半導体、日本のシェア8年後にゼロ? 尾を引く金融敗戦 …… 金融は関係ない。そもそも、中身がないからである。

日本経済新聞社の記事である。


この記事とは直接関係しないが、今日昼にニュースを見て一番に思ったのは、給付金は一括でもOKにするからなんとなく良さげに終わるような雰囲気でニュースが進んでいたことである。いや、国会もそうなんだが、一番この話題で語られたのはクーポンの発行で900億円金が掛かるという点だったのだが、その話は消えて、給付を一部一括にすることで一体幾ら節約できる見通しなのかすら、誰も語らなくなった。

そもそも、6月になるとか貰う奴らは文句いう話じゃないし、上げる側も少々遅れることぐらい我慢しろと言えばよい。貰えない大多数の人々は、この問題は一体幾ら給付に金を掛けるつもりなのかである。無駄に生じる2度目のクーポン分のコストが、ゼロか限り無くゼロになる見通しがあるのか?である。

報道機関も含めて、いつのまにか本質から話を逸らして終えようという雰囲気があるのが、本当に情けない。そして、それが今や日本の報道における当たり前になっているのだから……

それが、この答えなんじゃないかと言いたくなるし、実際そうなんだろうなと思うのだ。都合の悪い話はしない。うっすらしたと思ったら、その先には進まずいつしかよい話にすり替わる。だから、国民もそれに流される。悪い状況は悪いと言い続けることが大事であり、改善も反省もせずに、問題だと言い続けても改善されないから改善している国は勝てなくなる。それだけの事だ。少子化問題にしても、高齢化にしても、税制にしても……科学技術にしても。


<本質は金融ではなく、時々の政策の失態>

90年代後半~2000年代初頭に掛けて、日本はDRAM事業やロジック半導体事業で撤退が相次いだ。その頃、紙面には何と書かれていたか知っているだろうか?日本の強みは、システムLSIだと書かれていたのだ。システムLSIというのはいわゆるASICやFPGAと呼ばれるアプリケーション半導体のことである。実際に、当時はテレビやレコーダーなどの半導体で日本陣営は圧倒的なシェアを持っていた。

しかし、それらの事業は日本の家電が落ち込み始める中で、徐々に下押し圧力へと転換した。そして、産業革新機構(INCJ)が支援したエルピーダが結果的に、台湾勢と組むことせずに、マイクロンに身売りしたことで、終わりが現実へと転じた。もっと言えば、INCJはルネサスの半導体事業も事実上再建には失敗させており、同社が持っていた自社製造のラインは段階的縮小を続けていた。

INCJは基本的に日本の優秀な技術を持つ企業を、官系のアホ共が金だけ一時的にジャブジャブ流し込んで、大量生産でもすれば復活するさぐらいの勢いを出して、結果的に需要予測が外れて弱るを繰り返し、多くの会社を外資に身売りさせたり技術者を海外に移転させた戦犯となった。

現在は投資機構に名を変えたがイメージが悪くなったことだけではなく、潰れそうな会社の支援が革新なのかという非難が出たこともあり、この官民ファンドでの企業再生は殆ど行われなくなった。

これを金融敗戦のように捉えている人がいることが凄いなと思う。
日本のもっとも問題な点は、金融じゃなく、事業を分社して強くなるという頭が日本企業にないこと。それを支えるつもりが政府にも社会にもないことである。もうこの事業は潰れても仕方がないと考えている人も多いのだ。結果、それが必要になった時に深刻な事態になる。そこで、金を積んで事業を呼び込んだとしても、そのあとに何が来るかというと、今度はだぶつきが起きる。何故って、その事業の不足によって商品が足りないのは日本だけではないからだ。だから、各国投資を同時期に行う。


そして、稼働するのも同じ時期になる。その時、その瞬間だけの気分で投資した国が勝てるかというと勝てるはずもない。ソニーとTSMC、デンソーは元々政府案件ではないので大丈夫なのかもしれないが、それにしゃしゃり出て税金を入れるとか、よく国民も許しているなと本気で思う。本当に半導体の未来を日本が勝ち取りたいなら、やらねればならないのは、国内で小さなファブでもよいから、産学官で育て直す育成からであり、そのために海外から有力なアーキテクトマネージャーやファウンドリーの運営や投資に詳しい人材などを今一度日本に引っ張り込むことだ。

即ち、日本は中身がないのだ。いや、中身がないは言いすぎかもしれない。一応、半導体製造装置や化学材料の一部は日本で生産されているものがまだ多いからだ。しかし、肝心の半導体そのものを作るための先端技術者は既に日本に殆どいないのである。それをこれからもう一度育て直すために、大きくなくてもよいからFab(foundry)をベンチャーで操業し、そこに知的な人材を呼び込むことがまず第一義なのだ。

そこから始めて、~20年経てばもしかすると、先端に戻っているかも知れない。そのぐらいの息の長い話である。
そういう点で、空洞化しており、中身がないのだ。それを政治家も知らないし、新聞記者も知らない。国民などTSMCとソニーに金さえ出せば戻ると思っている輩までいる。


<そもそもシリコンの時代もいつまで続くか……>

ついでに言えば、シリコンロジックの半導体がこれからも先端を目指し続けられるかは微妙だ。Intelのノード進捗が同社のつまずきから停止したことで、プロセスノードがよく分からないルールで微細化するようになったが、Intelノードだとそもそも、TSMCですら7nm++(5nm)ぐらいのノードにある。これはIntelが狙っていた7nm EULVと同等である。今のIntelは10nmなのだが、これはArFLのTSMCやSamsung7~8nmと同等であり、Samsungに至っては、6nmもIntelの10nmに対してゲート長は劣っている可能性すらある。

では、何故数字が下がるのかというと、何でも良いから改良したら下げた方がイメージがよいと分かったからである。もっと言えば、もう微細化の先が短すぎて、厳密なゲート長で示すとコンマnmの差や回路パターン形成がどれだけ細かく揺れずに正確に描けたかという差や、回路や絶縁に使う材料の僅かな配合量の差で性能が変わるぐらい細かくなったからである。


半導体毎にそれを使い分ける中で、新しい技術を使うモノは、数字を減らすことにしたわけだ。この業界でリーダーだった厳格厨のIntelがトップにいなければ何とでも出来る。もし、Intelが予定通りのプロセスノード開発に成功していれば、今は既に4.xnm(TSMCノードで2nmから1.8nm)に達してこの先の微細化は難しいと宣言しただろう。微細化ではなく低リーク材料によるジッターの改善や積層で戦うという状況に。そうなることが分かっていたから日本勢もこの業界から離れたとも言える。

実際にはそうはならず、際どいところで止まって、小さな改良を繰り返すことになった。そして、コロナで不足が発生し、中台関係の都合で、半導体危機が発生することになった。


尚、半導体産業で本当に次の時代をリードする可能性があるのは、Photonic integrated circuit(光集積回路)である。これは、今世界で開発が進む量子コンピューティング技術や量子暗号技術と相性がよい技術であり、もし量子エンジンの開発が進めば、今のノイマンコンピュータの中に組み込まれ、演算を革新的な形で変えるだろうと推定されている。(置き換えるのではない)

本来なら、この辺りの研究をもっと進めた方が価値は高いだろう。即ち、日本人というか、日本という国はあれがヤバいこれがヤバいと、降って沸く問題にちょくちょくとつまみ食いをして、その先の見落としや社会がどこに向かうべきか、向かっているのかという視点で長く腰を据えた戦略を持たないのだ。それが、特に報道と政治において腐りきっており、国民を惑わしていると言える。

本気で半導体に掛けるなら、少なくとも10年は利益が出なくても良いから研究者を集めるぐらいの覚悟をして、ベンチャーを集めるべきだ。最初からデカいモノを求めてはダメなのだ。あの日の栄光は金を出しても帰っては来ないのだから。

逆にそれは無理で、これから何でも良いから成長したり、社会を支えるモノをというなら、半導体など捨てて、他の分野で圧倒的でもよい。別に特別な何かは要らない農業国になって自給自足だというならそれでもよい。

ただはっきりしているのは、最初に書いた通り、問題点をはぐらかし続ける報道や、社会であることが半導体がピンチとかそういうレベルではなく、全ての産業や国民から見た日本社会の未来に悪い影響を与え、多くの出来る人間が、日本から海外に高飛びして逃げて行く現実を作っているということである。日本に居る投資家ですら利益を上げるのに、日本投資ではなく海外の投資に移り始めている人も増え始めている。その理由が何か分かるだろうか?

日本は株価も上がらない金融市場も、かれこれ10年近くゼロ金利で変動なし、債権は日銀に買わせているから金利低い……そんな市場である。そこで人口は減り、国民も変化どころか無気力に近い。それを見ていれば、そこそこの投資に留めるのは当たり前と言うことだ。

国家には中身が必要だ。投資をするというなら、その先にどんな未来が待ち受けているか、どれほどそれが明るさを持っているのかを示す必要がある。しかし、この10年で行われたのは、三本の矢と言われた一本足の金融緩和から脱することも出来ない政治と、携帯料金の値下げと裏腹に、税金が上がる現実。国民ではなく、利権がある団体にばらまかれる税金という現実だ。株価は上がったというが、GPIFなどのファンドがどれほどそれを支えて居るか……。好景気の企業はそれを考えるとあまり株も伸びず、そうでもない企業は中途半端に高い。

これが当たり前のこの国では、半導体が云々の話ではなく、健全な社会の循環すらもう難しくなり始めていると考えてもおかしくはない。
まあ、コロナの影響があって今は他の国も同じようなモノだが、果たしてコロナ後にこの10年で進んだ硬直を戻せるかというと、困難だろう。今の政治状況とそれを伝える報道を見ているとそう感じる。


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