IoT家電 普及の壁はメーカーの囲い込みか …… Internet of Things と言う名の日本の昭和な”デジタル”戦略。欧米中はデジタルとは呼ばずInfomation Technoloyを売る。
産経新聞社の記事である。
IoTと言う言葉は、海外の記事では殆ど見られなくなった。一時期はSmart Electronics(スマート家電)という言葉が新しい言葉として世界で新語のように広がったが、それ以前の製品がIoTだった。スマート家電は元々、Amazon、Microsoft、Google、Appleが戦略的に売り込みをしてきた汎用OSやアプリケーションプラットフォームを使う事で、互換性が担保されたり、何かと連動して情報を蓄積したり出来る商品だったが、IoTはモノがインターネットに繋がるというだけを売りにしていたのが違いだ。
これは、日本政府や自治体が盛んにデジタル戦略だというのと同じである。デジタルを売り込んでいたのは90年代である。その後ITになり、Infomation Technologyに移行、broadbandなどを売りにして、あまり言葉は流行らなかったがubiquitousという言葉も使われた。そして、高度情報化社会戦略が政府から作られ、情報スーパーネットワークなどの基盤が整備された。そして、それがクラウドやビッグデータの活用という言葉へと発展して至った。スマートという言葉もデジタルではなくその先にある言葉だった。
それが、いつのまにかデジタルに後戻りした。中身は違うように見えるかもしれないが、そもそも中身はない。今から作るみたいな話である。こういう国だから、企業の家電製品もデジタル戦略が弱くなる訳だ。多分、最初に連携アプローチを統一した企業が勝利するだろう。実際にテレビではAndroid TVが市場の殆どを占めつつあり、そこにFire TVやApple TVがアプリとしてビルトインされる時代であり、そもそもAndroid TVもGoogle Chromecat With Google TVというドングルをHDMI端子に差し込めばどんなテレビでも、スマートTVへと変わる。この先、自動車でさえもGoogleはそのシェアを奪い始めている。
日本企業はいつまで、囲い込みで勝てると思っているのか知らないが、結局ここでも負けて行く方向に向かっている。日本製品は機能が多い割に、その機能をソフトウェアで昇華出来ないという弱さを持っているのだ。
<例えば洗濯機>
洗濯機は一人暮らしでコインランドリーしか使わないなら別として、多くの家にある白物家電である。
高級洗濯機だと、クリーニングから、ソフト洗いまで様々な機能があり便利だが……あなたはその全ての機能を使ったことがあるか?日々、洗濯物によってそれを使い分けているだろうか?
実は多くの人は標準の選択コースやお気に入りのコースでしか洗わない。時々、布団とかでも洗うならそのモードを選ぶぐらいだ。
実はこれ、スマートフォンなどの技術がある今なら、液晶のタッチパネル1枚に、センサーなどから得られた状態表示をして、自動で運転するか、それとも衣類の質などを選択するかを確認するだけにすれば、コース洗いは不要になる。
場合によっては洗剤の種類も、洗剤のバーコードを読み取るセンサーでも付けるかプルダウンから選べば、それだけでネットから選択情報を取得出来るかも知れない。1度登録しておけば、それで終わりだ。層洗浄も運転時間や気温や湿度などの要件をみて自動で行ってもよい。
これは、コインランドリーなどでは既に搭載されているところもある機能だ。
ボタンはとても少ないのに、綺麗に洗えるのは本当の意味でオンラインへと昇華し、スマート家電になったからだ。
何故、洗濯機ではやらないのかというと、高齢者が戸惑うからとかそういう配慮だとメーカーは言うはずだ。しかし、そもそも高齢者は沢山あるボタンが見えない。それこそ、昔の二層式に使われていたダイヤル式の方が使いやすいと今だと思う人もいるだろう。
それならいっそ、液晶画面を付けてそこに表示される文字の大きさなども調節できるようにしておけば、評価は上がるだろう。後は、目が見えない人などに点字、スクロールアップ/ダウン、決定には点字を入れて、音声案内のオンオフを付ければむしろ困る人は減るだろう。
これが本来あるべき、Internet of Thingsである。何分で選択が終わるとスマホに通知するとかではなく、根本的に操作性から見直し、スマートにしろということだ。もっと言えば、これからの時代、必ずしも別にネットに繋がらなくても良いのだ。ネットデバイスで培った技術を白物にも応用して操作性を上げたり、センサーから得られる情報を元にコースや洗浄時間、乾燥の仕方を自動で切り替えられるようにして行けということだ。時間ボタン、コースボタン、層洗浄ボタン、風呂水利用ボタン、乾燥ボタン、電源のオンボタンにオフボタン……ってのが上位モデルらしいのは昭和や平成初期の発想なのだ。
<調理家電の炊飯器は……>
炊飯器だとどうだろうか?これも面白いことが出来るだろう。ヒーティングの切替モードを取り付けることが出来るかも知れない。
今は、炊き上げを開発している担当者が、自己満足や社内の研究やテイスティング担当の評価でこれと決めて取り込んでいる。そのいくつかの試験モードを標準以外にも取り込めば、多様な炊き加減が設定出来るようになる。
場合によっては、好みや気分に応じて食感や味を変えられるかもしれない。スマート家電になると、そういう制御系を管理するソフトウェアとハードウェアが大型に出来るため、出来ることが広がるのだ。玄米白米といったモードではなく、ササニシキとひとめぼれ、こしひかりで味が変わるとか、秋新米と早場米と、1年前の米では味が違うというのも最適化出来るかもしれない。
これがネットに繋がれば、そういうデータの中からもっと豊富なバリエーションで制御出来るとでもすれば、ポイントは上がるだろう。
囲い込むならそれで囲い込めということだ。
<デジタル化は20年前に終わった。IoTは10年前に終わり……
その時の反省も出来ないなら日本企業に未来はない>
日本の家電に足りないのは何かというと、ネットに繋ぐことの本当の意味をはき違えていることだ。そもそも、ネットに繋がって外から操作できるとかそういうのは、必ずしも必要な訳ではない。じゃあ、何の為にネットに繋げられる家電が作られるのかというと、ネットに繋がるぐらいの能力がある製品は、総じてアプリケーション(ソフトウェア)に与えられる機能や制御のためのOS、CPU、センサーがリッチ(高度)なものへと拡張されているため、今まで一つ一つがボタンに分かれてこのボタンではこれしか出来なかったことに対して、より自動でも的確に、または手動なら少ないボタン数で簡単に高度な設定を……出来るようになるから、ネットに繋げられる家電は素晴らしい訳だ。
これは、AppleがiPodを出した時に何を売りにしたのかで見ると良い。iPhoneではなく、iPodの方がはっきり分かる。Appleがやったのは操作性の革命と、著作権保護からの離脱だった。iTunesで囲い込んだようにも見えるが、逆にそれ以上の解放ももたらし、沢山のボタンで制御していた操作性にも大きく変化をもたらした。
その後、携帯オーディオやスマホはそれに飲まれていった。別にこれらが最初からインターネットに直接繋がった訳ではない。
最終的に、ネットも使えるようになったに過ぎない。
日本の家電がまずすべきは、テレビであるならリモコンに1-12のボタンとか、1-15のボタンが必要か?から始まる。エアコンのリモコンもそうだが、スマホならもっと細かく表示出来るエアコンやテレビがある中で、そもそもボタンが必要なんですか?から始まるのだ。家電全般に沢山付いているボタンのうちどれだけが本当に高度通信技術が普及した時代に必要性を持っているのか、そこから考えることが大事だ。
別にIoTとか、インターネットが使えるとかそんなのはどうでも良いのだ。まず出来なければならないのは、情報家電というのに、情報家電等しての操作性を持たないものを情報家電だというのはおかしいということだ。まずは情報家電らしい操作性を取り入れること。その上で、情報家電としてネットでもっと多様な制御が出来るとか、より細かなパラメーターモードを無料有料で供給しているとかあれば、消費者はネットに繋ぐかも知れない。
後は、それに安心できるだけのセキュリティがあれば、評価されるだろう。操作のためのアプリとかは、正直な話共通でも良いのだ。大事なのは、その製品をネットに繋いだ時どんな魅力ある機能をスマート家電がもたらすかである。テレビなら映像や音声コンテンツだろう。
洗濯機なら洗濯モードや新しく発売されていく洗剤に合わせた設定の追加、その日の天気などに応じて乾燥モード(半乾燥を含む)を使うかどうかだろう。
冷蔵庫も気候や温度に応じた設定が出来るかも知れない。また、開閉の時間や曜日、日付傾向から冷蔵や冷凍庫の庫内温度を制御するかどうかを通知するとか……。お買い物の情報である必要はない。
エアコンや扇風機、暖房器具などの空調は統合コントロールが出来るのが好ましい。それぞれに温度計や湿度計などを付けておき、設置場所を双方向に確認出来るようにすれば、電気代の節約や部屋の気流コントロールも出来る。別別に使う人が考えて運転を変える必要も無くなる。クラウドなら、それが細かく、クラウドを使わないなら、ハード本体にあるプログラムだけでやるという形にすれば評価は変わる。それが別別の
メーカーだった場合は、共通部以外の連携ができないという初期のHDMI接続のレコーダーのような仕様にすればよい。
これ、今後中国や韓国、欧米のメーカーはどこかで取り入れてくるだろう。
日本がやるかは知らない……今の状況だとやらずに、どこかがやって日本が遅れて始めた頃には手遅れの可能性が高い。
日本の家電は主力だった日本でも売れなくなってきているからだ。
以前も書いたがソニーが昔、RM-IA9KをMD コンポのPICYのオプションとして出した時に、これで10年もすれば家電の全てが制御出来るような時代が来るかもなと、思ったものだが……結局未だに来ていない。スマホやタブレットは出てきたが、それらでの制御も一頃より機能が絞られ弱っているものもある。スマホやタブレットはOSの世代交代が進むため、維持にもコストが掛かるからだ。
家電が今一度考えるべきは、家電の操作性や機能を使わせるための設定は、今のままで良いのかという原点の発想だ。
家電品も部品の調達コストの増大で価格はどんどん上がっているが、魅力的になったから上がったわけではない。魅力を上げるためには、操作をもっと分かり易く、それでいてより高度なものに進化させる必要がある。本来はそのために、情報技術で使っているOSやソフトウェアの技術を取り入れ、操作ボタンを減らしたり、タッチパネルを増やしたり、障害者等のために音声案内などを付けたりすることが大事なのだ。
その向こう側にやっとスマートという言葉が出てくる。IoTは未来の主役じゃない。既に過去のものだ。大事なのはスマートにシフトして操作性や快適性、能力がより現実に即したものに最適化されていくということである。