わずか1年で時価総額76兆円が消失のメタ 「脱・Facebook」の大きすぎた代償…… 代償が最後にない。

ITmediaの記事である。


Facebook(meta)の話か、今後の業績見通しでも書いてあるのかなと思ったら、全然書かれていなかった。書かれていたのは3p(頁)のうちの1pだけで、後は関係ない話になっている辺り、タイトル飛ばしであり、FPというだけで業績とか投資とかあまり興味がないのだろう。ここは最近こういう記事が増えいる。

Metaの話をすると、メタバース事業は、元々はOculus VRを買収しQuestというHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を利用したゲーム/VRコンテンツ事業を手に入れたことから始まった事業である。コロナ渦での人の行動制限が広がる中で、この先、人の動きはコロナ前には戻らない可能性なども考えて、次世代の主役として選んだのが、metaverse(メタバース)事業であったわけだ。

メタバースというのは、人がコンピュータ上の仮想空間に入るというものであり、現実の世界での動きが連動するとは限らない。現在は、手元のコントローラーなどを握って、コンピュータ内のアバターを動かす方法が現在は一般的である。virtual reality(バーチャルリアリティ)の集大成とも考えられる技術だ。

この技術の先駆けは、実はOculusが最初ではない。ハードとしては確かにOculusが本格的な誰でも買える製品を出した最初とも言えるが、それ以前にアバターを使ったVRコンテンツとしてsecond Life(セカンドライフ)という事業社が存在している。これが、ある種最初のVRであり、メタバースの初代と言えるものだった。実は一時期、日本でも流行していると報道では伝えられ、企業がこの中に事業ブースを作るほどになったが、実際には報道で伝えられるほど、流行っていると言えなかった。あくまで、スポンサーがそれを望んだ結果、メディアが流行を演出しただけだったのだ。そのため、衰退していったという経緯がある。

尚、この手のVRをカジュアルにしたのがどうぶつの森などのゲームだろう。これは完全に現実とは異なるゲームコンテンツで、アニメーションベースのシミュレーションゲームだが、ゲームをする本人が空間内にアバターを作って戯れる辺りは、VRコンテンツとしての役割を満たしているからだ。これを、HMDでやればVRとして扱われるだろう。


それに対して、Metaが行うVRの投資家からみた失敗(時価総額の剥落)は、どうぶつの森などのゲームのアニメーションベースに近く、Second LifeとFacebookのような現実に近い社交場を生みだそうとしたのだ。要はアバターはアニメベース、空間はSecond Lifeのような現実に沿った社会構造を目指したのだ。しかし、消費者も投資家も、社会はそんな中途半端なものを求めていなかったという話だ。NVIDIAからGPUまで購入してやるとう話もあったのだから、きっとRay Tracingを使った以下のリアリティぐらいの世界を作ってくるのではないかと思っていたわけだが、実際はMinecraftをちょっとバージョンアップしたぐらいじゃないか……という酷さで失望されたのである。


で、株式市場から投資資金が一気に流出することになったわけだ。
だからといって、会社が破綻するレベルではなく、ただ期待という評価が高すぎたということでもある。

尚、メタバースで稼ぐのは多分将来的に考えても困難だろう。
以前も1度書いたが、メタバースでOculusのようなHMDを前提にするなら、用途は限られているからだ。
まだ、Microsoftが開発してきたMR用のホロレンズ(Hololens)のような事業としても実用性があるものを考えた方が良い。
何故かというと、HMDはどう考えても一人一台売れるような時代は来ないと考えられるからだ。

もし、HMDでそれが売れるようになるとしても、それは現実の景色も透過出来るMR対応の製品になるだろう。
そこにリアリティを重ねた方が、実用性も汎用性も桁外れに高いのだ。

逆に、メタバースがやるべきことがあるとすれば、それは現実には存在しないものを現実にそこに存在しているかのように表示する拡張ホログラフィックスの方であり、そこに到達する過程として、Oculusを利用するなら良いが、Oculusを使う事を終着として、その先がまだはっきりしないことは、Metaの成長懸念にしかならないのである。


ついでにいえば、FacebookやInstagramの閉塞性も問題だろう。Twitterがマスク氏によって買収されたが、Twitterがそれなりの支持を集めているのは、登録ユーザー以外でも閲覧者制限していないなら閲覧出来る程度の自由度があることが影響している。これは、TikTokやYoutubeなどにも言えることだ。それに対して、Instagramは当初こそある程度の閲覧が出来ていたが、今は登録している人以外が閲覧することは出来なくなった。それが結果的に広告収入や、新規の利用者を減らす原因になっていると考えられる。

以下のホームページだけで差が分かるはずだ。

ちなみに、TikTokも少なくとも日本において利用者が爆発的に増えているわけではないようだ。欧米ではある程度普及している。

このように考えると、Metaの問題点は、既存事業も苦しく、新事業も今のままでは投資の割にペイするまでにかなりの方針転換が求められることが予想される。しかも、Metaの事業の殆どは、広告モデルで利益を出しており、直接ユーザーからお金を貰って行っている事業が少ない。本来なら、少なくとも個人は無料でも、法人ビジネスは有料にするとか、そういうビジネスを考えていく必要があるが、それが他の同じような事業者に比べると等閑だったのだ。

ここをどうにかするには、いっそNetflixやセカンドライフとでも事業を統合し、さらにどこか事業向けのメタバースソフトウェアを開発している事業者を巻き込んで、ただのSNSとゲームといった事業者ではなく、ちゃんとコンテンツや法人向け事業などで利益を上げる体質に変えていくことと、HMDの品質をただのVRからAR/VR/MRそして現実へのホログフィック投射という技術の開発へと足を進めていくことだろう。

そういうもっともっと先の未来へ進むための一歩というビジョンを示せば、発表されていたメタバースの画像が、あの低さでもその後、株価は持ち直したかも知れない。


<投資は業績よりも先行きの期待>

そもそも、企業投資は確かに直近の業績で下落圧力や上昇期待というのが生まれる傾向にあるが、実際にもっとも大きく影響を与えるのは、例え今は赤字でも、将来はこんな未来になると示している企業である。そして、それを毎年少しでも達成していることを示せれば、赤字でも数年間は耐えることが出来る下手すれば十年以上赤字でも売上げが伸びていて、且つ本当に進展していることが分かるなら潰れない場合もあるほどだ。

metaが投資を失ったのは、その未来が示されていないし、示したはずの未来が、期待を大きく裏切っており、その改善策も未だに出ていないからだ。その一方で、InstagramやFacebookは閉鎖的すぎるし、イメージも悪化したあとに、上手く問題のあるフローを制御しなかったことで、悪いイメージが固定してしまった。それなのに、どんどんと閉鎖的な状況へと方向性を変えている。

だから、先行きが暗いわけだ。これを、今後のIR発表で覆すことが出来れば、株価は戻ってくるだろう。大事なのは、それである。

この記事書きは、Facebookの代償と書いているのに、Facebookの中身について殆ど触れてない。その上、最後は新興国などにバランス投資しようという……Facebookの業績や、企業への投資という観点とは全く別物になっている。どこかに運用して貰う金の話をしているのだ。Facebookに直接投資している人は、そんな話よりも、Facebookのことを知りたいはずだから、本来はそこに的を絞るべきだと私は思うが……こういう記事が多いから、日本人は企業の業績などを考えず、投資信託などに向かうようになるのだろう。

そして、その投資信託の中身となる企業がどういうものか、どういう成長性を見て選ばれているかにも無関心の人が増えるのかも知れない。そもそも投資とは、今日明日の成功を祝うものではない。今日100円使っで明日120円になって喜んで、ここに投資して良かったこれからも、投資を続けようと今度は10万円投資して12万円を狙っても、来年には8万円に下がって4万円損したとなるかもしれない。

即ち、投資の時価総額とは将来をその会社の役員や経営トップの実業家がどう示し、それだけの信用があるかで変わる物なのだ。
もし、先行きをしっかり示すことが出来れば、次の決算で再び時価総額がある程度戻ってくることも十分有り得るのである。

そういう部分を見極めることが、企業の株式を対象とした投資に対して求められる事だ。
一方で、当該の記事に書かれているのは、市場投資の中でもいわゆる投資信託と呼ばれる証券会社や銀行などが行うファンド投資である。これは、投信の運用実績と投資先がどういう業態や事業を中心にしているのか?などを見る必要があり、また見る視点が変わってくるので注意が必要だ。

尚、時価総額が下がることを嫌気するような売買なら、目標より上がったら売る。想定より下がって買い時だと思う期待値なら買うといった行動を取ることが大事だ。損失が出るから売るとか、業績が今期は良いから買うとかそういう発想だと、高値掴みや、損失確定した後に業績が上がって、持っとけば良かったという場合もしばしばあるからだ。だから、IR情報を見ることや、会社のトップがどういう発言をするか、将来にどういう目標を持っているかを見ることが大事なのだ。

本来は、Metaの代償なのだから、そういう視点が必要なのだが……そうじゃない辺りが、タイトルとは乖離していることを意味している。そして、結構多くの人はこれをみて、タイトルがズレているとも気が付かないのかもしれない。最近は、こういう記事が多い。



この記事へのトラックバック