カナダ、暴風雨で被害甚大 トルドー首相は安倍氏国葬見送り …… 日本も静岡の被害は大きくなる。

AFPBBの記事である。


これは国葬儀の話ではなく、災害の話である。国葬儀は今更どうこうなる話じゃないだろう。
この勢いで、支持率がもっと下がり、自民党がもっとまともなリーダーを探す動きを見せれば良いというそれだけだ。

閑話休題。本題は、先週の災害の話である。
カナダは、ハリケーンの影響で各地に被害を与えたようだ。その中でもニューファンドランド島(ラブラドールレトリーバーの原産地)での被害が大きかったようだ。また、プリンスエドワード島(赤毛のアンの舞台)でも停電などの被害があり、本土に上陸後も停電する地域が続出したようだ。

何故、ハリケーンから変わった熱帯低気圧で停電や洪水などの被害が大きくなったのか?それはこの島近海の位置関係を見ると分かる。
このニューファンドランドは緯度が樺太(サハリン/南樺太)と同じ緯度にある。即ち、殆ど熱帯低気圧(Tropical Storm・hurricane・台風)が来ることが無かった地域である。そこにこれが来たことで、大変な被害をもたらしたのだ。


<ここからは日本の台風の話>

ちなみに、同時期日本では台風15号が中部地方を掠め、線状降水帯が気象庁の予想とは裏腹に、静岡県に甚大な被害を与えた。
これによる被害が大きくなったのは、4つの要因がある。

1つは、静岡県の今月の天気が良くなかったこと、気象庁の90日降水量を見ると分かるが、静岡は台風が来ていなくても、降水量がそれなりに多かったのだ。その中で、台風が多い降水の倍ぐらいの雨を6時間ほどでもたらしたのである。そも、静岡は9月2日にも一部地域で線状降水帯が発生し、記録的短時間大雨情報が発令されている。即ち、乾いていれば大雨が降って地面が吸収できただろうが、一部の山岳部などで既に十分な雨が降っている中でダメ押しが降ったのだ。


1つは、台風の東側にある太平洋高気圧が動かず、台風がのろまだったこと。これは、ブロッキングという気象現象だ。
高気圧と高気圧の間に気圧の谷として低気圧が産まれるのだが、低気圧が移動するには高気圧が移動するか、弱まらないといけない。しかし、低気圧が弱く発達しない場合は、高気圧は動かない。すると、低気圧も行き場を失って動けない。これによって同じ場所に雨がもたらされる。

1つは、台風の中心が海上を移動したこと。台風14号は、鹿児島上陸前に島に上陸してそこで方向転換をするほど悠長にした後、早くから鹿児島に上陸して想定より早く弱くなったが、この台風は海上を北上した。


最後の1つは、低気圧の勢力だ。そもそも、台風による降水は、強くなるほど多くなるのだが、実際に地面に落ちて川に流れる量は降った割合から見ると減少する。これは冬場に豪雪をもたらす超低温の爆弾低気圧も似たような傾向がある。降っている雨の量と実際に地面に溜まる量が一致しないのだ。それはどういう状況なのかというと、端的に言えば低気圧の中心付近に向かう風が雨を飛ばし結果的に雲に戻して回収するのだ。だから、横殴りの猛烈な雨でも実際に雨滴として川や地面などに落ちて、流れる水はただシトシト落ちてくる雨ほどの量にはならない。もちろん、それでも尋常じゃない程の雨が吹き付けることはあるが……。

それから、線状降水帯は台風の目が見えるぐらいの強い台風の中(勢力圏の下)では発生しにくい。

これは、台風の目に向かって反時計回りに雲が流れ、雲が斑のらせん状に連なるため、雨量に強弱が必ず生じるからだ。例え停滞していても、台風の勢力が強いほど上空の雲の流れる速度は増し、雨量に数分~数十分間隔での強弱が生じるのだ。もちろん、925hPaを大きく下回るほど強くなると、それもあまり効果を持たなくなるだろうし、強いままで標高が1500mを超えるような山地に台風の暴風圏内の雨雲がぶつかると、猛烈な雨量になるだろうが……。(なお、台風の勢力が極端に強い場合は台風の東側の山地周辺で線状降水帯が産まれやすくなる。)

台風が弱くなると、中心に向かって吹く風が弱まり、ばらけてくる。即ち温帯低圧や前線の谷のようになるのだ。するとその谷に向かって雲が発生するようになる。

尚、昭和、平成初期の発想で雨台風という人もいるが、勢力が強い台風の方が暴風圏内や強風圏域で実際に降っている雨の平均総量は多くなっていることが多いので、発想としては誤りである。勢力の弱い台風は、暴風または勢力域内での総雨量は少なくなるからだ。但し、ある地点にもたらす雨の量が多くなり、その地点以外ではあまり降らなくなる。これは、台風の中心付近の雨雲が不均衡になるからである。たいてい台風の中心より北東側(東ではなく、北東、または東北東である)で大量の雨がもたらされる。



カナダのハリケーンは海水温度が高緯度地域でも上がっていることを示すものだ。
一方で、日本の台風被害は、台風14号が予想よりも弱かったじゃないかという、SNSの記事などからも見られた甘さもあったのだろう。
前の台風などの数字上の勢力を元に相対評価をして、被害は少ないと考えるのは人の悪いところである。実際には、これまでの積算雨量や、これまでの台風がもたらした湿気の量。地域特性、勢力が弱いが故の違いを理解しておかねばならなかった。

そして、カナダという高緯度地域で台風が襲来する時代に最も大事なのは、既に東北や北海道の近海でも台風など、年に1個または2~3年に1個ぐらいそれなりの勢力でかつ、それなりの遅い速度で来る時代に入っており、西日本から関東に掛けてはもう産まれたばかりの台風やもっと南で作られた強烈な規模の台風がゆるゆるとやってくる時代になっていることを理解する必要がある。



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