感染症権威ファウチ氏引退へ 米コロナ対策を指揮 …… あと4ヶ月、お疲れ様です。
時事通信社の記事である。
就任当初はAIDS/HIV対応に奔走し、炭疽菌事件もあり、Ebolaが世界に広がるかもという事態もあった。そして最後の集大成がSARS-CoV-2/COVID-19である。大変ご苦労されたことだろう。年齢的に考えると、曾お爺ちゃんでも既におかしくはない。ご苦労様ですと言いたい。あと数ヶ月あるので、病気等せずにもうひと頑張りして欲しいものだ。
<上が変わらない安心と
上が変わらない不安>
これは、別にこの所長を非難しているという意味ではない。ただ、社会として上が高齢になっていることの怖さ、長くいることの危険性を知る必要があると私は、このコロナ渦から考えて欲しいと思っている。
81歳で38年ということは43歳で所長になり、38年間その立場にいたということである。
考えて見ると大学院にいって24歳~26歳まで勉強や研究し、その後この分野の組織に入ったとして、55~65歳の定年近くまで働くと、30~40年になることを考えると、この人は1人の人が同じ職場で定年まで勤め上げるぐらいの期間所長をしていたことになる。
凄いとは思うが、逆に言えば米国も、一部では老いてきているのだと感じる。
これには良い面と悪い面がある。
まず悪い面から言えば、入社または入省当時からその人が一番偉い人で、最後まで自分の上にいたぐらいの人になると、そもそも下から上への風通しが悪くなったり、下が上になりたいと憧れることが減るという問題が起きる。要は、その絶対者がいる以上、その人と同じ立場には成れないと思うようになったり、畏れ多いと思うようになるのだ。真面目な人ほど、そういうイメージが自分の中で付くわけだ。
また、今回のSARS-CoV-2がそうだが、高齢になると病気にも罹りやすくなり、判断力、決断力も鈍ってくるようになる。過去の経験に囚われやすくなるため、思い切った決断が鈍ることもしばしば出てくる。長く上にいれば、組織の中では絶対的支柱のような役割に変わってくることもある。これがもし、問題が起きている最中に倒れたら……組織全体が崩壊することもしばしばある。組織の体がトップダウンとは必ずしも同じではないので必ず崩れるわけではないだろうが、馬鹿に出来ない話である。
一方で良い一面もある。それは、慕われるほどに優れた人が、長くトップとして存在すれば、組織はより長く発展を続けたり、キビキビと活動することも出来る。だから、そういう人が上に立っているなら、変えなくてもよいとも言える。まあ、実際にそれが良かったかどうかは、その人が指揮を離れた後に分かるのだが……。結構、長くその部署や組織にいて慕われた人って言うのは、後任に就く人も苦労するのだ。
表向きにやってきたことは、その人が得意としたことを中心に(率先してそれだけを)やっているケースが多いため、後にそこの席につくと、ウゲッと変な声が出そうになる「課題」を残してくれていることもしばしばあるのだ。それがもし表面に出てくる形でのものであるなら、分かるのは、1年か2年後ぐらいだろう。
退任が決まったということは、これからそういう引き継ぎの中で、問題点などの反省も退任する側はしておく必要があり、それも引き継がねばならない。即ち、今からがある意味では、最もお疲れになる部分である。