登場しないSD ExpressとMicroSD Express……UHS-IIIの二の舞になるかそれとも、来年に掛けて花開くか?来年出て来なければ……

SDメモリーカードには速度や容量、サイズによって複数の規格がある。

サイズでは、SDメモリーカード、MiniSDメモリーカード(既に販売終了)、MicroSDメモリーカードと生産が終わったものも含めて3種類。

容量では、
SDメモリーカードの2GBまで、
SDHC(High Capacity)メモリーカードの32GBまで、
SDXC(eXtended Capacity)メモリーカードの2TBまで、
そしてまだ製品は出ていない
SDUC(Ultra Capacity)メモリーカードの128TBまでという4種類である。

これにバスインターフェースの仕様が加わり、
SDIF/SDIOモードが2種
UHS(Ultra High Speed)が3種、
PCI Express(SD Express)が2種のバスモードとそれぞれに複数のクロックモードがあるため、混沌としている。

ただ、最近このSDメモリーカードも徐々に陰りが見えてきはじめた。
理由は、SDメモリーカードの普及を助けてきたカメラの販売が減ってきていること。監視カメラソリューションでもSDメモリーカードではなく、無線やLAN経由のクラウドやNAS保存の仕組みができはじめたこと。そして最も大きな問題が、スマートフォンや携帯電話でSDメモリーカード対応の製品が減ってしまったことが挙げられる。

特にスマートフォンで利用できる製品が減ったことで、需要の減少に拍車が掛かっている状況だ。
何故、スマートフォンで利用できなくなってきたのかは単純で、iPhoneが外部メモリーをサポートしないのに、Androidが習ったことが理由である。これをサポートしないことでメモリーカードの不具合などによるデータ消失やシステムトラブルのサポートをしなくても良いのも理由となるだろう。

そして、内蔵ストレージの容量も増えてくれば、メモリーカードは要らないと言うわけだ。
尚、一部では速度が遅いからという理由も掲げられているが、それは現実の理由ではない。そもそも、今のスマホはアプリケーションをスマホに転送することは出来ないため、専らデータ保存用になる中で、データでリアルタイムに安定した速度が求められるのは、動画撮影ぐらいだ。

既にスマホに使えるようなメモリーカードの多くはUHS-I-104をサポートしており、書き込み速度の平均レートは50MB/sを超える物が多い。50MB/sの媒体なら、400Mbpsの帯域がある訳で、4Kクラスの動画なら特に問題なく撮影出来る。可逆圧縮RAWでも、20MPixelクラスなら、1秒間隔ぐらいの撮影はできるだろう。

これがUHS-IIやSD Expressになれば、もう何も問題は無くなるわけだが、対応したカードリーダーも2021年に一部で発表されたものの、実際に2022年の出荷予定でまだ投入されていないようだ。まだ、出ないと決まった訳ではないが、多分今年中に発表されるとすれば、間もなく発表されるQualcommのSnapdragon 8 Gen 2の後に発表されるかだろう。

<Snapdragon 次第で出てくる可能性はある>

実は、UHS-IIのMicroSDメモリーカードが登場しないのは、スマートフォンのSoCメーカーでトップシェアのQualcommがSnapdragonにUHS-I以上のホストを採用していないからだ。そもそもUHS-IIIのメモリーカードも最初期にいくつか出ただけで、対応ホストも満足出て来ずに消えている。それもあって、各社のメモリーカードサポートは徐々に縮小してきたという背景もある。速度が進化していくUFSに対して、同じUHS-Iのままではギャップが広がってしまうからだ。


そのため、QualcommがSnapdragon 7や8でUHS-IIやSD Expressを採用してくると、再びメモリーカード採用のモデルが出てくる可能性が産まれてくる。そして、実は今ならそれが望まれてもおかしくない状況にある。それは何故かというと、Google、Amazonなどのクラウドベンダーがクラウドの無料ストレージを縮小する方向で動いているからだ。その結果、カメラを使う人にとってその代わりとなるストレージが求められる時代に入っている。

一方で、Qualcommも性能をトレードオフ(弱点)なしに上げて売上げを伸ばすのは難しい。そこで、今年か来年の製品で、このSD Hostの更新を仕掛ける可能性があるというわけだ。実際に、それが行われるかは分からないが、SDメモリーカードにとってマイナスポイントの不安があるとすれば、高速化すれば放熱が大変ということぐらいだろう。

これさえ、改善出来ればCFExpressよりも一気に普及するだろう。サイズも小さく、最大速度が出なくても使えるデバイスは世間に溢れているからだ。


但し、これが来年に掛けて行われなければ、UHS-IIIと同じように普及は困難になるだろう。需要がそれほどないと見なされているからだ。

SD ExpressはUHS-IIとの互換性がないのだが、何故互換性を捨てたのかというと、これはIIとIIIに問題があったからだ。

SDメモリーカードの欠点はコンシューマで普及したのちにハイエンドでも使われたが、ハイエンドを焦るあまり、熱対策やパフォーマンス対策、互換性の対処に難があった点でCFExpressを生み出すことになった。UHS-II/IIIが評価されないのは、UHS-IIにFD(全二重)とHD(半二重)という2つのモードがあることが原因だ。最大速度は312MB/sだが、このHDは半二重で送り側と受け側の両方を送りのみ、受けのみのどちらかにすることで、312MB/sにするのだ。双方向で利用するならFDの全二重で156MB/sで接続することになる。

これをUHS-IIIでは全二重のみに置き換えたのだがUHS-IIでこの失敗をしたことで、UHS-IIそのものの利用が減ってしまいIIIは出ず仕舞いだった。そもそも、双方向だと速度がさほど上がらなかったのもマイナスだった。これが、もう少し慎重に対処されていたなら、普及していたかも知れない。

SD Expressはそれらの焼き直しを計ったモノだ。全てNVM express(PCIe)で直接繋ぐ方式に置き換えることで、いちいちバス互換を合わせる必要をなくしたのがこれだ。一応互換はUHS-Iまでサポートすることで確保している。逆に言えば、UHS-II以上をある意味で切り捨ててでも、置き換えるつもりだったわけだ。だが、ホストが登場しないため製品も出て来ない。

果たして、後1年や2年で登場するかどうかだろう。それを過ぎても出て来ないなら、このSDメモリーカード市場はSDXCとUHS-IIで終わるかもしれない。



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