Windows Vista Product Guide 20060619 …… 発掘された2006年のパブリックベータ(β2)向け仕様書
既にこの資料はマイクロソフトの公式サイトにはないのだが、パソコンのデータを整理していたら、タイトルに書いたVistaのβ2とRTMの仕様書が見つかった。
今もこれは、マイクロソフト社の商標が生きているだろうし、全文は公開せず一部を画像で抜粋したものになる。
このWindows VistaはWindows XPからほぼ全ての機能や画面構成が置き換わった化け物だったなと思い出す。不具合も多く、求められる性能も当時としては極めて高く、一部の機能は搭載を断念することになるほどに評判も悪かったが、結果的にWindows 7へと昇華されて7で大成功を収めることになる。そして、7がビル・ゲイツがOS開発の総指揮をした最後のOSとなるわけだ。
Windows 11が出ている今見ても、この頃のプレゼン資料(仕様書)は読むとワクワクする。ちょっと古めかしいように見えるが、8以降ののっぺりデザインより、立体的で先進的に見えるのがこのVistaと7である。
上記を読むと分かるが、これはVista β2~RC2辺りまで供給された仕様書である。今はWindows Insider向けのプレビューを常時行っているが、当時はDev、Tech系のユーザー登録をしている人に対して、βテスト用のISOファイルの供給やディスクの配布(有料)をしていた。その当時のISOを焼いたものもまだどこかにあると思う。
面白いのは、左下のWindows Sideshowだろう。これは、今のZenBook ProDuo(PD)を彷彿させる画面を搭載している。実際には、今のZenBook PDとは違って、専用のAPIで一部のSideshowアプリケーション制御を行うものだった。これは、折りたたみ携帯電話を知っている人なら、畳んだ時に表側に表示される着信や時計などの通知表示と同じようなものだ。
これが、ノートPCの天板や、キーボードの上隅などに搭載できたわけだが、結局OEMでも富士通などが短期間採用しただけで、普及はしなかった。原因はアプリケーションソフトが対応しないと無用の長物になる上に、OSが求めるCPUやメモリー、GPU(WDDMドライバー対応)の要件が厳しかったのに、これらを搭載するとお値段が上がったというも原因と言える。
そして、右下の画は当時の発表会などを見たことがあれば、いやテレビCMなどでもこのシーンは利用されていたほど知られているWindows Aero GlassによるWindows フリップと同3Dというタスク切り替えメニューである。フリップはWindows XPや2000などにも搭載されていたし、今も搭載されているが、フリップ3DはWindows Vista~7で廃止された。ものすごく短命だった機能である。尚、現在[Win]+ [Tab]キーは仮想デスクトップの切替ショートカットである。
これを最初から読んでいくと、実はWindows 10も11もVistaとUIこそ変化しているがまだ大差ないことが見えてくる。むしろ、多くの機能はその当時の延長線上にあり、そこから退化し始めてきたことが分かる。向上しているのは、バイザーによる堅牢性とCPUやGPUのハードウェア対応のレベルぐらいだろう。
例えば、Vistaから始まった物としては、
WDDMドライバー、Defender(当時はスパイウェア対策)、強化されたファイアウォール(詳細の制御は現在のインターフェースと同等)、DirectX 3DをOSに統合、新しくなったAudio Layer、ドライバー署名の拡張、保護者による制限、Indexing Serviceのクエリ拡張と検索オプションの標準化、Clear Type Fontの標準採用、リモートアクセス(RDP)の統合、個人フォルダーにライブラリーを採用、システムイメージベースのバックアップなどなどが採用され、ネットワーク系のハードウェアレイヤーも今に繋がるものに置き換わったのがこのときだ。
今少しずつ新しい物に置き換えようとしている最中のものもあるが、一部は当時より劣化(機能の縮小)が始まっており、OSをアップグレードバージョン毎で買い換えることがなくなったことで、コストを抑える為に機能を減らしている影響が出はじめている。ゲームソフトなどもストアアプリになり広告型のモデルになっているが、Vistaや7はネットに繋がなくてもクライアントだけで遊べるゲームが付属していた。
また、Windows Vistaには一世代前のスタートデザインに戻すクラシックモードもあったが、11にはない。
ちなみに、10は8相当のUIに変更出来るタブレットモードがある。
これは、考えて見るとWindows Vistaは確かに不具合も多く不人気だったが、新しいUIに対する配慮などがしっかりされていた不人気の中では、最後のOSである。おかしくなったのは8からだ。UIなどを強制するようになったからだ。それを10で治したのに、11でまたやらかしてきた訳だ。11の場合は、コンテキストメニューまでボロボロにしてしまっているから、慣れれば使えなくはないが、便利だと思っている人が多いとは言い難い状況にある。
そして、OSの根幹としての売りが少ない。
このWindows Vistaの仕様書は索引も含めて303ページという膨大なページ数から構成されている。
何せ、Windows Media Player もIEもこれ専用に更新され、Windows Media Centerが標準搭載され、今のWindowsでは標準にないDVD PlayerやDVD Movie Makerもある。フォルダ(ディレクトリー)タグなどのNTFSや検索インデックスの拡張まで行われており、NT5→6に変わっただけの変化をしている。要は、統一した形で全てのインターフェースを置き換えたわけだ。但し、変えていない部分もある。それは、メニューの基本スタイルである。特に、コンテキスト(右クリック)は大きく変えなかった。
それに対して、11はシステムが求める仕様要件は大きく変わり、メニューも斑で変化している物の、必要だから変わったという感じではない。どちらかというと、違いを示すために変えたという印象だ。そして、それが気に入らなくても慣れろという強制である。その結果、XPやVistaの体験・経験(Experience)や眺望(Vista)という時代とは一線を画すほどにメジャー更新なのに中身はチープになった印象がある。
昔は、年を取って居る人でも、OSが変わればそのためにPCを購入してみようとか、βテストして見ようという人がいたが、今それすら減っているのは、アプリケーションが減っているのもあるのだろうが、OSが消費者の求めるメジャーな進化ではなく、消費者から見て変えなくてもよい(必ずしも求められていない)マイナーな部分を変更してメジャービルド扱いにしていることが原因なんだろうと思えてくる。また、大きな雰囲気を変化する一方で、全体のバランスが追いつかないのも結果的にマイナスになるのだろう。
個人的には、次のメジャービルドを出すなら、最低でもXP→Vistaぐらいの変化をもたらすか、またはもうそういうUIなどの小手先の変化より、信頼性や安定性、最新のAPIだけに対応した方がよいだろうが、商用OSであっても、OSのアップグレードで直接益を得て稼ぐモデルではなくなった今のWindowsでは、過去のVistaや7のような商品を出すことは難しいだろう。