グーグルは「プラットフォーマー」か「メーカー」か--「Pixel 7」発売に見る2つの立場 …… 薄利多売の日本理論と調査不足の持論かな?

CNETの記事である。


この記事を読んで思ったのは、そもそもTensorをGoogleのオリジナルチップとして本当に見て良いのか?という点だろう。
まあ、この筆者はどちらかというとAndroidの記事書きというより、iOS側の記事書きなので、AOSPとGoogleの差も分かっていないように思うし、もっと言えばTensorがサービスを分けているのだと思っている辺りも……。まあ、一部ではあるかもしれないが、違うんだよな。これに、物価が上がる中での製造契約の話もデフレが続いた日本らしい発想だし。

この内容はたぶん日本以外ではあまり考えないだろうと思う。

GoogleはTensorで利用している一部の機能をまだ他のメーカーには解放していないが、それがTensorの恩恵によってと考える人は、プロセッサーの内容を知っている人の多くから見ると、少ないはずだ。(Googleはそう言っているが、それを単純に鵜呑みにする人は少ないだろう)

そもそも、Tensor搭載の技術はSnapdragon 8 Gen 1よりだいぶ下だからだ。
セキュリティ機能のTitan M2が強いて言えばRISC Vを使ったオリジナルであると考えられるが、これが果たしてQualcommのSPUやQT-1-Hypervisorを上回るものかどうかも疑問符が付く。QualcommのSnapdragonは、MicrosoftのPluton securityにも通じるものになっているからだ。

もっと言えば、アプリケーション開発環境もTensorよりもSnapdragonへの最適化が数歩先にあり、それ故にTensorの性能メリットは元々低い。Tensor G2が強いて良さげなのは、製造にSamsung semiを利用しているため、製造に掛かるコストがTSMCよりは安いこと。Pixel 6の延長線にあると仮定すれば発熱も小さく治まるであろうことぐらいだ。

この記事書きはスマホ専門の記事書きなので、SoCやCPU、RAMなどのビジネスと現在の物流契約におけるコストの関係を考えていないように見えるが、今、もしもGoogleがTensor G2でSoCの外販を始めたら、多分PixelやTensorの価格は値上げせざる終えなくなるだろう。理由は、Samsung Semiから請求されるコストが上がると考えられるからだ。

何故そうなるのか?量産効果で下がるのではないかと、一部の人は思うだろう。ただ、それは平時に原材料が大量に手に入る時の話だ。今は、逆で一部の原材料は無理をしてかき集めなければいけない時代に入っている。その一方で、以前から契約していたメーカーに、製造メーカーは同じ契約価格で商品を決まった量までは必ず納入しなければならない制約が掛かっている。

要は、大口で長い契約しているときには物価が上がっても、年間で上げられる価格には一定の上限が設けられる契約を結んでいることが多いのだ。その代わり決まった数量までは必ず取引するという契約だ。

この契約があると、実は次の契約改定まで価格は一定以上に上がらないし下がらない。但し、それは決まった数量まで供給する場合に有効であり、その契約数量を超えた瞬間から、価格がドカンと上がることや下がることがある。AMDがCPUの価格改定を新世代になるタイミングでやっているのは、それが影響している。もちろん、船便や航空費という輸送費はタイムリーに価格に反映されるが、ファウンダリーで製造して貰う時やIPを他社から供与してもらって契約範囲で使っていくなかで、それを契約外に拡大する時には契約を新たに今の時代にあった単価で行う必要がある。

それを今したらどうなるか?それがこのTensorの場合は重要だ。

これに加えて、先に書いたようにTensorが本当にSnapdragonやMediaTekのDimensityを超える製品だから、Googleのみしか使えない機能があるのかどうかも考えるべきなのだ。スマホ系の記事書きなら特にそれは大事なことだ。これは、ハードウェアの仕様などを見ていくと分かる事だ。出来た製品だけを見て違いを認識しているからこういう発想になるのだろうが……

Googleが独自機能としてPixelに留めている機能があるのは、処理性能の問題ではなく、ソフトウェアの知的財産面やサーバー面(Google Cloud)の負荷、そしてサービスのコストに対して、まだ(または今後)全体を覆うにはサポートが出来ない理由があるからと考られる。例えば、Google Driveに写真を保存する機能は、以前は全てのユーザーで全ての写真対象だったが、それをPixelのみにした理由は、それを供給してもGoogleに利益をもたらさない時代に入ったからである。

最も、Android Open Source Project(AOSP)として供給するのがAndroidのサービスであり、GoogleとAOSPで標準供給されているものは同じものでは無いことも、大事なことだ。

即ち、Pixelにのみ供給しても利益がありサービスの劣化に繋がらない面があるなら、Pixelのみに供給するというスタイルになっただけというサービスもある訳だ。そういう風に見れば、Pixelのエンジンを外に売ったらというジレンマがあるわけでも、企業がそれを望んでいるわけでもないはずだ。まあ、望んでいる企業もあるかもしれないが、それがもし日本企業なら、そもそも、Tensorをソニーやシャープが使って上手い商品が出来るかというと、今の日本のスマホを見る限りでは無理である。

あれだけQualcomm DevがSDKに力を注ぎ、開発協力して複数のバリエーションのSnapdragonを販売している中で、熱暴走でカメラが止まるとか……そんな製品しか作れなくなっている企業では、Tensorで満足いくものを作るのは難しいだろう。Google Pixelの劣化版が良いところだ。そして、この記事書きが言ったGoogleのサービスはTensorを載せればアドオンされると思って……というのも、実はそうじゃないことが分かるかも知れない。


このGoogle Tensorは、MicrosoftのSQと似ている。SQはQualcommの知財をベースにしており、TensorはArmからライセンスを受けたGoogleのサーバー用IPにSamsungのSoC技術を加えたものだ。独自と言われているが、Exynos Modemなど内面にはSamsungの技術が多用されていると言われる。それを見て判断しているかがPixelとそれ専用に供給されているGoogleサービス(必ずしもAndroid サービス/AOSPではない)のオリジナリティを判断する上での重要性だろう。

尚、私が調べた限りのTensorの仕様は以下となる。
Tensor.png







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