“20年間飼育”クマに襲われ…男性死亡 子グマのころに保護 当初ネコほどの大きさも …… 男性は身から出た錆でも、クマや家族には不幸。
TV朝日の記事である。
ツキノワグマは躾ければ賢くもなるが、力があることが知られており、気性が激しいことで知られている。これは、北海道のエゾヒグマでも言われることだ。特にエゾヒグマは米国でグリズリーとして恐れられるハイイログマの近縁種である。獰猛なことで知られる。まあ、人が怖いと分かっているなら、敢えて人を襲うこともないのだが・・・今は、人が餌をやったりするケースや、殺処分はするが、追い払いはしなくなったため、徐々に人の生活圏を脅かす物が増えているのが実状である。
尚、米国にはもう一種クロクマが存在する。アメリカクマとかアメリカクロクマと呼ばれる種だ。これは、残飯や死骸を漁ることが多く、気が立っている時や、人からちょっかいを出した場合を除いて、人が付近にいても、平然と通り過ぎるような穏やかなクマである。これを見てしまうと、クマと人はトモダチみたいに見えるのかもしれないが、彼らも下手に人との関係性を築くと、人を下に見る恐れがあるので気を付けねばならない。
成獣の体高や骨格、筋力は人が圧倒的に下回るのだから……
尚、今回のケースは単純な事故だろう。
ケージの掃除でもしようとしたのだろうが、それでクマが興奮しただろうと思われる。産まれてすぐから育てているなら、飼い主にはなれていたはずだが、問題は大人のクマの体格に対して、人の体格は小さいということ。さらに、60代の人と70代の人では、特に男性は老化が進む傾向にあり、筋肉量が少なくなるという問題があるのだ。クマは、遊んで貰えるぐらいのつもりで喜んで飛び付いたつもりでも、それが命取りになる訳だ。
檻も狭いので、駆け回るにも狭かっただろうし……窮屈だったことだろう。
個人で飼い続けるなら、せめて、家族数名でクマ舎の管理をするように体制を変える必要があったと考えられる。
後は、動物園などで引き取り手を探すかである。10年あるならもしかすると全国の動物園などに問い合わせれば、1件ぐらいは引き取ってくれるところがあったかもしれない。まあ、一番良いのは子グマの段階で、連絡を取ることである。そうすれば、引き取り率は上がるはずだ。子グマは客寄せに使えるからだ。そして、子グマの時代に客寄せが出来ていれば、大人になっていく過程追ってくれる常連さんもある程度付いてくれる。それは亡くなられた飼い主さんが持った愛情を、動物園に来る客や飼育員全体が実感することで、より広く、安全に配慮された園舎で生きていけるということだ。本当はこの選択こそ最適な方法だった。
成獣は今の時代だと動物園でも難しいだろう。
<何でも子どもは可愛いもの……だけど>
子どもや赤ちゃんというのは、人でも動物でもたいていは小さく可愛いものだ。庇護欲が生まれるように愛くるしい姿なのが、彼ら子どもや赤ちゃんだ。ただ、それが未来永劫続く訳では無い。
例えば、自分の子でも自分が大人になって子どもを授かり、それを育てる……親は年老いていき、子はどんどん大人になる。すると、大人だった親との力関係は変わっていく。これが、他の動物だと例えば、10年ぐらい生きる鳥ぐらいなら、大人でも制御が出来る程度で、我々の人生の間に、何度かペットとしてのパートナーが変わっていくことはあるだろう。
これが、今回のクマだったなら、60代で0歳のクマを手に入れて、大往生するクマなら下手すればその初老の人は100歳まで面倒見なければいけない。適正な飼育下ならクマは30年ぐらいは生きるからだ。しかも、遅くても1年ぐらいで人との接点は持てなくなる。彼らの方が力が強くなるからだ。
今の時代、山でクマを拾ってきて、買う人など殆どいないと思うが、もし可愛いと家族などが拾っていたということがあるなら、子グマの間に片っ端から全国の動物園に問い合わせて、引き取って貰えないか確認することだ。最後に殺処分や家族がクマに殺されるような流れになるより、その方が良い。何より、山で野生動物の子どもを拾ってくるなんてのはやっちゃいけない。もちろん、クマ牧場とか、サーカスのような興行の会社を経営してちゃんとクマのストレス管理も出来るなら別だが……
尚、おりも何度か増築しているようにみえることから、もしかすると動物園や猛獣を扱ったことがある人などに相談しながら飼育していたのかも知れない。しかし、本来、動物園に限らずどんな場所でも猛獣舎の管理は、1人ではなく複数人で行うのが基本になっていることが多い。
1人以上が、猛獣の気を引きながら一人が、中の掃除などをしたりするわけだ。それこそが、今回の不幸な結末に至った原因だろう。
こうやって飼育している人はまだ世の中にそれなりにいるだろうが、それが分かっていても、1度育て始めたら中途半端に投げ出すことも出来ない。最初の「可愛い」という感情で、命を育てると言うことは必ずしも割にあう話ではないのが猛獣と言われる動物なのである。