広島への原子爆弾投下から76年 …… 既に知る者は殆どおらず。知る者も当時子供だった人が多く記憶は薄れる。
1945年8月6日 午前8時15分から76年が過ぎた。原爆に関する平和教育などを受けた人は多いが、現実にそれを体験した人、被爆した人はもう殆どいない。既に被爆者は広島も9日の長崎でも殆どがあの世に旅立っており、経験を読んだり、映像や音声に残った被爆者の肉声を聞いて知るしか無くなろうとしている。
そして、薄れる被爆記憶の中で世界の不透明感は増していく。
今世界で起きている事は、気温上昇を除けば、20世紀と似た道を進んでいるともされる。リーマンショック、新型コロナによるロックダウンや自粛、そして、中国と欧米との覇権争い。温暖化と成熟によって物を作って売り冨を得て分配するという世界経済の未来も不透明になってきており、徐々に社会主義的思想や帝国、共産主義的思想が戻りつつある。いわゆる統率力ある救世主を求める社会だ。
きっと、この先もし政府が倒れるようなことがあれば、どの国もそういう方向に一気に向かう人と、逆に民主的な社会を求める人とで争いが起きる可能性は高いだろう。まだ、そうなっているわけではないので、まずはそうならないために、民主的プロセスをしっかり利用し、そして代表を選ぶチャンスを捨てないことが大事である。この国もどの国も……。
ちなみに、戦略核兵器として唯一実戦で使われた日本国の２つの原子爆弾は、今存在する抑止力としての核弾頭に比べると屁でも無い兵器である。現在実践用として作られている核兵器は、大半が数倍から数十倍、果ては数百倍の臨界連鎖を起こすように作られており、文字通り爆心地から数キロ～数十キロを全てを溶かすような兵器となった。しかもミサイル型の兵器となり、中にはバンカー型のものもあり、地下のシェルター施設を破壊できるものも今では容易に製造できる時代である。まあ、日本の今の政府のような政治家が主導者になると分からないが、政府がまともであればそれを持っていても、使う事はないと信じているが……
今は、広島や長崎の原爆と同等の破壊力を持つ兵器は、核で無くとも作ることが出来る。燃料気化爆弾を使えば気化燃料が広がった範囲を粉みじんに出来る。そして、それらは既に何度か戦争や紛争で使われてきた。核は後の後遺症（原爆症、放射線被曝、中性子による後天的遺伝子病、癌など）があるため、禁止されたが被爆地で生じたケロイドによる皮膚の垂れ下がりなどは、今や他の兵器でも出来る訳だ。
それだけ、人々は残忍な兵器、大量の人を殺すための兵器を開発し続けたことを意味している。まあ、武器を持って悪と戦うというのは、人々の幼い頃には誰しも憧れるものだ。男女問わずにそういうものに憧れを持つものである。これは、遺伝的に持っている弱肉強食-優秀な遺伝子を残す-という本能によるものだ。群選択とも種の保存とも言われる。遺伝的に優位性が高い物が繁栄し、残ることで、さらに優秀な遺伝子がつながり続けるということだ。
ここには、自分の敵となる生き物に対する憎しみ、争いの本能もある。
要は、闇と光ならどっちがヒーローやヒロインに思えるかということだ。人の場合は、光をヒーローやヒロインと思うケースが多い。これは、人にとって光がある場所の方が、視認できる範囲が広く、カラーで物を認識出来る分安全だからだ。しかし、これが夜行性の生き物から見れば逆である。暗い方が敵が少なく、寝静まった獲物を狩りやすいとしたら……。彼らの正義は闇にあり、光の時間に責めてくるものは敵である。これは、動物園などで飼育するなら別として、自然界では相容れない関係である。互いが狩り狩られる者同士なのだから。
人間も数が増えるにつれ人同士の関係における見方と敵が生まれた。それは、今の社会で言えば仕事の有無、自分がしている労働の内容、宗教観や社会観の違いによって生じる。我が一族こそが神だという王朝と、皆が理想的な社会を目指すための優れたリーダーを選ぶ民主主義は相容れない。
環境を守る仕事の人が、環境破壊をする仕事の人を嫌い、その逆でも嫌っているのも当然だ。互いにそれが仕事でありそれで生きているのだから。今は、それを互いに理解する力が弱まりつつある。
仕事が減ってしまったり、分配がうまく機能しなくなってきているからだ。それに、災害も増している。さらに、自分が望む情報だけを選ぶ社会になったのも影響している。そうすると、徐々に相手側がどう思っているかを鑑みる力を失い寛容さを失っていく。この先必ずどこかで人類同士のより大きな争いがあるだろうが、少なくとも今、私と同じ時間を生きて居る全ての人が亡くなるまででも、そういう争いから無縁であって欲しいと願う。
もちろん、その先も人と人が争わない平和な世であって欲しいが、今の我々がそれを実現できなければ次には繋がらないのだから。
