PentiumとCeleronに代わる「Intel Processor」が登場 …… 現実を言えばi12900Kでも分かるから……。

PC Watchの記事である。


その昔は、周波数の違いが性能の違いだったので、i4004~i486、Pentium(i586)にいたるまで、クロック周波数の違いしかブランドの差はなかった。ちなみに、Pentium(ペンティアム)はPenta(第5の)ium(金属)という造語である。開発名:P5(Micro-Artchitecure)と呼ばれていた当時i586になるはずだったCPU製品に、世界で初めてx86の5世代目という意味のブランドとロゴを冠したのがこのPentiumである。

これが後の広告、インテル入っているが始まる切っ掛けとなる。尚、CeleronはPentium II時代に生まれた廉価ブランド製品である。当時は、AMD K5やK6、Cyrixの6x86、M seriesがIntelのプロセッサーより安く高性能という点から牙城を崩そうとしていた。そこで、投入されたのがIntelのCeleronブランドだったわけだ。ちなみに、初代Celeronは酷い性能だったが、2代目のCeleron、特に300A(300MHz)はクロックアップで上手くすれば1.8倍近いクロックまで容易にクロックアップができる事から、爆発的に売れることになった。

何せ、Pentium IIより遥かに安くPentium IIにはない500MHz超えを達成出来たのだから……。バカ売れして当然である。
オーバークロッカーが流行った時代である。尚、当時のCPUにはアンロック仕様版というKモデルはない、全部のCPUがアンロック版だった。また、マザーボード次第で2ソケットのSMPも利用できた。

話を戻すと、この2つの歴史は意外と長いのである。そして、Pentiumに至っては、当初のブランドの意味が既に失われている訳だが、Pentiumはその後、P6→Net BurstとPentium II・Pentium III/Pentium M、そしてPentium 4/Pentium EEまでの時代を主力として生きることになる。その後、Core 2 Duoへと主力が置き換わり、PentiumはCeleronの上に位置する廉価品というちょっと何言っているのか分からない中途半端丸出しのプロセッサーブランドへと降格させられたのである。


ちなみに、今のモデルナンバースタイルは、Pentium 4時代に生まれた。AMDが先にAthlon XPで導入したものである。
AMDはK7でIntelと同じブランド名を導入したそれが、Athlon(アスロン)だった。ちなみに、Athlonの廉価版はDuron(デュロン)としてAthlon登場から約4年後に投入されている。Athlonは今もPentiumと同じ廉価ブランドとして残っているが、Athlonがモデルナンバーを入れた理由は、当時のIntel Pentium 4がクロック周波数至上主義を掲げてクロックを上げたのに対して、性能はいまいちだったためだ。

Athlonはクロックこそ低かったが性能は高かった。IntelはSSE2の強みがなければ、圧倒的に負けていただろう。
ちなみに、当時消費電力面でもIntelは厳しい状況だった。何せ、熱対策としてBTXマザーを売りこんだぐらいだったのだから……。結局これには置き換わらなかった。

まあ、この頃からキャッシュメモリー容量とキャッシュ速度、メモリーバス(フロントサイドバス)、命令セットなどの違いが生じていたため、これを導入する意味があったと言える。尚、その一方で、これによって、2010年代、Ryzenが登場するまでのAMDと、2015年以降のIntelの停滞を隠蔽することに繋がったとも言える。

即ち、モデルナンバー戦略は、テクノロジーが発展する間には数字の見た目で性能を客観的に判断出来る材料となるが、それが停滞すると、途端に数字の増加に対して実際の性能の恩恵が上がらないという残念な販売戦略に置き換わるのである。


そして、今……Intelはブランドの縮小を決めた訳だ。その理由は、概ね3つだろう。


1.ブランド名に掛かるコストの削減
2.そもそもそのブランド専用に弾を用意する余力が無い
3.上記を考えると廉価品にブランドを与える意味がない

という3点だ。1つは、ブランドを立ち上げると金が掛かるという点だ。売るためにロゴを作り、違いをアピールする必要がある。ただ、PentiumもCeleronも見た目でどう違うか説明出来る人は、Intelの中にもいないだろう。既にブランド内にあるCPUコアの種類が多すぎて、どれがどれやら分からず、物によっては現在販売中のCPU内で性能が逆転することもある。その状況で、2つに分けておく必要もない。

2つ目は、2つも廉価ブランドがあるとそれように用意するCPUを作ることが求められる点にある。上記した理由と繋がるのだが、それようにちょっと仕様の異なる製品を並べると、1世代の差で性能が逆転したり、同じ世代の中でも歩留まりの関係で今月出した製品と半年後に出す製品で逆転することすらある。さらに、今まさに半導体業界で置き始めていることだが、生産数量や生産コストが増していく中で、廉価専用を決まった数量提供するのは楽ではない。

3つ目は、二つ目にも一つ目にも繋がるが、そもそも論として物価が上がり、製造コストが上昇する中で、廉価ブランドを掲げる理由があるのか?という話になる。これは、突き詰めればCore iブランドでも実は言えることなのだが、電力枠を同じにした時の性能も、コア数を増やしたりしない限りあまり上がらなくなっている。一方で、製造コストが高くなる中で、廉価を狙って製品を大量にバリエーション分けして作るのも難しくなっていく。そうなると、ブランド名を消滅させて数字とかに置き換えた方が楽だ。


実際問題として、IntelもAMDも、AppleのMやAプロセッサーと同じで、既にブランド名に拘る必要がないことに気が付いているだろう。モデルナンバーの番号だけで、実は区別が付いているからだ。Intel Processor 12900Kでも一意になるのだ。でも、それをやらないのは、上位ブランドは、より高く売ることが出来ると同時にブランドとしての価値を示す方が高くなるからである。


<安く出来なくなる未来も有り得る……>

NVIDIAやAMDがGPUにおいて、売れ筋になりそうな全部入り且つ補助電源不要という製品を出さないのは、それが出て売れると上が売れなくなるからだ。その一方で、そういう製品は高く売れない。補助電源レスだと今の半導体技術では期待ほど性能が上げられない時代に入ったからだ。

じゃあ、そういう欠陥品はどうするかというと、ノートPCに使うか、使わないなら廃棄するか、またはAMD Radeon RX6400のように、微妙にバランスを崩した製品にして売るか、Geforoce RTX 3050のように、補助電源がいる製品にするか……している。

CPUも今の状況だと、ブランド付してバランスの良い廉価を出すのは難しくなっていくのかも知れない。
誰もが必要とする性能を既に満たし始めている今、下手に廉価でお得なブランドを出すと、それが上位の売上げを落とすからだ。

廉価ブランドが消えていくときに一番怖いのは、豊かな成長から上が詰まってより上位が出せず、停滞が始まったり、組織が弱り始めているという縮退時代を象徴している可能性があることだ。それが、起きていると、近い将来、今の予算ではものが買えないということも有り得る。





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