テレ朝レジェンド2時間ドラマに幕 「終着駅シリーズ」「西村京太郎トラベルミステリー」12月終了で …… 次が生まれぬ国。
スポニチアネックスの記事である。
ミステリー系のドラマは、最近見ないがサスペンスもミステリーも、年々番組数は減ってきているようだ。
原因は、予算不足と高齢化という2つが重なっていると考えられる。
予算不足というのは、スポンサーの減少であろう。高齢化というのはこういうドラマで主役を張れる俳優が不足しているということだろう。
日本の映画(邦画)を見ると分かるが、最近、お笑い芸人や、アイドル出身以外の舞台役者出身の俳優が激減している。全くいないわけではないのだが、いわゆるイケメン(ハンサム)ばかりの俳優が増加し、芋役者が急激に減ってしまっているのだ。それを埋めているのが、お笑いなどの芸人だから、その人の芸のイメージが入ってしまうため、こういうミステリー作品などをやるのは難しい。
こういうのは、本当に舞台などで下積みを重ねてきた役者がやっていくことで、演技が広がるからだ。
しかも、他で有名な芸人などを使うと、飽きられた時に視聴率が下がる傾向があり、それもマイナスになる。しかし、適した役者は現れにくい傾向にある。結局、お金の問題と、視聴者層の問題が重なるからだ。今は、若い人は有名人の追っかけのように見ている人が増えていく一方で、作品を頭から楽しむ目的の人は減っている。
まあ、時代劇などと似ていて、ストーリーの流れは単調な作品なので、若い人は文学少年や少女じゃなければ苦手だろうし...。
だから、スポンサーも付きにくいし、これ向けの俳優もなかなか出て来ないのだ。最近は、劇団も徐々に数を減らしているから、それもさらに追い打ちをかける。
<広告放送と下がってしまった質の問題>
これは、広告放送が日本において限界を迎えつつあることを示している。
とても分かり易く言えば、無料のテレビ放送はもう既に衰退期に入っており、これからもどんどんジャンルを狭めていくということだ。
今はまだバラエティ番組や情報番組にアイドルとお笑い芸人などを入れることで回っているが、それが使えるのも時間の問題だろう。
まあ、ニュースのネタを視聴者からの投稿にまで頼っているぐらいで、そのスクープ投稿映像にもインセンティブがないぐらいだから、考えて見るとそれだけ厳しいということでもある。
良い放送をするには金が掛かるのに、その金になる広告がないのだから当然なのだ。そして、それは放送に限らず、広告を出す事業者にも現れている。結局、高齢化しているので、広告を打っても新しい客が望めないからだ。広告を打つのは新商品が出た時と、自ら冠スポンサーをやっている番組で無難なイメージ広告を流すときに限られていく。
そうして、その予算も不要だと考えるほどに、広告価値が少なくなってくると、テレビスポンサーを離れていく。そうやって、日本では主に、スーパーマーケット、百貨店、電気メーカー、サービス事業者、おもちゃメーカー、お菓子メーカーなどがスポットCMから離れてきた。その間に入ったのが、通販、高齢者向け化粧品やサプリメント、医薬品の企業や、介護施設、公共広告や政府広告(コロナ以降急増している)である。
これらも、既にピークは越えつつあり細っていくビジネスである。何せ、高齢者の人口も今がピークであり、通販も既にネットが当たり前のなかで、テレビを中心とした普及は、この高齢世代の生涯が終われば終わっていく状況にあるのだ。
そこに、コンテンツの縮小も重なるのだ。
そもそも、今テレビで流れるコンテンツはその殆どが、「人」の知名度で動いているコンテンツだ。あるアイドル、芸能人、有名人が視聴率を得られるから、それを番組に出せば良い。それが視聴率を支えて居るという体で番組が作られる。
しかし、昔は違った。まず、ある優秀なコンテンツが作られる。それが、ドラマなのか映画なのか、音楽番組なのか、舞台劇や喜劇なのかは分からないが、とにかくコンテンツが作られるのだ。そこで、誰もがスターだと認める人物が、その業界で売れるようになる。すると、その業界以外にもその人の活躍が広がっていく。
今は、まずヒットしそうな人や事務所が売りこまれ、それでそこそこ顔が出てくると、それを番組に採用する。基本的に番組というのは、バラエティ番組や情報番組であり、ドラマ、映画、音楽などの番組ではない。そもそも、そういうジャンルの番組は既にプライムやゴールデンの時間帯には殆ど作られていない。今や昼ドラすら事実上存在しないのだから。日本で最も多いのは食べ物、食べ歩き、街を徘徊、旅行番組と、安売り、商品紹介のいずれかである。情報番組やバラエティ番組の9割はこの機能を兼ねている。
それへの露出度が、人気度に繋がる訳だ。
じゃあ、彼らは演技が上手いのか、音楽は上手なのか、声が綺麗なのか……というと、そうでもない。彼らは無難なトークが出来て、時々面白いことを言えるかも知れないが、それだけだ。それが、映画に出演しても、ドラマに出ても素晴らしい演技とは限らない。アイドルならそれを喜んでくれる追っかけも居るだろうし、アーティストならそれでキャアキャアと喜ぶ人もいるだろう、お笑い芸人なら、親しみとユーモアを楽しめるかもしれないが、それが作品の味になるとは限らない。
下手をすると、情報番組やニュース番組のコメンテーターなどをしているため、そのイメージ分差し引かないといけないケースもある。
そういう問題があるので、海外ではいわゆる俳優やアーティスト活動をしている人は、あまりニュース系の情報番組に出ないのだ。日本はそれをやらないと、今では稼げないほどに番組予算が減っていると考えられる。数を熟さないといけない時代に入っているわけだ。
だから、安く放送出来るし、その手の番組が増えていく訳だ。
もう、テレビはこうあって欲しいといったところで、どうにもならないのだ。
だから、ネットのサブスクリプションなどに人が流れてしまったのだろう。
AbemaTVもFIFAワールドカップの全試合放映権を獲得したが、赤字は続くと予想されているように、ネットの無料放送も黒字化というのに苦労している。まあ、ここの場合はコンテンツがアニメーションや韓流に偏っており、ニュースもANNのクロスネット番組は含まれていないなど、質の問題があるのだが……今回のFIFAで若者よりも年齢の高い層の利用者を急激に伸ばすことが出来れば、いわゆる時代劇や、他のスポーツ(現在DAZNが持っているもの)、この手のドラマ、古いドラマやコメディなどにも、買い付けが進む可能性はある。
それが進めば、恒常的な赤字から脱却できるかも知れない。
逆に言えば、優良なものほどコンテンツを維持するのは相当なお金が掛かることを意味しており、無料放送ならそれなりのスポンサーが必要であることを示している。
ある意味で、日本で日本の資本がこういう有力コンテンツを作って成功するには、Abemaやniconicoのようなネットを中心とする媒体が、成長するしかないが、これらも成長できる時間はもうあと僅かしかないだろう。その間に、国内だけではなく、海外展開という面でも成長できるかどうかが鍵である。日本に固執していたら、テレビと同じ末路を辿るだろう。