廃止原発建て替え、経産省が計画案 60年超運転も可能に …… 現地建替なら40年/基、移転建替なら着工できるのは上関原発しかない。

日本経済新聞社の記事である。


果たしてこれが基地出るのか凶と出るのか、今世界を取り巻く環境は急激なスピードで変化しているので、原発なら安定した電源になるという発想すらも、10年後には変わっている可能性もある。そのため、やるにしても誰がその旗を振るのか、もし上手く行かない可能性があるとして、のバックアップもLNGなのか石炭なのかそれ以外なのか知らないが、同時進行で準備しておかねば、一本足なら足を掬われるどころか、次に読み違えれば、もう国は無くなるだろう。

今までの経産省のプランを見る限り、そういうセーフティなプランも同時に回すことなく、一本足で動きそうな気配がするのが心配である。
少なくとも、クリーンやグリーンの太陽光や風力の雨後の筍のように作られる様を止めて、ちゃんと夜間も昼間と同等の電力が供給できる電力会社になるようにこれから今ある電力会社に求める法令改正は政府や国会(議員)に答申すべきだろう。

それだけでもかなりエネルギーの安定供給の予測はプラスに働くはずだ。


<原子力発電の問題点は……電気代が元のように下げられない恐れがあること>

今、日本では原発を新設すれば電気代が下がるという声を聴くが、それは今の世界情勢だと間違いである。多分、電気代は上手く行って、元の値段より数割高いところでホールドするだろう。理由は、燃料コストが急激に上がっていることにある。実は、ウラニウム価格が1年で1.5から2倍ぐらい値上がりしており、MOX燃料も急激に価格が上がっている。

そも、MOX燃料の再処理をする事業者の代表が、ロシアのロスアトムであり、原子力大国のフランスですら、フランスなどで処理を依頼している燃料の約2-4割ぐらいはロシアで処理されているほどである。以下は、その契約が結ばれた年の原子力連合会の記事である。

尚、日本が次世代の一つとして掲げているSMR(Small Modular Reactors/小型モジュール炉)の燃料の製造を手がける計画だったのは、ロスアトムである。

こういう問題があって、今後の再処理燃料の価格も下手すれば上がる可能性があり、SMRが実際に世界で稼働する日がくるのかどうかも、今の時点では見通せなくなってきている。

もちろん、今動いている燃料や保管されている安定燃料は安い価格の頃のものなので問題はないが、原発を一基作るだけでも、物価高が維持され材料費(建築資材コスト)が上がったままなら、高くなる。そうすると、原発だから安いはずという理屈は通らなくなる。
これは、ここ数年というか10年ぐらいの日本の世論が声高にそれに転じて、10年ぐらいしてやっぱり失敗だったというケースが多くなる原因でもあるのだが、今までの常識が、これからの常識と同じではないということを、忘れてはならず、実際に過去の常識は今通じていないからこそ、過去の常識のままでその推進派の都合の良い発言に煽動されると、結果的に痛い目を見るのは自分と言うこともありえるのである。


良く、今ある情報を見極めて行くことが大事だ。


尚、日本が最短で独力で燃料費を下げることが出来るとすれば、日本で天然資源を採掘することしかないだろう。
具体的には、石炭の採掘を日本で再び始めるだけで、多分石炭産業に今更他国で進出する国は少ないだろうから、海外輸出までしても利益が出るぐらいの産業になる可能性があり、しかも国内の石炭火力発電所のコストが下がる可能性が十分にある。これを最大30年限定とし、且つアンモニア混合燃焼炉や、BH転換炉(ブルー水素転換炉)に向けた利用に限定して行けば、1MW辺りで国内の石炭火力によって排出されるCO2の濃度より数分の一のCO2排出量で、電力を数倍供給できるようになる可能性がある。

これに日本政府が動けば、化石賞を確実に何十年も取り続けるだろうが、直近でエネルギー問題を解消出来るのはこれしかないだろう。これなら、うまくやれば5年~10年の産業転換で、地方炭鉱の再調査と復活、さらに効率の悪い石炭汽力発電所の刷新の両方が進むはずだ。尚、これを日本が推進すればCOPは終わるだろうし、欧州主導のESGも消える可能性が高い。



では、原発なら建替でどれぐらい掛かるかというと、今ある原発を廃炉にした後の跡地に建て替えるとしたら、最低でも25年~30年掛かるだろう。現在、東海原発が廃炉作業中だが、30年プランである。

その後、現地に新しい建屋を作ってになるので、40年~50年プランである。これは初回の対応なので、新しい方法がいくつか見つかり、半分ぐらいまで時間を減らせると仮定しても、20年~25年は掛かるだろう。

じゃあ、新設ならどうかというと、全く別の場所に新設するなら、現在計画があるのは中国電力が計画している上関原発1号機しかない。これが、来年辺り建設認可されたとしても、稼働は2030年以降になるだろう。

既に稼働している原発の周りに新しい炉を作るにしても、各地の原発周辺は海岸縁で且つ、周囲が山などに囲まれている場所も多い。そのため、造成工事から始めることになるわけで、10年単位の時間が掛かる場合も多い。(一部は造成が容易な原発立地地域もあるが、片手にも満たないはずだ)即ち今電力が必要だとしても、他の汽力発電のように最短7~8年、遅くても10年後には稼働しているという状況にはならない。

では、何故、他の汽力発電ではそれほど時間が掛からないのかというと、単純に放射線による部品劣化や、放射線管理区域の極めて厳しい管理が必要ないからだ。例え火力でも爆発しちゃいけないが、万が一爆発しても、放射能降下物が数十キロ圏内などに飛散することはない。あくまで、発電所が燃え、その設備を維持している人や電力の供給量に影響が出るだけだ。

だから、認可さえ下りれば比較的早く発電所は立ち上がる。今日本に求められるのは、こっちの早期に立ち上がる安定電源とアンバランスな自然エネルギーの蓄電(最低でも1週間ぐらい24時間同じ電力を供給できる事業者へと発電を行う企業が転換すること)なのだが、何故か動いているのは、これじゃないというのが笑える話である。有象無象で太陽光発電所をせっちして、売れば儲かる投資物件として参入が相次いでいる太陽光や風力に対して、その利益で最後の処分もそうだが、今度は最終的に24時間、365日、安定した電力を供給できる体制を最終的に(数年後~10年後に)義務付けることの方が今は急がれることである。

日本は、政府与党も野党も、そして官僚もこういう本来なら国会で議論して決めていくべき、基本となるグリーン基盤の法整備や、原発にしても、火発にしても今から対応を始めて、どっちが速く効率的か、海外の建前より国内の経済としての影響はどうか?などを、議会や部会で賛否を交えて議論せずに、方針ありきで決める国にいつしかなった。目の前にある問題には目を向けずに、多分何とかなるはずで動いているのが良く分かる。

そして、その多分何とかの何とかを、民間に丸投げして……結局民間では無理だったのが5年10年後ぐらいに見えて、右往左往し、最後に国民に節電をとか、国民が原発反対だったからとかそういう話をし始める。多分、この先、原発推進で進んでも、下手すれば原発推進派があんなことを言ったせいで、こんなに悪くなったという話が、またぶり返すだろう。この日本経済新聞社の記事も、それなのが見て取れるからだ。

何も、変わっちゃいない。やるかやらないかだけが決まったのだ。
11年かけて原発はやっぱり必要でしたマルである。

これは、最初から議論に一定の結果(方向性)があって、その方向にするための理由付けだけを、省庁がしていることの裏返しだ。それに、報道なども同じように乗っかっている。これを止めないと、この国は本当にさらにエネルギー危機を加速させていくことになるだろうし、経済も空洞化していき、若い人は海外に逃げるだろう。生活が不便になる一方だからだ。世界一のインフラがあるはずなのに、そのインフラの明日すら、現実に見えている問題の1つ1つをクリアしていくための議論に載せないからだ。


私は、原発反対だからこういう話をしているわけでは無い。
原発がなければ回らないなら原発を少なくとも60年を超えて運転しているものに関してだけでも、より出力が大きく新しいものに切り替えて行くだけでもすべきだと思っている。だが、問題なのは、それで生じる問題点やそれを今から始めるとしても、空白となる電力不足の期間に、安定を補う方法が全く示されようとしないことだ。また、この新設で電気代が下がるかのような話をするのも以ての外だ。新設に掛かる部材のコストは今や2倍~3倍近くになっているはずだ。新しい燃料の調達に掛かるコストはこれからも上がっていく恐れが高い。

そういう部分も含めて、経産省は示すべきだし、国会や部会で議員は議論をするべきだろう。そうすると、単純に原発だけ作れば良いはずという阿呆な結末にはならないはずなのだ。個人的には、古くて出力の弱い石炭火力を10基止める代わりに、新設でこの10基より出力が10基分より多く、CO2排出が10より減る1~4基を新設するぐらいは機間限定で許してもよいだろうし、それに国内での石炭採掘の再開を機間限定で支援しても良いだろう。海外から輸入する燃料費が減れば、その分CO2排出は減るとか理由付けて、期間を限定するとでもすれば国際社会も説得出来る話だ。

これが政治家の仕事であり、外務官僚の交渉における腕の見せ所だろう。
と、私は思うのである。本当にこのままじゃ、日本はエネルギーも、社会基盤も、人口も、食料も心許なくなる一方だろう。

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