PCの動作があやしいときに役立つ「Windows 回復環境」…… 怪しいときには使わない、使う時には何かを失う覚悟が必要な時に使う物です。
PC Watchの記事である。
これを読んで素人に毛が生えている人は、きっとこう思うのだろう。
これを使えば、普通のWindowsより問題解消出来るのかも知れないと……。言っておくが、怪しいと言うだけならこれの方がWindowsの劣化版で使えないからね。
意図的に自分でこのREを起動したいと思うほど怪しいときには、これを動かす前にイベントログを見ることや、大事なデータをUSBメモリーやソフト付けディスクにバックアップすることを最優先した方がよいだろう。
その上で、試しにこれらの機能を使うと回復するかもと思うなら試して良いと思うが……Windowsのチェック系コマンドは回復環境を起動しなくても管理者権限でPowerShellやコマンドプロンプトから実行できる(一部は再起動時に実行される)訳で、OSが起動する間はREやPEを使う必要などほぼない。そもそも、REやPEはパーティションが違うだけで収まっているドライブは同じだし。USBから起動しないといけないほど不味い場合は、ほぼ確実にシステムドライブかメインボード(マザーボード)のどこかが壊れているので、修理にだすか故障部位を交換するしかないのだから。
その場合のセルフテストはMemtestや、BIOS/UEFIの自己診断(Fast bootを止めてOSロゴ表示などのスプラッシュを止めれば状態チェックコマンドと停止コードが出るはず)を使うことになる。
ちなみにイベントログは以下のように見る。
Windows10ならスタートボタンを右クリックしてコンテキストメニューを出しイベントビューアを開く、
後は、左ツリーからWindowsログのシステムを選び、警告やエラーを探すわけだ。
Disk1にDiskエラーや警告が出ている場合は、システムドライブのエラーであるため、ディスクが間もなく故障する恐れがある。
以下の場合は、既に数年前から代替セクターが枯渇した状態の東芝製外付けディスクのエラーである。
これがシステムドライブで出てしまって、且つそれがWindowsアップデートなどの時にぶち当たると、再起動後にWindowsが起動出来なくなることがある。
この場合システムドライブのディスクを交換するしか対処はない。
尚、メーカー製の場合は、回復ドライブより再セットアップメディア作成ツールなどがあるなら、それで再セットアップメディアを作っておくことの方が大事だろう。その上で、回復ドライブも念の為に作っておくかどうかぐらいの話である。再セットアップメディア作成ツールの機能が無い場合は、回復ドライブがその代わりをすることになるので、購入後最初に作成しておくのがベストである。
<怪しいときに役立つという幻想>
玄人や現場を管理している人の場合は、不具合が起きたときにREを起動する人は殆どいないだろう。
これしか起動しなくなってから見せられたら……その前触れがあっただろうに何故教えてくれなかったとため息が出るレベルだ。
まあ、今はクライアント内だけにデータを保存している企業は少ないと思うので、壊れた部品を換えて、設定をリカバリすれば終わりになると思うが……。レジストリーも弄れるぞイエィとか言うのは、如何にも出来そうな雰囲気だが。これが必要なほどの不具合でRegeditを使うとしたら、セキュリティ攻撃で不具合が生じている時ぐらいである。
その場合で原因特定が必要ならば、回復環境を使う前に、閉塞環境で通常起動させて、ネットワークにどんなリクエストが排出されているかをチェックすることが優先されるだろう。回復しか動かないなら、その限りではないが果たしてシステムがそこまで侵食されている場合、回復環境が正常に動いているのか、UEFIファームウェアが改竄されていないのかも疑う必要が出てくる。もう、内蔵のディスクで処理する領域ではなく、最低でも回復ドライブやリカバリディスクのコマンドラインを使う領域なのだ。
即ち、REはリカバリする時などにも使われるブートパーティションなので、CDやDVDでやっていた回復や2000/XP頃までのNTDOSベースからGUIになって誰でも簡単にお手軽に使えるシステムを、ディスクに内包したという点では手軽になった。が、怪しいときに役に立つドヤァというものではない。
怪しいと思ったときにはまず通常のOS起動状態でバックアップや、イベントビューアでの状態確認をすること、そのあとchkdskやsfc、DISM、メモリーのセルフテストなどを実行することである。
まだWindowsが起動出来る状況程度の不具合があるときには、WindowsPE/REを使う理由など一つもない。不具合の兆候が使っていて見られるなら、REを再起動する前に問題を特定する努力と大事なデータを速やかにCD/DVD/BDや外付けのディスク、SDカード、USBメモリーのいずれかにバックアップする決断が重要になる。
ちなみに、回復環境でできる事は全てWindowsを通常起動した状態で使えるが、回復環境でできる事はWindowsRE/PEで読み込まれるWindows Coreで実行できる最小限のサービスとRE/PE向けにメーカーなどが供給したドライバーの範囲での操作系に限られるため一部制御が制限されることがあるので注意して欲しい。
安価な可変タブレットなど特殊デバイスの場合は、REやPEで一部の操作に支障が生じることもあるのだ。タブレットモードで詳細入力のタッチインターフェースが出ないとか……。だから、こいつは問題解決に使えるとか思っちゃいけない。これはあくまでもうこれしか起動しなくなったときの最終手段であり、その前の間に問題を解決するか、またはちゃんと大事なデータをバックアップしておくことが大事である。
即ち、回復環境は怪しいときに使うものでは無く、
これしか起動しなくなったときに
使わざる終えない最終手段である
それを忘れてはいけない。
まあ、2000/XPとか使ったことがある人が、Windows回復コンソールをコマンド(winnt32.exe /cmdcons)でハードディスクに入れていた時代から見れば、確かにVista以降のREは便利になった。それ以前は、CDかFDだったし。ただ、怪しいだけで回復コンソールを使う人はいなかったと思う。Windowsが起動するならそちらでチェックするのだ。REはそれのGUI版で昔よりは機能が拡張された代物だ。
その頃に比べれば機能は格段に増え、ユーザーフレンドリーになったが、それが逆に明後日な記事を生んでいるような気がする。
大事なことだから何度も書くがこれを使う時はこれしか手がないときであり、もうWindows本体が動かない状況になったか、その環境を1度リセットする(消去して入れ替える)時だ。Windowsのフルシステムが起動出来る状態なら、フル機能が使えるWindows側で不具合をチェックできる機能やアプリを使ってでもできる限りの対応をすべきである。何故なら、REやPEには緊急時に必要な最小限の機能しか備わっていないからである。