これから減少が始まるテレビ露出の多いプロの俳優、歌手、声優 …… 物価高、インボイス、国内広告の減少によるギャラの減少が追い打ちに……
以下はAbema timesの記事である。
声優が廃業したり、休業したりというのが続いているようで、それに対する長年それをやってきた彼の見解である。
現実問題は、その声優という人々が思っている狭い話ではなく、需要と供給が一致しなくなっているというそれだけのことなのだが……年齢の高い大御所などになってくるとその理由にも目が向かないのだろう。彼ら自体のギャラはそれなりに高い場合もあるだろうし。
日本における最大の問題は、この社会経済において自分が就いている仕事から、どれだけの予算が割り振られ、どれだけの利益を出し、どれだけの人や物にそのお金が分配されているのか?を知らないか、知ろうとしないことにある。
だから、結果的に自分が大変、自分の業界が苦労しているといった話になりがちだ。しかし、現実はもっと衰退が加速する中で何とか回しているということもしばしばある。まあ、分かり易く言えば、深夜に放送される制作委員会方式の番組ならば、声優だけで食える作品は極めて少ないはずだ。よほどの大御所で、その人に他の声優の数倍を払うような相手なら別だが……多分、その大御所ですら安いと思うぐらいの額に今の時代だと下がっていることだろう。
ちなみに、アニメーション作品で、声優が歌ったり踊ったりしなくても成り立つ物は、主に平日や休日の午前7時台~ゴールデンタイム(21:59)ぐらいに放送される番組に限られる。この時間帯に放送される番組は、基本的にテレビ局主導で放送される局枠だからだ。要は、企画主体がテレビ局なのだ。そして、それに広告を付けて貰うか、または広告業者側から自分もスポットでも良いから広告枠に参加したいと申し出がある時間帯だ。
ただし、今ではそれすらも以前よりかなり怪しい雰囲気であるが……テレビ局の広告収入は急速に萎んできているからだ。まあ、プライム時間帯のニュースの合間で流れるCMを見れば分かる。サプリ、酒、旅行サイト、求人サイト、高齢者向け化粧品、その他通販に車のCMが混じれば良いぐらいだ。
ちなみに、これが子ども向けのアニメとかの枠になると、そのアニメのグッズやお菓子、雑貨や文房具、ファミリー向け保険、子ども衣料品などのCMが一部高齢者向けのスポットも含まれつつ加わるはずだ。20年か30年前までは、月曜~日曜まで必ずどこかのチャンネルでは、16時台~19時台までにアニメーションの放送がされていて、どこかのチャンネルでは、19時台~20時台までは必ずどこかがドラマか紀行もののドキュメンタリーなどを放送し、さらにどこかがコントなどの番組をやっていて、クイズ番組も世界ふしぎ発見!のようなクイズ番組から、頭脳系まであったが……
今は全部バラエティ型○○という昔なら年末年始が中心だった番組に置き換わって、殆どが料理か、お得か、旅行か、裏技かになり、それじゃなければペットか、ネット動画の寄せ集めかになった。こうなってしまったのは、広告収入増加が望めないからだ。
ドラマやドキュメンタリーが減ったのも、昔はもっと長い時間かけて取材されたドキュメントが、TBSの報道特集みたいなちっこい物になったのも、結局は予算がなくなっていくなかで、守るしかない流れになっているからだろう。攻撃に転じるにも、日本国内のパイが小さくなる中では、広告が増えることはない。
その一つにテレビ向けのアニメーションがあったというだけであり、そのアニメーションの中に、声優という仕事があるというだけだ。
尚、基本的に制作委員会方式の深夜アニメーションの利益は、放送だけでは成り立たない。たいていは放送だけだと赤字になる。
じゃあ、どうやって黒字にするのかというと、コンテンツをさらに他に販売する必要があるのだ。一番知られているのはDVD/BDなどの媒体として売る方法が知られている。だが、今はこれも成り立たなくなってきたので、ゲーム、グッズ、ラジオ、小説、マンガ、雑誌、ライブイベント、アニメソング、トークショーなどあれやこれやと売り出して、利益を確保する。そのCMを含めて深夜の時間帯をテレビ局から買い取って、番組を放送することでトータルで利益をもたらす努力をするわけだ。
その中に声優なら、歌って、踊ってイベントやって……というのがある。これは、作品の方向性によるが、男女問わない。
例えば、作品の中で音楽を歌うものなら、男性でも女性でも音楽を歌うことが、現実でも求められる。場合によってはライブイベントまで現実に行うのだ。それが契約にあり、いわゆるメディアミックスで稼ぐのだ。
これが例えば、ゲームならば新作ゲームのボイス収録なども行うことになるだろう。また、ゲーム用の歌などがあれば、それも収録が必要になるし、場合によってはカードゲームなども出てくると、そのイベント出演も求められる恐れがある。これは、制作委員会方式故の柵だ。これを断れる人がいるとしたら、当該の記事にある三ツ矢氏などは断れるかも知れない。彼らは既に上辺にいる人であるため、声だけでもやっていけるからだ。ただ、この状態にしたのは、三ツ矢氏などの声優でもある。声優が露出を行うようになったのは彼らの世代頃からだからである。
これらは、以前、ドラマについて書いた時と同じ構図だ。
ドラマ俳優や映画俳優にアイドルが増えていて、純粋に劇団員などから抜擢される人は減っている。これは、そもそもテレビでドラマを見ようという人が、アイドルの追っかけをする人が増えていること、アイドルをそれなりに安くプッシュされるとそちらに流れてしまうこと、広告業者が、そういう視聴率が取れる人を望むこと。後は、予算を少なくするために、撮影の場所や状況を安く上げようとすると、ストーリーや撮影場所が限られてくることが影響する。
そこに劇団の減少なども重なり、優れた俳優がテレビや映画作品の主役を張ることが減っていく。彼ら自身も稼げなければ辞めて行く。それだけのことだ。
これが、示すのは広告型のビジネスモデルが日本のテレビ業界では維持出来なくなりはじめ、それが顕著に表れ始めていることを示す。
この先、さらに物価高、インボイス制度に高齢化による広告の減少が進むと、より厳しくなるだろう。だから、辞めたり、病んだりという人がこのテレビ関連で働く人は増加しているのだ。
まあ、これは他の業界も国内広告に絡む業界は同じ状況にある。また、一般の労働でも効率や自動化の流れの中で、一人で行う仕事は増加しつつある。結局は、日本の場合は同じ賃金でさせる仕事を増やした国だった。他国の場合は、仕事が増え責任が増えた分、賃金も若干でも上げる努力をしてきた。一方で同じ仕事なら年功賃金はそれほど上がらなかった。今、その反動が起きているとも言え、それこそがあらゆる業種に対して影響を与えており、その一つに声優業なども含まれていると考えれば、日本全体がこの状況になっていると言う見方も出来、それが声優など、テレビ業界のある程度売れている若手も蝕み始めたと考えると良いだろう。
これは簡単に治療して治る病ではない。