GeForce RTX 4090/4080が発表!RTX 4090は10月12日発売で1599ドル…… 日本円では22.8~30万円弱
ASCIIの記事である。
遂に、最初のAda Lovelace、AD102(GPU本体の型式番号)が発表された。
最初に出てくるのは、パフォーマンスモデルだが、もう価格でも電力面でもパフォーマンスモデルの片鱗はない。エンスージアストやGPGPUのスケーラブルサーバーやHPCサーバーのような代物である。
今回国内では円安も響いており、前世代のAmpereの発表時と比較すると同じ米ドル単価でも1.5倍~1.7倍ぐらい予定価格が上がっているようだ。それが影響して、4090で23~30万円弱(29万8000円前後)の想定予想価格となっているわけだ。尚、ITmediaの記事が今の想定為替レートと一致しているが、海外での売れ行きにもよるが、輸入代行で仕入れる製品故にASCIIの記事(間違ったのかNVIDIAから情報を別に得たのかは不明)の方が、実勢に近いと考えられる。為替はまだ円安が進む可能性があるため、高安に対するカバレッジ(補償)を掛けて補正するからだ。今は円安が進む可能性の方が高いので、発売開始までにさらに円安が進むようなら、もう少し高めにカバレッジを掛けて売り出されるかも知れない。
尚、記事にもあるように、ワッパーは2倍良くなっているが、これはray tracingやDLSSを使うアプリケーションにおける最高環境(アプリケーション側も最適化済み)のケースであるとも書かれているように、使える要件はあくまで最先端のAPIを使いきる場合のみである。4090はボードのリファレンスデザイン(参考仕様)で最低3スロット占有が推奨され、オーバークロックの仕様によっては4スロットが必要となる爆熱仕様となっている。
それ故に、PCに求めるPSU(Power Supply Unit/電源供給装置)の推奨条件が最低でも850Wに達し、GPUが求める電力はNVIDIAの推奨要件で550W以上(+)、カードを製造するメーカーのオーバークロック要件で700W(この要件のカードではPSUは1000W必要)を超える見込みである。そのため、Ray Tracing(RT)を利用するゲームやグラフィックスクリエーターの人が買うものでは無い。
PSUの要件である850Wは2.2Kwのエアコン(6畳用)の冷房が消費する最大電力とほぼ同等である。これを暖房で見るとヒートポンプなら外気温2度以下の条件で、4.5畳の部屋を30分程度で16-17度ぐらいまで温められるぐらいの熱量交換が出来ると考えれば良い。GPUの場合は、電気をそのまま熱にするので、電力効率はかなり悪いが……。夏場にはエアコン無くして使えない製品であり、部屋に対応したエアコンでは、効率が悪く電気代が高く付くかも知れない。
即ち、性能を生かすアプリなら、確かに性能の割に熱効率も高いが、全体として見ると大幅に最大消費電力が増しており、それに引き摺られる形で、最小電力も下がることなく上がっている。ただ、半導体の規模から見れば、上げ幅が小さいというだけだ。
この熱量の原因は、ASCIIの記事を読む限り、RTコアに前処理によるx86でいうμOPの構造を導入したことが理由だろう。先に分岐予測テーブルでデータを実行順整列させる仕組みが入ったことで、再処理が減り速度は上がるが、休み無く働く前処理回路が増えた事で、その前処理の強化分だけ標準で常に消費する消費電力が上がったのだ。
それをTSMCのプロセスノードで吸収しきれなかったのだろう。
<冬の電力不足が懸念される中では……売れにくい品>
ちなみに、GeforceやRADEONは主に欧米を中心として急激な販売失速に至っていることが分かっている。ボードメーカーも生産を絞っており、特に上級品の売れ行きは想定以上に悪くなっているようだ。原因は、物価というよりエネルギーの価格が高いことだ。最近は原油精製燃料については下がってきているが、それでも安い訳では無い。
石炭や天然ガスに至っては、かなり厳しい状態で、日本で電気代を下げるためにと言われる発電の代名詞である原発の燃料である天然ウランの価格も、この10年で最高値だった時期よりまだ高い。(ちなみに、ウクライナとロシアの紛争初期は今よりさらに3割以上高かった)
即ち、電気代が世界で下がる見込みは今のところない訳だ。少なくとも、この冬を越えた先までは厳しいだろう。
その状況で、このカードを手に入れてでも先端のゲームを高画質、高精細度でやりたいと思う人は残念ながら少なくなる。そもそも、今年はコロナが終わったと言ってよい年だから、巣ごもりゲームに興じる人は元々少ない。そのため、この発表を持ってしても、NVIDIAの評価は上がらないのである。
マイニングも、エネルギー価格が上がった一方で、仮想通貨の価格は下がった状態が続いているので、今や新興国ですら原価割れ状態である。さらに、自動運転もNVIDIAが期待したほどに素晴らしい成長をしているとは言い難い。そもそも、今のNVIDIAチップを自動運転の為につかうと、電気を馬鹿食いするので、燃費(電費)が悪化しそれでもまだ内燃車より短い走行距離を押し下げるからだ。
企業もHPCにしてもScalable Serverにしても、何よりも力という発想から環境や目的・目標に対するコスト効率という部分に目を向け始めている。性能が足りないなら、アプローチ(方法、接触の方向性)を変えていくことで、カバーすることが昔から十分に出来ることは知られていて、そこから新たな道が開けることもしばしばあった。それを求める姿勢が再び起きている訳だ。
これは、IntelやAMD、Qualcommなどの半導体メーカーの多くに言えることだが、今年行われる世代交代までは、まだ過去の延長線上で売れ行きは悪くても、次をと考えてくれるだろうが、この先も長く物価高などが続くなら、次もこんな製品を出せば、これらのメーカーに未来はないかもしれない。