大型電源でもmAh表示をする企業や情報サイト……Ahを使うべき。それから、低レベルな検証より、運用や処分も含めた説明が必要
PC Watchの記事を読んでいておもったことだ。以前も同じことを書いたことだ。
何故、mAh表記をするのかが私には分からない。Ahにすれば、1000mAhで1Ahになるわけで1万mAhなら10Ahである。数字を増やして多く見せたいのかもしれないが、このミリという単位は日本では小学校で習う単位なので、数字を大きく示すより、ミリをなくして表記数値を1/1000にしてしまったほうが、評価されるだろうと私は思っている。
もっと言えば、何故電流量のアンペアを全面に押して電力量のwatt(W)を使わない媒体が多いのかも気になる。Ankerなどは全面に押していても、記者がそれの意味を知らないのかな?とも思えてくる。ACコンセント付きでは、特にwattの方が分かり易い。家電の多くは消費電力をwattで明記しているからだ。
例えば50Whのバッテリーだと50Wの消費電力の家電を1時間使う事が出来る程度のバッテリーという具合に、数字から直接使える時間を確認することが出来るからだ。ちなみに、大容量の電源の場合はスマホの充電何台とかで示すのではなく、大きな家電で示した方が良い。スマホの充電だけなら、携帯充電用のモバイルバッテリーで既に10A(リチウムイオンの場合は3.65V-3.7Vなので36.5~37W相当)を超えているものも多いので、スマホ2台、3台ぐらい充電出来る。
1024Whというのは、1.024Kwhになる。6畳用(2.2Kw)のエアコンが1時間以上動かせるだろう。冷房定格(400~430W)で考えると2時間~2時間30分ぐらい動くはずで、暖房定格だと(480~600W)だと1時間~1時間半ぐらいになるはずだ。実際には、電源の出力が1.024Kwhなのでエアコンを1台を繋ぐにもインバーター制御で稼働するときの出力範囲が1Kwを超えるようだと(これは販売カタログに記載されているが、最近のエアコンのマニュアル諸元表には書かれていないケースがあるので注意)、正常に動かない恐れがあるので、1.024Kwの電源には接続して使わない方がよい。誤動作や故障が起きる恐れがある。
<PC向けのUPSではなく電源装置ということに注意>
それから、これをUPS(無停電電源装置)と勘違いしている人もいるかも知れないが、これはUPSではない。
UPSとしての機能をこれらの製品の多くは持っていないので、UPS代わりとして買おうと思っている人は注意して欲しい。
UPSというのは、バッテリーをシステム(主にコンピュータ側)から管理する仕組みを持った無停電電源装置である。シャットダウンのための電源なんて言う人もいるが、それも間違いだ。無停電を維持するための電源で、バッテリーの出力閾値(OSは専用ソフトウェアで条件を設定出来る)になるまでコンピュータを稼働させることが出来る電源だ。その閾値を下回ったら、指定した動作モードに切り替わり、最終的に電源が回復しない場合はシャットダウンなどの処理を掛けてくれる。但し、それが出来るのはUSBなどで連携しているハードが対象である。(たいていの家庭で使われるUPSの場合、1UPSに対して1台迄である)
UPSと同じ動きをするのは、ノートパソコンをDC電源で動かした時、バッテリーが減ったときにスリープやスタンバイ、シャットダウンへと切り替わる機能と同じ動きをするのだ。これを内蔵ではなく外に置いた電源で行うのが無停電電源装置だ。UPSは電源コンセントとは別にUSBやシリアルインターフェースなどを介して、UPSと通信して電源状態を常時監視している。そのため、ノートPCのようにコンピュータ側から高度なバッテリー管理が出来るのだ。また、ミッションクリティカル向けに開発されているため、UPSはAnkerのバッテリー電源装置とは根本的に異なるモードがある。
それは、バッテリーを介さないパススルーモードが搭載されている事だ。パススルーとはバッテリーの電源を一切使わずに、AC電源の電力をコンデンサーで整流した後そのまま、出力に回してPC等に供給するものだ。この機能はバッテリーに異常があった時に、PCやその周辺機器の電源が落ちないようにするための機能である。
さらにそれに伴ってバッテリを活性状態(ホットプラグ、ホットスワップ)で交換できるのも特徴だ。これは、一般的なモバイルバッテリーや家庭用バッテリーでは一部のホームバッテリー機器(住宅設置型の光熱比ゼロ住宅用バッテリー)を除いて搭載されていないことが多い。
<使用後の回収にも注意が必要>
尚、これらのバッテリー電源装置は、何年か使えば劣化したり、故障することもある。その時に、バッテリーはゴミには捨てられず、自治体で指定された回収方法を取らなければいけない。Ankerの場合は、自社で使用済みの回収を行っているので問題ないが、メーカーによっては自分で処分する必要があるので気を付けなければいけない。
ちなみに、回収の対象はバッテリー本体であってケース(筐体)は粗大ゴミとなることもしばしばある。
ものによっては自分でバラして処分しないといけないなんてこともあるので、買う前に処分の仕方も確認しておかねばならない。
尚UPSの場合は、たいていがバッテリー交換式なので結構簡単に処分出来るが……こういう過般バッテリーはメーカーが対応してくれない場合、滅茶苦茶面倒くさいことになるので、本当に購入前に処分方法の確認に気を配ってから買った方がよい。大型製品は安かろうとか衝動で買うものじゃないのだ。
<消費電力と電気代は上がるからね!>
最後にもう一つ大事なことだが、バッテリーシステムはそれ自体で消費される熱量があり、充電した分だけ余すところなく出力出来るわけではない。どういう意味かというと、100W充電に使ったから、100W充電されて100W出力出来る訳では無いのだ。充電池はどの電池でも、最小でも1%~3%は熱で消える。特に急速充電だと瞬間的には1割とか2割とかかなり発熱で奪われて消えていくこともある。そのため、太陽光などと組み合わせて使うには良いが、AC電源を使って充電して、災害用にといった使い方をするなら、1充電での差は何円程度かもしれないが、電気代を上げる効果があることに注意して欲しい。常時充電しているとそれだけでも僅かに電気を食うし……。
この手のバッテリーは、ソーラーや風力などと組み合わせて使うにはお得な手段に成り得るが、冬の電力を気にしてみんながこれを買えば、さらに計画より電気が消費され電力が逼迫するなんてことも決してないとは言えない。
<災害時を考えるなら発電機の方が大事>
尚、災害時という前提ならマンションなどの生活では難しい(換気や騒音の面で導入できない)だろうが、こういうバッテリーシステムより発電機を持っていた方がよい。カセットガスの発電機とかだとそんなに長くは使えないが、それなりに扱いやすし便利だろう。都市部のマンションやアパートなら、窓際に20Wぐらいの太陽光発電を設置して、それで晴れた日だけでも発電させ、この手のバッテリーに日頃から貯めておく手もある。充電池だけ買ってもダメなわけだ。むしろ、本末転倒になる可能性もある。
<冬はまだ良い>
マンション暮らしだとエレベーターが止まるとかありそうなので、そっちの方が大変かも知れない。幾ら、モバイルバッテリーなどを用意していても、マンションのエレベーターはマンション自体に無停電の設備がないと動かないからだ。水も集合住宅だとポンプが動かないので、出なくなるだろう。そっちの方が実は生活する上で重要なことになる。これは夏冬関係なく停電すれば起き得ることだ。
一方で、冬は寒いだけなので、着込むなり毛布を使うすれば、死にはしないし、ストーブや石油ファンヒーター、カセットガスヒーターなどを使えば暖も取れるだろう。正直、電源を整えるとかより、冬場はこういうバックアップの方が大事だ。電気以外の暖房器具が怖いとか使えない場所なら、カイロを多めに買っておいてストックしておくとか、玄関など各所にLEDランタン置いておくとか、そっちの方が実は楽だったりする。
そういう点では、冬はまだ楽だ。
夏の停電は、エアコンや氷、水以外に部屋や体の温度を下げる方法がないので、停電したら最悪だが……。夏場の停電を防ぎたいなら、太陽光を備えた光熱費ゼロ住宅に居を構えるぐらいしか手はない。