台風14号の目 ISSから撮影 …… 宇宙から見ると美しい熱帯低気圧の形も地上から見ると脅威。

AFPBBの記事である。


この目の状態から見ると台風が最も勢力を上げていた頃の画像だろう。

しかし、今回の台風一部の人は、大したことがなかったとか、いうほど強くなく肩透かしぐらいに考えている人がいるようだ。
それが驚きである。

今回の台風14号は、九州地方で想定より陸地を通る時間が長かったこともあり、急激に減衰してくれ、直接の被害は主に九州地方南部が中心となったが、この台風、第二室戸台風と同等と言われた勢力で、鹿児島や宮崎での暴風雨は桁外れだった。ただ、対策もかなりしっかりして、予めの避難も進んでいたから、人的被害等が少なく留まったに過ぎない。水没や土砂災害などは結構起きているようだ。これ、もしも室戸台風や第二室戸台風の70年~90年ぐらい前に同じ経路、同じ強さで来ていたら、歴史にある被害者の数よりだいぶ上振れしただろう。

何せ速度が、段違いに遅かったからだ。西日本の多くは台風の強風域に入ってから抜けるまで、2日~2.5日ぐらい掛かっていたからだ。
ただ、予想と外れた部分もある。それが、大した事が無かったという人がいた所以でもある。特に、北部九州などでは、そう考えた人も多いだろう。この台風にはある種、不幸中の幸いのような幸運があったのだ。

もしも、この台風が土曜日朝までの予想通りの九州地方の西海上を通るコースだったなら、被害が下手すると今の2倍や3倍じゃ済まなかったという点を忘れてはならない。たぶん結構多くの人や報道は、これがもっとヤバい状況になり得たことを理解していないだろう。

これを証明するために、気象庁のHPから台風の軌跡を取り出した。
以下が気象庁の台風ページから実際に台風14号が通った軌跡になる。

Taifu14.png
これを見ると、台風は屋久島に上陸して、その後、佐多岬を掠め、薩摩半島の海岸縁を通過していることが分かる。

気圧が鹿児島に接近する中で、上がり始めたのは、屋久島で西に移動し、北に方向転換するという過程があったことが原因だろう。この時点でも台風の速度は遅かったため、この方向転換は結果的に台風が920hPaで薩摩半島に上陸するのを防いだと考えられる。

さらに、その後の鹿児島上陸過程でも、薩摩半島の上に中心があったことが理由で気象庁の予想よりも陸地に中心が掛かっている部分が多く、水蒸気を取り込めなかったと考えられる。そして、その後は八代海(湾)から有明海に抜けており、後はほぼ陸を抜けて、関門海峡(北九州市小倉付近)の狭い海峡を通り、山口県(彦島)に上陸している。即ち、九州ではほぼ陸と内海(湾内)を通っているのだ。そのため、急速に台風の勢力が落ちてくれた訳だ。勢力が低下しはじめると、台風の中心に向かって流れ込む空気の勢いが低下していく、それによって大きな台風の外縁にある雲が徐々にばらけて広がるようになる。

さらにそこから日本海へ抜けるのに6-8時間ぐらい掛かるほどゆっくり抜け、その間に台風の雲の北端が偏西風の南端に掛かり始め雨雲が東に台風本体の風の流れより流され始めた。結果、台風の西側での雨量や風が想定より早くに弱くなり、本体より西では早くから雲が消えてしまったのだ。

これが、被害を減らす効果をもたらした。

尚、土曜日の午前までの予想だと、台風の予想中心線は薩摩半島への上陸ではなく屋久島の西20~50km付近を通り、九州の西を掠める予想だった。もしも、このルートだったなら、台風の東側に九州全体や山口県の大半が入ってしまう上に、海上に目がある状態になるため、山口県辺りに来る頃でも945hPaを下回っていただろう。しかも、速度が遅いため、過去に類を見ないほどの大雨の暴風を長時間にわたってもたらした可能性がある。

それが、気象庁が恐れていた台風の進路だったと考えられる。


そうならなかったことが、この空から見て美しい形の熱帯低気圧を想定より早く弱らせてくれたわけだ。


尚、今回の台風のお陰で、九州や、中国地方、日本海側(山陰)などの海の温度はかなり下がって平年並み、一部平年より1度低い水準まで落ちてきている。

まあ、台風が弱くなったり来なくなる程の海水温度ではないのだが、これで、今後海面温度が再び上がらなければ、台風14号規模に再び成長した台風が接近することは今年はないだろう。これは、台風の速度が遅かったお陰である。

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