Tremont Micro-architectureがようやくPC市場に投入……Japer Lake発表。

CES2021でIntelが複数の新プロセッサー投入をアナウンスしたようだ。

1つは、Tiger Lake-H(35W-45W)と呼ばれる8C/16Tを目標とするプロセッサーで、Turbo Boost時は5GHzになる製品も投入する予定があるようだ。
尚、Tiger LakeはvProモデル(チップセットファミリーがQになるビジネス用製品群)の出荷も発表されたようだ。

2つ目は、Rocket Lake-S(Cypress Cove Micro-Architecture)の製品で、これもTurbo Boost時最大5GHzで動作する予定だ(但し、熱く効率は悪いと推定されている)。

それからIce Lake-SP(Xeon /Xeon Scalable Processor)の出荷準備についても、アナウンスがあった模様だ。


最後は、Tremont Micro-Architecture(元々は産業用で残るAtom系とモバイルで使われているIntel Core ”Lakefield”の低電力コア)のJaper LakeがまずはChromebook向けに出荷される見込みのようだ。生産量がどの程度あるのかは分からないが、多分Chromebookの普及が少ない日本では、夏頃以降に多く投入されるだろう。(Windows向けは1四半期遅れる見込みなので)
尚、Japer Lakeは開発名としては新しいように見えるが、中身はTremontなので、Lakefieldの小コアと同等の性能となる。即ち、第2世代Core iシリーズと同等のクロック性能がAVXレスで達成されている製品となる。

あの頃は、モバイルの4コアでもTDP25W~45Wとなり最大が3GHz前後だったが、今回の Pentium N6005はTDP 10Wで、2~3.3GHz稼働となる。グラフィックスコアもUHD Graphicsとなる。(但し、発表時点で世代ははっきりしていないようだXeかもしれないし、そうでないかもしれない)
どうもIPUオプション(Image Processor Unit)も基本的には標準搭載されているようで、タブレットなどでの動画撮影やリアルタイムエフェクト処理(AR/VR/動画ボケ撮影)において、CPU負荷を大きく喰らうことはないようだ。UHD Grapchisもあるので、エンコードやトランスコードもこれまで通りGPU支援でも出来るだろう。

<Jasper Lakeは期待の星>

である。まあ、性能重視のユーザーから見ればショボい製品なので、何故期待するのか分からないだろうが、Jasper Lakeではモバイルだけではなく、小型のデスクトップにも照準を合わせたインテルからの販売促進が行われる見込みだ。まあ、今でもSandy Bridgeおじさんがいるぐらいの世界である。CPUとして同等の性能があり、GPUやIPUとして以上の性能がある。さらに、電力消費は当時の数分の一以下まで下がり、小型化も出来る製品でかつプロセッサー単体のお値段も当時のCoreより安いPentiumやCeleronなら、上手く販売促進が行われるならば買替えの需要は高いと言える。

欠点があるとすれば、デスクトップ向けのDDRメモリーはサポートしないようなので組込ベースになることぐらいだろう。
そのため、後からメモリーを増設すると言った使い方には向かない。まあ、Sandyユーザーの多くは、Sandyでも十分使える訳だから、Jasperで足りないということは少ないと思う。

これとは別にJasperにはもう一つメリットが出てきている。それは、MediaTekのMT6771ぐらいの電力性能までこの製品が追いついてきたことにある。Cortex-A73/A53の組み合わせぐらいまでにはなっていることになる。本当は、これを昨年のLakefieldと同時期に出していれば、まだ競争力があったのだが……。その代わり、お値段はそこそこ下がるはずで、Windows向けのx64/x86製品としてはそこそこの性能を安価に供給できるラインになるはずだ。但し、海外ではという注が付くが……日本は最近この手の廉価品の価格が海外比較して明らかにレート以上に上がっているので、割高になり安くはないかもしれない。

10nmの生産数がもっと昨年伸びていて、今年7nmが出荷を開始できていれば、もう一段~2段上にも行けただろうが、結局、Intelの足を引っ張るのは製造プロセスノードである。



<RoketよりもTiger Lake-Hが本命かも!?>

Rocket Lake-Sは前評判がとにかく悪い。これは、既に噂されている電力モード消費が最大250W級と高いことが影響している。14nmの製造である以上仕方が無いが、コア数も減って、何とか今の第10世代製品群と同等か少し上回る性能を維持することを目指していることも分かっているため、前評判は最悪なのだ。いや、もう一つ理由がある。元々Rocketは昨年中に出荷されるのではないかとされていたのだが、それが遅れてしまったことで、この前評判が市場に浸透し、記事書きまでその記事を書く余裕を与えたのが影響していると思われる。

一方で、期待値が上がっているものもある。

高性能な製品でIntelに期待する人が待つのは、Tiger Lake-Hだろう。基本的にこのH製品群は、主にモバイルブランドの製品なのだが、ブーストで5GHzを目指す8CoreとなるとDTRノートだけではなく、一体型や省スペースデスクトップでも一部のPCメーカーが使う可能性は大いにある。アンロック版のHKなどが出れば特にそういう需要があるかもしれない。

元々Rocket Lakeではデスクトップ用のH投入が予定されていないのもあって、もしかするとここもTiger Lake-Hが埋める可能性は大いにある。後は、それぐらい余裕を持った生産量と歩留まりが確保出来るかどうかだろう。Alderの情報も少し出てきているようなので、ここでより多めに出せるぐらいになっていれば、良い傾向になるかもしれない。


<Alder Lakeは今年後半以降>

尚、Alder Lakeは今年後半以降の出荷が予定されているが、そのテストボードもお目見えしたようだ。
噂ではAlderの情報は既に大量に出回っているが、今年中に出荷出来るならAMDを再び追い越すことが出来るかも知れない。


<コプロセッサーに力を入れるIntelにとって開発の成果が見え始める年>

尚、Intelはこの2~3年ほどでコプロセッサー側に力を入れてきていた。
機械学習向けの技術や画像処理などのアクセラレーター(加速器)をCPUやGPUとは別に与える方向に向かってきたのだ。
これの鍵を握る最大の要素は、Tremont製品群のような省電力プラットフォームとCoreのような大規模プラットフォームの融合にある。それは、Lakefieldで始まったが、あれはあくまで繋いで見ただけの製品で、実際のところIntel自身期待通りとは思っていないだろう。

それでも、推し進めていくと同時に、大規模コアの一部機能の縮小を行い、その一部を別の形で他のコプロセッサや、GPUなどに移していくはずだ。
何故これに力を入れ始めたのかは一目瞭然だ。

製造プロセスノードで転けたことと、CPUのサイドチャンネル攻撃に対する脆弱性がダブルパンチで起きたことで、一つの汎用処理を複雑化させ高速化するという手法より、目的に分けて処理させた方が低電力で、安全で、高性能を追求できるとみたからだと思われる。

それが、今年から来年のAlder Lake以降の製品と、Ice Lake SPのAMXで実現し始めると思われる。既に、Tiger LakeもIPUオプションを提供するなど、これまでのCPUプラットフォームとは違って、スマホやタブレットが取り込んできた技術を遅ればせながら投入し始めている。これからは、その部分をさらに深く追求していくだろうと予想される。

一方で、今までCPUに持たせていた機能の選別も始まる可能性が高い。既に脆弱性が多量に見つかっているSGXは、最新のCoreではサポートしないものも出ている。この先、AVX-512Fもレガシー化(実際には動作はするが利用を推奨しない方向へと舵を切ること)し、VNNIなどのまだ加速効果がある部分に注力していくことになるかもしれない。

このIntelの方向がはっきり見え始めるのは、今年から来年に掛けてだろう。今年はそういう意味では、旧来のCPUを肥大化させ続ける開発思想が使われる最後の年になり、きっと今年の後半または来年からは、その先の数年や数十年に向けた技術に必要な技術が落とし込まれ始める年になる。それにもしも失敗すれば、Intelという半導体会社がさらに凋落していくのを見ることになるという可能性もある。


尚、これから先x86/x64が残り続けられるかは分からない。

いや、ArmのArm Architectureが成長して奪われるという話ではなく、Appleがやっているような施策をとれば、もうArmにも、Intelにもライセンスを求める必要はないからだ。MicrosoftもArmベースでの自社開発へと舵を切っているが、最後にArmを選ぶのかなどもう分からない。Intelでさえも、CPUだけに力を入れることはもうできないほど、半導体のノード技術の進化は既に止まり始めている。そうなると、その先の性能を目指すには今までのアーキテクチャ頼みの進化とは別のアクセラレータに求める事になる。

それ(ソフトウェア)にとって都合が良いアーキテクチャをOSメーカーが選ぶ形へと再び変わっていくだろう。これはある意味では、黎明期の専用コンピュータが広がった時代の姿に似ている。あの頃はソフトもハードも未熟な中で、特化された製品群で最適な製品を人々が選んでいた時代だった。それが、OSやシハードウェアの進化で汎用で誰でも使えるようになり、そして性能もソフトウェア、ハードウェアのどちらにおいても汎用的に双方好きなように進化した。その中で、進化が汎用でより速いものが選ばれたに過ぎない。

それが止まった今、再び目的というものを求めるようになる。
この目的ではまだ性能が足りないから、この部分だけの性能をもっと上げて欲しい。そういう用途に対して、どのプラットフォームがどれだけ早く要求を満たすのか?それは、OSやミドルウェアのようなソフトウェア技術も、そのアクセラレータを開発するハードウェアメーカーも下手をすれば一気に入れ替わる可能性がある新しい時代が始まっていることを意味している。今のところ勝者はアーキテクチャではArmに見えるが、もしかするとオープンかもしれないし、全く別物が生まれてOSの勝者もWindowsやMac/iOS、Android/Crhomeだけではない何かが出てくる可能性も確率は低いがないとは言えない。


むしろ、全く新しい方がGAFAやGAFAMによって支配されている市場を、もっと新しい企業が塗り替えていくはずなので、コロナ後の痛んだ世界の回復という点では、早期回復に繋がるかも知れない。







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