ブリヂストン「中国企業への事業売却」を叩くムードが、日本の衰退につながったワケ … 日本の不幸は記者が投資の本当の意味を知らないこと。

ITmediaの記事である。本当に理由記事は減らした方がよい。見る側も気を付けないと、そのうち理由記事に惑わされることになるだろう。
この記事の中身に私はちょっと怒りにた失望を感じた。理由は、市場の現実を理解していないことと、過去の反省とばかりに書いているが、今見るべき視点を見ていないからだ。


中長期的な企業の売買による損益の考え方が理解出来ないならこの手の記事は書くなと言いたい。
この人は、根本的に金融市場の中長期スタンスと投資というものの力、在り方が分かっていないのだろう。

だから、叩いている人に対する説明になっていないのだ。ブリヂストンが生き残るには仕方ないみたいな同情論になっているだけで。これの大事なところは、多分このままで何度も繰り返した日本の経済衰退と他国の成長という罠を長い目で見ると繰り返すかもしれないという人々の恐れに対する答えではないのだ。

その原因が説明出来ない時点で話にならないのだ。仕方ないと一方的に自分や周りを納得させるだけではダメだ。むしろ、納得出来ない人もこれでは出てくるだろうし、後でほら見たことかと言われる可能性もあるのだから。

<本質は先の未来にそれが必要か必要でないかである>

筆者が言っていることも多少分かるが、何故TSMCと比較するのかが分からない(この会社は台湾政府が創設した半導体産業育成事業とフィリップスとの合弁から始まったはずで最初から受託製造専門で生まれているので専業に変わっていた企業ではない)し、欧米の90年代の分社(スピンアウト)と今回を比較する辺りもちょっとどうかと思う。そもそも、欧米の昔のスピンアウトまで出すと当時は、各国の関税障壁や貿易摩擦もあり内側で行われていたものも多く、金融姿勢も各国との関係も違った時代だ。

当時はまだ冷戦期であったため、中国などの仮想敵国との問題はなかったのも大きい。金融相場の時代背景も、売り方も投資のスタンスも今とは違うのだ。そこまで、計算しての記事ではないことが内容から分かる。

もし、この内容で考えるなら、それが本当にこれから稼ぐ力を失い続ける事業なのか?それとも、分社した後に成長する余地があるのか?などの視点と、外資に売ることに対して、得られる利益が、未来にその会社が日本に残ることにより得られるかも知れない利益と比べてどうなのかで見なければいけない。

今この会社には要らない(稼ぐ力が弱くなる)らしいから切ったのだというのは簡単だが、売り先なども含めて、本当によかったのかを考えるのは大事なことである。そういう本質に繋がらない時点で、これはビジネス記事として不適であり、単に自己満足を他人に押しつける記事である。こういう記事が増えるのは日本の未来にとってマイナスである。特に若者がこれで真に受けてはいけない。


<まず第一に売却の善し悪しよりも……
    VAIOのような国内分社は出来なかったのか?である>


譲渡売却はすぐに現金を得られるなどの利点があるので、それを選んだのかも知れないし、ブリヂストンとして、もっと中長期的にメリットがあって選んだのかも知れないが、私が思うにこの譲渡売却で一番に思ったのは、何故、直接決まった企業への売却を選んだのかである。

例えば、東芝が東芝メモリーを処分する際に、政府系ファンドと複数の企業が組んでメモリーの株を買うことで、中立性を担保する方向だった。この事業は将来性があるからそうなったわけだが、ソニーがスピンアウトしたVAIOを見ると分かるが、独立上場なり分社を目的とするなら、国内のファンドや金融機関を介してもよかったかも知れない。

しかし、国内ファンドがそれを望まなかったとしたら、それは日本のファンドからみた魅力や能力(ファンドの能力や資金力も含む)が低いことを示している。ソフトバンクビジョンファンドはこういう投資はしないだろうが、ブリヂストンの分社対象が通信ソフトウェア系のベンチャー企業ならソフトバンクビジョンファンドでも話には応じた可能性はあったかもしれない。

そういう風に見ていくと、日本にこういう工業・化学系でノウハウを持つ再建銀行やファンドがないという可能性が見えてくる。だから、外資に渡った訳だ。本当は、そこを見極める目こそ日本には必要なのであって、売らないと不味いから中国のファンドや企業に売ったのだという飛び抜けた発想になることが、日本のお間抜けも良い発想になる訳だ。金融や投資などを知っていれば、この部分の問題点に繋がるのが普通だ。


日本が空洞化した最大の理由は、国内に再建ファンドや成長ファンドが少なくあっても資金力が乏しいことである。スピンアウト上場をしてくれるような企業や政府系の金融機関がないか、ある程度大きな規模になると、財源不足で賄えないため、海外に売らざる終えなくなるのだ。だから、今だと売り先はアジア中心になり中国が台頭しやすいわけだ。

これが今回のこの売却における一部の懸念を生み出していると言える。
多分だが、別に譲渡売却すること事態を否定する人は今の時代少ないだろう。問題なのは、日本に受け皿がないことである。

もしかしたら、この事業と何らかの他の技術とくっついたときに、軍事なり、衛星なり、宇宙なり、環境なりで次の主力に生まれ変わる可能性はあるのだ。そして、そういう目的も含めて相手が買ってきている場合は、それが欠点になり得る。

まあ、今回の場合は相手方はこの市場を盤石にするためや、ファンド側に売る事業については成長させて一括売却か、技術をバラバラに分離して高く切り売りすることが出来ると踏んだから買うのだろうが……。

閑話休題。
本来スピンアウトは専業に変わることで、投資をその一つの事業に集める効果を生み出すから行われる。しかし、そこに投資できるだけの事業会社やファンドが日本ブランドの企業や銀行など投資機関に居ないことが日本を貶めているということが痛い訳だ。そして、人々に理解させられる記事書きがおらずこんな内容になってしまうのも。損失だろう。

図体がデカい金融機関は沢山あるのに、こいつらこういう日本に貢献してきた企業の子会社を日本資本で活かすために協力もできていないんじゃ無いかという話になっても本来はおかしくはないのだ。欧米での80年代90年代はそういう国内で取り合う流れも結構あった。外資だとそれが政治的な摩擦になる時代だったからだ。もちろん異業種なら別だが、そうでなければ……。
そして今、欧米は中国と摩擦になっているなかで、日本はこれだ。思う人が出てくるのは当然であろうが、買い手がいなければそうなるのだ。


即ち、ブリヂストンを叩く話じゃないのは確かだが、日本市場全体として見ると、日本の金融市場における金融機関や投資会社のスタンスは叩かれるべきであり、政府や政府系金融機関(ファンド)のこういう部分でも無関心にはあきれ果ててモノが言えないという人が出てくるのはごく自然のことなのだ。ただ、それをブリヂストンだけの性にするならそんな問題ではなく、日本国全体の将来への投資に対する考え方に問題があるからと言うべきである。企業も個人も行政府も含めて。


<日本が衰退に繋がったのは、記事書きの視点が目先にしかなく、
                  国民も投資と成長の意味を知らない事にある>


そもそも、投資とは何かというと、お金を投じて何かを産み出し、そこから利益の一部を還元して貰うことである。実際には金とは限らず、時間に投資したり、教育に投資したりという間接的な投資もある。投資を受けて、何らかの成長の原動力を生み出すのだ。そして、投資で得た成長の結果を金銭や感謝の言葉でも、場合によっては「困ったときに他の人へ同じ事をするという形の投資でもよいが」することで発展していく。

即ち成長するには投資が必ず必要なのだ。投資をしなければ、その場に留まる事に繋がり、いずれ衰退する。成長は起きない。
だから、成長が鈍化すると一部をスピンアウトすることも、買収や事業を新設して事業を広げることもあるのだ。

では、企業において投資する際に、外資から投資を受けるというのはどういうことか?

外資から投資を受けると言うことは、その国の企業から他国の企業へと徐々に事業拠点を変えたり、事業で得た成果を他国にも開示すると言うことだ。それが、例えばエルピーダメモリーとMicronの関係だったとしたらどうか?今、エルピーダはマイクロンで主力工場として残っているのは広島だが、エルピーダ時代の主力は秋田にもあった。既にない。あの当時は仕方なかったとエルピーダに関しては居ないと思うが……当時は、台湾のメモリーメーカーとの統合交渉もしていた。どちらにしても、日本には残れなかったかもしれない。当時救済も切れていたし。

これを知っていると、半導体の話とか簡単にはこのネタには使えない。

ルネサスエレクトロニクスもあと一歩半導体不足が遅ければ外資に食われていてもおかしくない。2018年後には既にファブレスを宣言していたからだ。しかし、今回の半導体不足で後戻る形も検討されているはずだ。


ここから見えるのが何か分からない人は多いだろうから、はっきり言ってしまうと、日本は事業会社が多く事業バリエーションが広かった(今も国際的に見て広い)が故に、それのコア(弱ってきた事業)を1つでも残そうという意識が低いか、「ない」のだ。

トヨタの社長が、BEVだけではダメと言っていたが、今回それを目指さざる負えない状況になり、海外を含めた市場からは好感される形となったが、トヨタの今の社長側として見ればBEVだけにシフトはしたくないだろう。これに乗ると、半導体などと同じ結末も有り得るからだ。できる限りギリギリまで粘る努力をするはずだ。

場合によっては、分社したり、グループや資本関係にある会社毎にエンジン、電気、水素など分散してでも何とかすることも考えて居るかも知れない。

何故そういう手を取ろうとするのかというと、要は未来に必要なモノが、必ずしもBEVやFCVの技術だけで終わるとは限らないからだ。BEVが今は選ばれているが、BEVに欠点があるとなれば、他にまた切り替わるのは間違いない。その時に、切り替わる先の選択肢となる技術が、もし日本にないか、日本では弱っていた場合……日本はそれを再び自分の手に戻すために後手に回ることになり、価格競争力でも、技術力でも追いつけなくなる。それをやったのが家電だった。

だから、本当は一気に外資などに売るような流れになってはいけないのだが、日本は既にそうせざる終えない金融機関や機関投資の情勢なのだ。残念な事に……その結果、親会社が体力の限界直前まで保持し続ける流れしか選べない状態が今の今までも続いているのだ。


もっと言えば、政府(内閣)も盆暗で自分の小銭を増やすことぐらいしか考えない役立たずだから、こういう事業売却を静観する。文句を言うときには、金も出さないし、金を出しても報道する人間が、金融脳を持たない無能だから、非難の的になる。

もっとも、政府系の金融機関は政治家のパシリか、日本の護送船団金融機関で遊んでいた人か、肩書きだけ優秀な官僚出身だから、無駄に浪費すること間々ある。この最近で本当に確実に成功したのは民主党時代に始まったJAL再建タスクフォースはよかった。
孫正義でも、今回宇宙に行って帰ってきた前澤友作のようなベンチャー脳と大きな組織の再建した手腕がある稲盛和夫のような人間が必要だが……政府系ファンドは基本天下り先っぽい属性もあるので……上がよくてもなかなか上手くはいかない。

そう即ち、日本の構造的な問題に繋がるのだ。


<未来が見える人はいない。
     日本人なら日本に必要な技術が残る未来を切望するもの。
                    日本人は仕方ないと言うか、ただ嘆き怒るだけで本質に至らない>


が結局今までの失敗の全てである。
だから、中国系の企業に売るなんてと人々が叩くが、彼らも本質は分かってない人が言っていることが多い。

それに対して、答えになる回答を寄せるのが記事書きの仕事であり、会社を擁護するだけではいけないがこちらはこちらで、市場を知らない。
過去回帰すれば答えになると思っている。
そもそも、過去の話を出しても、その時代背景と今の時代背景は違うし、その時代背景がある。金融情勢、社会の風潮、事業の形、いずれも違うのだ。エルピーダ時代とブリヂストンの10年の違いでも全く背景は違う。

どちらにも共通していることがある。それは、本質(本当に問題となっている部分)ではないということだ。それを、企業視点で仕方ないことを自分で納得するように考えるのか、それともその企業の努力が足りないと思うかの違いだ。だが、どちらも国益を落とすことに繋がる可能性は高く、本質に至らないから強引に納得して上手く行くことを祈り我慢するか、上手く行かないと起こり散らすかの違いにすぎないのだ。



それが、二度と国や世界にとって最も収益を上げそうな機関事業として戻ってこない事業ならそれでもよい。
しかし、もし機関事業として戻ってくる時がいつかやって来るなら、あの技術は日本に残っているべきだったとまた誰かが言うことだろう。それが、この記事書きかも知れないし、これから大人になる人かもしれない。

どちらにしても、未来は分からないからこそ今ある日本技術は残って欲しいと思うのは当然なのだ。
ただ、残って欲しくても日本に残そうという金融機関や投資家がいなければ、残らないのだ。そして、もし残ってくれたとしても、その技術をよい形昇華出来る人材やアイデアマンが居ないと結果的に、衰退する。

本当の衰退の原因はここにあるが、ここまで至れない日本人の思慮不足も近年は徐々に蝕み始めている。


<国内で投資と革新のための企業間のコミュニケーションを>

本来ならスピンアウトで日系企業や投資家、金融機関が存続してくれるのが好ましい。そして、それらが潤沢な資金を投じると同時に、スピンアウトした企業が他の会社や投資家の関連会社との関係の中で、新しい発想を生み出して成功してくれるのが望ましい。

だが、日本ではそういう頭を持っている国民が少ない。
何故持っていないかというと本来ならそれを知って書くべき記事書きが、投資というものが未来に対してどう影響を与えるか、金融市場がどう動いているかを前提に考えないからである。答えをこうするべきと決めて敢えて逆張りしているのかも知れないが、それでは将来的に国益を損ない場合によっては自分の仕事すら失い始める未来を導くような浅はかな行動なのだ。

技術を守るにも進めるにも大事なのは「投資」である。ただし、投資しただけでは利益も革新も生まれない。技術革新するには、その技術を幸福のため利益のために使うアイデアが必要であり、それを形にすることもまた技術だ。だから、多くの企業が連携していくこともまた必要であり、それにはお金が必要だ。だから投資になる。連携すると、関連企業が売却を検討している企業からじゃあ譲ってくれということもあるかもしれない。それが、日本だったらよかったが、今回は海外だったわけだ。

そして、日本の関連企業や金融会社投資会社からは打診もないか、打診する相手すらいないのだろう。

どう思う?というのが本当の脅威であり、衰退の本質である。
ここまで読めば分かるだろう。これは多国籍企業には一部の売却だが、日本国や日本国に縛られている国民の多くにとっては、衰退から逃れるための戦略のような軽い話じゃない。現在進行形で衰退している中で、日本の中で救い合う力すら本気で危うくなっているという現実を示している恐れもあるのだ。

それをまず知ることが、我々が現実を直視する上で大事なことである。

その上で、当該の記事が典型だが、今の日本はビジネス記事も含めて発想が古いのだ。
いつまでも昔と比べて、昔はこれで失敗したから今はこうしているのだと言い張るのは未来に向けてこれから歩む人々には何のプラスもない。
そもそも、昔から日本人の発想が他の国と違う事すら考えもしていないのが不味いのだ。

日本に足りないのは、継続的に投資する力であり、投資した対象に対して興味を持って提案したり監査したり確認したりする力である。これをする人間が少ないと、日本から技術も人材も逃げて行く。

そして、実際にそれがもう何十年も繰り返されているのが今である。何故なら、記事書きや、経済の専門誌の記者すらそれを理解せずに、日本流の昔と今の比較という定常論に嵌まっているからだ。そうではなく、今ですら他国と比べると弱い部分があるのではないかと考え、改善策を皆で出しあっていくことが大事である。



尚、今の時点でブリヂストンが当該事業を持ち続けるメリットは極めて薄い。
そして、当該事業部もブリヂストンのままで成長する可能性は低いだろう。

それに対して、何とかしたいと思う人が沢山いて、全体で企業一つの資本の1/4でも何とか出来るぐらいの投資が得られるなら、誰かを代表にして買収目的会社を作ってブリヂストンと交渉すれば、もしかすると流れが変わる可能性もある。ブリヂストンの株を買って、総会で売却阻止提案をするのもありだ。

こうだから仕方ないではなく、成立するかは別として今でもそれを止める提案や対策を講じる手段はあることも、知っておくべき事だし、記事書きがそれを伝えてもよいだろう。まあ、実際にこういう風に考えると、仕方がないとかただ怒る方が責任はなくて楽だから、考えなくなったのかも知れないが、この発想のままで国民が毒され続けると、技術は国から出ていき衰えるだけである。


<海外は専業で成功……ではない>

最後にもう一つ当該記事のミスリードを書いておくが、専業や事業の集約をするから成長する成功しやすいと思っているならそれは間違いだ。
時代や環境に合わせて、事業を縮小したり、拡大したり、新しい分野に挑戦したり、買収して市場を取ったりすることで、次の成長エンジンを得られそれが結果的に嵌まることはあるが、投資を一カ所に集中した専業だから成功する訳ではない。

専業で、分業で、垂直で、水平でというのは今の成功を見た時に、それが成功しているからそう見られているだけだ。例えば、半導体に特化しても、もうエルピーダは存在しないわけだ。それは決断が遅かったからではない。例えば、先端工場が日本ではなく、東南アジアにあれば残っていた可能性はあり、資本の余力や他社からの増資なりがあと1年か2年分あれば生き延びたかも知れない。そのぐらいの差だ。

SHARPはテレビに大量投資して苦しみ鴻海の配下に入って復活し、今は以前よりも事業を水平垂直に拡大しようとしているはずだ。それは、販路が広がると同時に、関連会社のシナジーを重ねたからである。それは、今、それなりの業績を上げるSONY Groupにも言える。

成功と失敗はある種紙一重である。ただ、失敗した後、成功した後から見ればそれが成功だった失敗だったという勝因や敗因がある。それを反省して活かすことは大事だが、その反省が必ずしも、未来の成功を担保するとは限らない。未来は過去と全く同じではないからだ。

では、何が成功を生むのかというと、他より新しい何かを生み出すための投資を続けることである。そして、成果をともに求める事だ。
それを与えてくれる投資家(銀行、ファンド、個人)が減っていく国は技術が逃げて行くのである。



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