月の頃はロシアがすぐに勝利すると誰もが思っていた……それが外れたのと同じだ。


ウクライナは、世界が支援してくれている間に、勝利ではなくロシアとの関係性を少なくとも五分まで戻さないと、世界の支援が無駄になることを理解していると信じたいが……当初からそれは難しいと私はみている。
まあ、本当にヤバくなると欧米もウクライナのゼレンスキーから徐々に離れ、最悪ウクライナ内部に別の傀儡政権の擁立などを目指すかも知れない。まだ、そういう力が欧米にあればだが……。最悪はアフガンやシリアのようになることと、ロシアが今の状況を1~2年ぐらい長距離攻撃をするだけで放置してその間に戦況分析と軍事の立て直しを行い。世界の関心が離れた数年後に一気に墜とすパターンだろう。実際に、Regnumのロシア動員の当初の記事では、それを予感させる雰囲気の高官発言があったのが気になる。(欧米での報道も含めて、それ関連の内容は流れていないはずだ)


実際あの辺りから、米国政府からもロシア側やウクライナが望むならという表向きの発言をしているものの、停戦や終戦の交渉をするべきと言う話が、一般の大衆紙などでも伝えられるようになった。今なら、ロシアは負けているという体に世間ではしつつも、それなりに悪くない世論の印象で終わらせられるが、逆に言えば、武器支援で押し返すことが出来るのは、ここまでであり、この先もしももっと戦いを続けるなら、支援も減っていくし、ロシアも欧米が出来る支援の限界を分析した上で、準備して反撃するとNATOに加盟する欧米が見ている可能性もあるだろう。

それが、こういう記事に繋がっていると考えると、この先が心配である。
そもそも、ミサイルの在庫(保管しているもの。ストック)が枯渇している=ミサイルが枯渇している(作ることも出来ず、数量が足りない)では無いし……そこに高精度が付くともう、一体どのレベルなのか分からない。今でいう高精度が無理だとしても、ピンポイントで狙った場所を攻撃するミサイルならロシアの技術や中国などから買う安い民生部品、日本などから流れてくる軍事転用規制のない民生品でも作れる可能性は高い。

逆に言えば、それぐらい半導体などの科学技術は民生品でも90年代を遥かに上回る性能や、技術を使っていると言うことである。
まあ、この発表の意図は、停電などが相次ぐ中で、もう間もなく終わるはずと単に国内の住民に希望を持たせるための宣伝活動なのだろうが……。それは、逆に言えば国内の国民の意識が下がり始めていることを意味しており、国民は攻撃が止む方向に向かって欲しいと、政府に求めていると言うことだろう。


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