「スマホの限界」トレンド入り 天気は良好 月食を撮影する人続出 …… 「#月食写真下手くそ選手権」にノミネートされたくなければ……

ITmediaの昨日の記事である。


今日は#月食写真下手くそ選手権が朝型までTwitterでトレンド入りしていた。
この上手に撮影出来ないというのは、スマホの限界ではない。そもそも、インスタントカメラでも高価なフィルムカメラでも、大判の一眼デジタルスチルカメラでも、三脚などの固定為しに1発で綺麗に撮るのは不可能だろう。

もっと言えば、スマホで撮影するにしても、Camera HDRを解除し、ISO感度を可能な限り高くするか、または三脚などで固定するか、少なくとも窓枠や人の肩でも良いから借りて、ブレが少なくなるようにしてから撮影しないと多重ブレやボケが発生することもある。実際に、月食写真下手くそ選手権を見ると、それが起きているケースが見られた。


<特定の星撮影は難しい>

今のスマホだと夜景はある程度撮影出来るようになった。これは、多眼モデルだと多眼センサーによる画素融合を組み合わせることで、シャッタースピードの低下を抑えていることと、一部機種ではジャイロの信号を利用して揺れ方向のブレを動画解析して補正しているからだ。これは、多眼センサーだからこそ出来る方法で、まず1つのセンサーでボタンを押した瞬間数枚(HDRの場合2枚~3枚程度-HDRはアンダーと標準、オーバーまたはその中間を含めた基本画をいくつか重ねる方法である※)を撮影し、他方のセンサーで前後の動画としての映像を抽出する。それを撮影した瞬間の画に同じ画の部分を透過しジャイロの移動測定に合わせて重ねていくと1枚の写真が組み上がる。
シングルのセンサーでも、この方法を使う事が出来る。AI手法の場合はこういう多センサーの強みを使う。

※HDRでは基準サイズ以下の小さな被写体がゴーストとして残ることがある。月が複数に重なって映った場合は、HDRとAI手法の合成によってゴースト(起点<複数の月/HDR>と軌跡<月が薄く線状に伸びる/ジャイロと複数カメラを利用した動画的な画素合成>が交雑する形)が発生したと考えられる。ちなみに、同じ色で月がビヨーンと伸びるのは、ただの露出時間に同じ速度で手を動かせばそうなる。

これ、実はコンパクトデジタルカメラなんかより遥かに簡単に、見栄えの良い写真が撮れるほど進化している。

それに対して、暗い場所で遠くにある被写体や、小さな点のような被写体を撮るのは、昔からそれほど変わっていない。
この場合に最も悪さをするのは、HDRだ。特に同じ星が複数顕れる時は、HDRが原因である。
それでも、実は安いコンデジなんかよりはちゃんとブレ対策をしていれば、見栄えは綺麗に撮れるだろう。ノイズ率はセンサーピッチがコンデジや一眼より小さいなら高くなるが……。

では、何故特定の星、天体は手持ちで上手く取れないのかというと
明るさが足りないからだ。特に、今回は夜間の皆既月食であるため、地球の影に入ってしまい太陽の光は赤色~赤外線しか反射おらず暗い。暗いということは、それを写真に収めるには、シャッターを切ってから長い時間露出していないといけない。すると、手ぶれが起きる。これは、カメラが最先端だろうが、おんぼろだろうが、基本的には同じなのである。

さらに、暗い中で被写体が遠いと、カメラ側が何を狙って撮影しているかを把握するのが難しくなる。そうすると、増感もそこそこに、シャッターが切られる。逆に、街の明かりとかを加えた方が、綺麗に撮れる場合もある。街に合わせて増感する上に月より近景にある固定物の被写体を基準点として画素融合することが出来るため、月も含めてブレが減るのだ。上記したように、明確にこれが基準となるある程度大きな被写体がないと、綺麗に画素融合してくれないからだ。但し、この方法では月がメインにはならないだろう。


もしも、月だけを綺麗に撮るなら、手持ちならISO感度を手動設定にして最大まで引き上げて撮影するしかない。HDRをオフにして連射機能を使って撮影すれば1枚ぐらいは綺麗なものが撮れる可能性がある。

確実に月だけを綺麗にというなら、三脚やそれに相当するものを使って固定して撮影することだ。特に、シャッターを押すときやタップするときに、手ぶれが出るので画面タッチ以外のシャッターを切る方法(電源割当てや音量ボタン、または専用キー)の設定があるスマホなら、それを利用すること。そして、シャッターを押すボタン方向に、手ぶれが起きやすいのでその方向に対して、支えをするだけでブレは逓減できる。

それから、ズームで撮影すると小さな揺れでも手ぶれは大きくなる。一方で、ジャイロのガイド範囲は一定より大きなブレになることが多いので、ジャイロ補正が弱くなることがある。そのため、スマホの種類によってはデジタルズームを使わずに撮影して、後からトリミングした方がブレが少ない場合もある。


<スマホのではなく、スマホも限界>

これの大事な点は、スマホの限界ではなくほぼ意識せずフルオートで綺麗に撮れるという点でスマホは他を圧倒しているが、そのスマホですら夜間の皆既月食に対して無力だったと言うだけだ。これは、スマホじゃなければ手持ちでも……と思っても実は、1発で上手く行く人は少ないだろう。まあ、そのカメラの感度特性を知っていて、且つ、天体観測が趣味の人なら1発でも余裕という人もいるだろうし、よほどセンサーピッチが広い製品を持っていれば、夜間でも手ぶれは殆どない撮影ができるだろうが……いや、大判のセンサーになるとカメラもレンズも重くなるので、遠くの被写体を撮影するほどのレンズを付けてなら別の意味で困難かも知れない。

逆に言えば、そういう特性が分かっているとスマホでもそれなりの撮影はできるのだ。
もちろん、スマホより大きく高感度のセンサーで、ズームも手ぶれ補正も強いコンデジや一眼カメラを持っていれば設定次第でもっと綺麗に撮れただろう。

そして、スマホも限界だからといって次もそうとは限らない。夜間の皆既月食に適したモード(星空モード)をメーカーが開発出来れば、これを克服できるということでもあるのだから。これは、スマホカメラの花火モードなどが手持ちでもある程度使えるように進化してきた歴史を考えると、今後のスマホカメラで実現される可能性がある。

それが出来る迄は、ジンバルとかミニ三脚とかを利用するのがベストである。



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