スマホなどで採用進むUSB Type-C 「表」と「裏」があるって本当? メーカーに聞いた ……なんだこれ!?

MSNに掲載されていた記事である。オトナンサー編集部というくるまのニュースなどを扱うmediavagueが運営するネットサイトである。


そもそも、USB Type-C Interfaceには表も裏もないというのが答えになっている訳だが、一部粗悪なStanderd A変換などで問題が生じることがあるという話のようだ……これもUSB Type-Cの規格に準じて言うならば、おかしいのだが。

後は、USBロゴがあるとかないとかで裏表だと……。

尚規格上では、USBケーブルには裏表はない。どういう理由でメーカーとしてエレコムを選んで訊いたのか知らないが、もし質問するなら、USB.org(USB-IF)、それが無理ならルネサスやインテル、マイクロソフトに訊いた方が良かっただろう。

何故なら、この3社は当初からUSB規格に携わってきた幹事メンバーだからだ。最新のUSB4はIntel主導のThunderbolt4がベースである。
通常は、Type-Cの仕様書を見せて貰えばあるかないかは分かるはずだ。

Type-Cの場合は、リバーシブルを最初から設定思想としており、裏表の影響で通信が途絶されたり、給電が途絶することがないように設計されている。何より、ケーブルも端子も裏表の両方に全く同じレーン(鏡のように対角に同じ順番でレーン)が並んでいる。レーン順が裏表で対角になっているのは、ひっくり返すと同じ場所になるからだ。

認証の手続きは、ホスト側から見て上なり下なりのどちらかをL0にその逆をL1にするなどの差はあるが、それだけだ。
これをデバイス側ではシグナルが届いたなら、手順に従った認証をして通すのだ。2レーン出通信している時はL0とL1の区別があるが、通常は届いた信号を処理し、送るときには届いている信号が流れているレーンの上り方向に返せば良いだけだ。
USBは基本構造としてIEEE1394のようなデイジーチェーンの関係ではない(詳しくは後述する)。親となるHostが決定権をもち、Device(デバイス、周辺機器)が親に従う親子関係を持っているのだ。だから、親から来るもので適正な信号だと分かるものをデータや電力として認めるという仕組みになっている。

ケーブルが撚れてL0とL1がデバイスではひっくり返っていても、問題はないのはあくまで通信線は通信線であり、認証が正しければリンクアップ出来るからだ。それが、裏でも表でも。

だから、基本的にはケーブルに裏表や上下はない。
但し、Standard AやBからCに変換する場合は、Aは1つしかレーンがないので、必ず通信は決まった片側の配線にしか流れないという問題がある。ただ、仕組み上で言うと、これで裏表の問題が生じることは本来ない。認証はあくまでハードで裏表(L0とL1)を決めているからだ。裏表のどちらでも届いた信号を一つの信号として取り込めればよいだけだからだ。

その裏表が必要なデバイスがあるとすれば、そのデバイス側に問題があるか、またはeMarkerがUSB規格に適合していないか、端子の接触に問題があるということになる。粗悪品の場合は、USBの接点がガバガバなど接合不良があり、それで認識出来ないケースが多いはずだ。


尚、元記事を検索するのに調べたら、この時期Yahooでも掲載されていることが分かったのだが、

このコメントでUSBの複雑さを垣間見ることになった。

USBの規格が7種類とか……いや違うし、もっと言えばLightning ConnectorはUSBじゃなくApple Original Connectorである。

USBの規格という括りだと、USBの通信手順(速度)を決める規格、端子を決めるIF規格がそれぞれ1つ、USBのスピード規格、USBの電源規格、ワイヤレスのUSB規格の4種類である。この中にリビジョンやバージョン、端子だと形状がある。

端子やケーブルの規格は7種類とは言わないもっとある。

形だけで言えば、
StanderdがAとB、それにA Super Speed(SS)とB SSの4種ある。
MiniがAとB、ABの3種類。
MicroがAとBの2種類である。
そして、Type-Cは2.0、3.0、そして3.x Generation(一部4含む)がケーブルのサポート速度毎に最低6種類(一部USB4含む)にUSB BC電源規格(2.0のみ)、USB PDの1.x、2.x、3.xを掛け合わせてType-C 2.0が最低でも3種※(※実際にはサポートする電流、電圧毎に種類が分かれている)、2.0が最低でも3種※、3.x Generationも6×3※種類ある。そして、USB4が最低でも1種類以上、これにThuderbolt 3.0のActiveとPassiveの2種類、Thuderbolt 4/USB4V2のPassiveが1種類が新たに加わる見込みである。

で何種類になるか、数えると種別はSandard/Mini/Micro/Typeの4種で、端子の形状は10種類である。
速度と電源等による違いは、Type-C以外が9種にType-Cで25種(細かく分けると製品化されているかどうかは別としても2倍は超えるはず)以上あるわけだ。即ち、34種となる。

この他にもMHL規格対応とかもあるし、別に規格外の12Vとか24Vとか9VでオリジナルのeMarkerを内蔵したノートPC用のケーブルなどもあるがこれはUSB規格には含まれない。

Type-Cは本当に何でも詰め込みすぎておかしくなった規格である。しかも、全部入りはケーブル価格が高いし、安物で全部入りを歌っている製品は怪しいし……元々細線なので、ケーブルの損耗率(耐久性)も結構低い製品が混じっており、かなり不味い規格になっている。


ついでに言えば、USBがIEEEとシェアを競ったから、A端子がとかいう理由はない。Aはもっと前からあったからだ。

USBの発端は1994年である。製品として普及を進め始めたのは1997年~1998年でPC'97ハードウェアデザインとしてウィンテル(IntelとMicrosoft)が、P6(PenitumII/III)とMemphis(Windows 98)やNT5.0~Neptune/Odyssey(Windows 2000系)で目指していたレガシーフリーOSとハードウェア構想の一環で生まれたものだ。今ではあり得ないほど時間を使った野心的な計画で多くのメーカーが結果的に賛同した。コンピュータ用のデバイスインターフェース規格だ。SCSIとシリアル、パラレルインターフェースを相互通信可能な高速なインターフェースに置き換えるプロジェクトである。要件として、

・Plug and Play
・Hot Plug
・Bus Power(当初はPS/2デバイスなどのLow Power Device Onlyの100mA/5Vまで)
・これまでより高速なシリアルバス
・相互通信可能なバス
・OSやBIOSが対応していればハードウェア(デバイスの種類)に依存しない(相性問題がない)


という部分を埋めたものだ。90年代の後半には普及を始めていたわけだ。

尚、IEEEというのは、そもそも規格名ではなく米国のInstitute of Electrical and Electronics Engineersの略である。日本でいえばJISとか、JEITAといった規格策定もする団体と同じだ。ちなみに一時期USBと覇権争いをしたように見えたものがあったとすればそれは、IEEE1394(i.Link、FireWire、DV端子、MicroMV端子)である。これは、SCSI置き換えをするために開発されたデイジーチェーンのインターフェース規格である。最初から400Mbpsの速度があったのは、SCSIの置き換えだったからだ。これは、ホストの縛りがUSBほど強くないので、ビデオレコーダーやカムコーダーでも使われるようになったが、結局、製品として標準採用したのはAppleとソニーなどの少ないメーカーであり、どちらかというと、テープビデオカメラからのデータ転送用にソニーなどのPCで利用される程度に留まったことで終わっていった規格である。

尚、SCSIの延長線という点でもデイジーチェーンなのが痛かった規格である。USBに対して速度でアドバンテージがあったのに、これが消えていったのは、USB2.0が市場の要求に従って規格策定されたことが大きい(決して競った訳ではなく、要望があったからである)が、それだけではない。同じようにスピードアップしたIEEE1394bが上手く普及せず、AppleもLight Peak(Thunderbolt)やUSBに移ったこと。今ではこれも終わっているがeSATAが規格として出現し始めた事で、IEEE1394bの800Mbpsではアドバンテージが失われたことで、IEEE1394の方が失速した(自滅した)というのが大きい。IEEE1394はカスケード接続ができないので、利便性も低かったから仕方がない。SCSIに囚われすぎたのだ。

最後の砦だったビデオ関連でもテープ型からSDメモリーカードなどのランダム記録が出来る媒体に置き換わったことで、フェードアウトすることになった。

ちなみに、USBが2.0を出さなくてもUSBは消えなかっただろう。それは、キーボードなどPS/2インターフェースの置き換えと、シリアルインターフェースの置き換えにはどうしてもUSBが求められたからだ。しかも、ホストからカスケードで端子が広がるため、ハブを介した拡張も容易だ。そこに高速なデバイスも繋げられるとか、より高い電力も供給できるといった用途も飲み込む形になり、肥大したのが今のUSBだ。今では、ケーブルまで1つに纏めてごっチャ混ぜである。


そういう点では、今本当にこのままType-C一本で行くのだろうか?というのはUSBを取り巻く環境に蠢く懸念だろう。

私は、本当に電源や速度などを含めた耐久性を狙っているなら、CではないDでも8でもE、Xでも良いから、今の全部入り規格のみに準じたケーブルや端子を別に作るべきだと考える。USB4がV2という形になるなら、それこそ先にやるべきことだった。今もしこれを否定するとしたら欧州政府(EU)ぐらいだと言えるほど、USB Cは当初はなかった多くのものを背負いすぎているといえる。





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