Xe GPUの性能初見! 第11世代Core搭載ノートをベンチマーク…… これで勝てねば貴様は無能だ。
PC Watchの記事である。
見せて貰おうか、Tiger Lakeとやらの性能をという重要な局面なのだが、今回のWatch記事はAMDの基準マシンがどう考えても可哀想な部類に該当される製品であった。TDP15W(10~25W)のRyzen 4700Uと、TDP28Wで稼働するCore i7-1185G7(TDP12~28W)を比較するのは流石に……。と思う。
そして、厳しいのはAMD側のプラットフォームが未だに最高スペックのLPDDR4-4266対応のQuad channel(Unified Memory Controller-Virtual Channel Supported、疑似2ch、Virtual Dual Channel)になっていない中で、最初からLPDDR4-4266をサポートしている辺りも世知辛い。
これは、AMDのモデルが比較的お安く高性能を売っているため、電力パフォーマンスなどで付加価値の高くお値段が上がりやすいLPDDR4を採用していないのが原因である。
とまあ、ちょっとばかり比較するにはアンフェアであるが、総じて見るとIntelのWillow Cove方がZen2より性能は良いと見るべきだろう。
一応対象におけるzen2モデルとの違いを表にしておく
CPU名 | Core i7-1185G7 | Ryzen 4700U |
開発名 | Tiger Lake-U | Renoir-U |
CPUアーキテクチャ | Willlow Cove | Zen2 |
コア数 | 4 | 8 |
スレッド | 8 | 8 |
CPUクロック周波数 最大クロック | 3.0GHz(TDP28W) 4.8GHz(TDP28W) | 2.0GHz 4.1GHz |
cTDP最小時クロック | 1.2GHz(TDP12W) | - |
L1命令キャッシュ コア辺り 総容量 | - 32KB(8-way) 128KB | - 64KB(8-way) 512KB |
L1データキャッシュ コア辺り 総容量 | - 48KB(12-way) 192KB | - 32KB(8-Way) 256KB |
L2キャッシュ | 5MB(5120KB) | 4MB(4096KB) |
L3共有キャッシュ | 12MB(12288KB) | 8MB(8192KB) |
ベクトル命令セット | AVX-512 | AVX-2 |
GPU | Iris Xe Graphics | RADEON Vega 7 Raden Graphics 448SP |
EUs or Core | 96EU | 87CU (7 Core) |
Shader Core | 768(gen11と同じなら) | 448 |
Texture units | -不明- | 48 |
GPU Clock | 400MHz-1350MHz | -1600MHz |
TDP | 12-28W(対象は28W) | 15W(10-25W) |
メモリー | LPDDR4-4266 x32×4のはず※ (本当にx2だと半分) 68.256GB/s | DDR4 3200 x64×2 - 51.2GB/s |
メモリー容量 | 16GB | 32GB |
SSD | NVMe 1TB | NVMe PCIe3.0x4 SSD 512GB (2100MB/s) |
バッテリー | 不明 | 52Whr 4,600mAh |
※LPDDRメモリは全ての製品で、帯域ビット幅がx16(16bit)が前提となり、高性能PCやスマホではバンクを2重化したx32(32bit)が使われる。1モジュールでの64bitバンクはない。ちなみに、AMDではLPDDRを使う場合、ホストコントローラーを二重化して4ch制御(Virtual Dual Channel Mode)出来る仕組みを持つ。Intelも同等の機能を使っているはずである。
上記とPC Watchの記事を読むと、CPU性能は概ねRyzenの方がリードすると思われる。但し、TDPの差やメモリー差を加味するとそれほど差は大きくはないように見える。シングルスレッドのCinebench R20が上回るのは、AVX-512のお陰でちょっと大きな差になっているのかもしれない。ちなみに、PC Markは元々Intelが強めに出る傾向がある。デスクトップRyzen 3000シリーズとComet Lakeを比べてもあまり差が出ない程度に。
そのため、Tiger Lakeがリードしやすいのは確かだが、それを加味してもコアとクロック辺りの性能は若干上になるぐらいの差があるだろう。これが、アプリのチューニングが行き届いているかどうかの差かもしれない。
GPUは文句なく、今はIris Xe Graphicsの方が強いだろう。これはもう間違いない。
AMDがもし、これに打ち勝つことが出来るとしたらZen3のCezanneになるだろう。来年の早い段階までに製品が出てくると思われる。
予定では、GCN5(Vega)のコア数かコア(CU)辺りのShaderを増やした7nm+改良版になるのではないかとされるが……。
これが出て、Iris Xeに勝てるかどうかで、再びモバイルでの攻守が転換するかも知れない。
尚、電力性能は、CPUコア数とTDPの関係性などを踏まえると、AMDの方がバランスが良い可能性が高いと思う。まあ、あくまで推測であり、デモ機であることも踏まえてなので、製品では違うかも知れない。
しかし、自らが率先して使ってきたTDPやSDPを亡き者にして、一番良い性能の製品を初期レビューに出すのだから……Intelはなかなかの策士に見える。AMDにとっては困る話だろう。ただ、それだけIntelも既になりふり構っていられないほど、AMDが追い詰め、Intelが自滅したといえる。Skylake時代が長すぎたのだ。そして、この後も、綱渡りが続く見込みだ。Tiger Lakeはいわゆる従来の拡張方針における最後の製品になると既に考えられているからだ。
この先は、Big.LITTLEの方向へと進む。そういう部分もあるから、TDPを捨てる方向に向かっているのかも知れない。
Big.LITTLEの次の世代は、デスクトップにおいてはパフォーマンスレンジでもう大規模サーバー並みの120WオーバーのTDP製品も登場してくる見込みだ。ここまで来ると、モバイルと同じように、1つの製品で、自分達の好きなTDPモードを選んで動かして貰った方が、売れる可能性もある。
そうすれば、Comet Lakeまでで歩留まりの影響から広げすぎて売れ残りが必死になってきているSkylake系のプロセッサーのような混沌とした状況も無くなるだろう。要は、売れ残り率が下がるのだ。
そして、先には策士と書いたが、もしかするとそれを狙わないといけないほど、10nmは14nmほど歩留まりが確保出来ていないのかもしれない。
コアの種類をなるべく減らして、売れないプロセッサーブランドを減らすことに注力したいということだ。それが結果的に今回のAMDとの比較が難しくなり事態に陥っているのかも知れないとも思える。
尚、当該の記事の筆者(笠原さん)も書かれているが、電力テストが出来ていないようだ。
個人的に最も気になるのは、28W-TDP(熱設計電力)のこの製品が、どういうバッテリー構成で何時間持つのかだ。正直ノートで重要なのは、性能もあるがバッテリーの持ちが悪くては意味がない。最近のIntel製品はTDPが低くても、実際の消費電力の最大値はそれより遥かに上にあることもしばしばある。そういう問題が無いかどうかが気になるところだ。これらも今後分かってくるだろうが、Intelが電力系のテストを許可していないのは、良い傾向なのか、悪いことなのか?
久々に、モバイルを全て新アーキテクチャで置き換えるのだから、良い方であってほしいものだ。
もし、それが悪いと、Zen3がでたらすぐに負けるだろう。これで、Intelの勝利と決まっている訳では無く、この後、遅くても来年の第1四半期までにAMDが後手として次を出すことも忘れてはいけない。まあ、IntelもTiger Lake-H(8コア版)を予定しており、デスクトップ代替の製品を求めるなら、本当の勝負は、今年じゃ無く来年頃が互いのぶつかり合いになるだろう。
ちなみに、デスクトップ向けのRocket Lake-SはZen3に勝てない可能性が今のことろは高い。Tiger Lake-Sが出てくれば別だが……。
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