UVで新型コロナウイルス死滅-研究結果発表した独企業の株価急騰…… SARS-CoV-2対応となれば何でも飛びつく世界。
ブルームバーグの記事である。
科学が好きな人から考えると、きっと面白い記事(ある意味ヘンテコな)だろう。
何というか、この内容だと普通<平時>は経済紙でも海外にまで広がる記事にはならない内容だ。
紫外線ライトで細胞やウィルスの多くが不活化出来ることは既に知られていた。そして、UV-AよりもB、それよりCが効果を発揮するであろう事も実は分かっていたことで、本来はこの程度の研究結果では記事にならないし、そもそもこれは中国や米国でも証明されているわけで、Cだと短時間で強い効果があるのは当たり前だったりする。まあ、商品として実用化(製品に応用可能ではあるが、すぐに出すとは書かれていないようだ)している訳でも無いし……きっと景気があまり良くないので、SARS-CoV-2に効果というだけで優良企業に見えて株高になっているのだろう。
紫外線には
波長の長いA(波長315-400nm以下)、
波長が中間のB(280-315nm)、
波長の短いC(100-280nm)がある。
ちなみに、長いほど細胞透過特性が高く穏やかに反応する、短いほど細胞透過性は低く作用が高い。僅かな時間でタンパク質を分解させる。
元々UV-Aは地表に大量に届く紫外線で、Bは夏場に多く届く、Cは冬でも夏でもほぼ地表には届かない紫外線である。何故、Cは届かないのかというと、これは地磁気で十分に抑制され、大気(酸素とオゾン)に吸収される光だからだ。ちなみに、オゾン層が無くても地表にはCが届くことは殆どない(全く波長成分がゼロとは言い切れないが、殆ど届かない)。
Bは夏場に増加する強い日焼けやシミの原因だがオゾン層があることで殆どが抑制されている。Aは冬でも天候が悪くても、ある程度屋外にいれば届く紫外線である。
ちなみに、UV-Cは、出力にもよるがUV-Cカットフィルターでも使わない限り、光源を目でみる事は出来ないし、皮膚に数秒触れるだけでも赤くなったり、火傷でただれるほど不味い光線とされる。目で見れば一瞬でも視力の低下や失明する恐れがあるほど恐ろしい光だ。先に書いたように、UV-Cはタンパク質等を変質分解させる力が極めて強いため、特別な殻でも持つ生き物でも無い限り、地球上の生命体やウィルスは、UV-Cを受ければ不活化(死滅)するのが常識である。だから、知っている人から見れば別にこれは特殊な話ではない。
しかし、この記事では知らない投資家が多くいたのか、それともデイで稼げると見たのか、これから売れると踏んで株価が上がっているのかもしれない……何かSARS-CoV-2対応と分かれば何でも上がる辺りがもうなりふり構っていられないほど世界が経済的に苦境に晒されているのだと分かる。
<使い途が限定されている紫外線商品>
そもそもUV-Cは人体等にも強烈な害があり、タンパク質を短時間で変質させるので、風味が重要な食品等には使ってはいけない。
手洗い代わりなんて使い方はまず不可能だ。
さらに、ポリカーボネートやPPプラ系素材(屋外紫外線対策が施されている品を除く)でも、紫外線の全波長域で照射量(出力)によっては変色したり変形したりすることがある。短時間で劣化するような強力な光を使わないだろうが、繰り返し使うには向かないだろう。
ゴム素材も劣化が進む(あれが時間が経つと弾性失いボロボロになるのは水分の蒸発と紫外線の影響がある)。
これらは、光学メディア(Blu-ray Disc)が405nm±5の波長までに抑えている理由でもある。そのため、使える対象が限定されるという欠点があり、主に金属やガラスなどで使うことが出来るが、残念な事に、今の時代金属やガラスの製品よりプラの方が多いので、実は安全な使い途が少ない。
本やノートなどでも出力が弱ければ分からないだろうが、実はこれらも出力と紙質によるが紫外線で劣化する。また、これらは開いたページの内側のウィルスを除去できない。
医療や衛生ではそもそも紫外線を照射する衛生装置や乾燥装置はあり、それらは時間が多少掛かるが劣化防止措置や劣化の期間保証をした指定機材の洗浄などに使う。この市場は既に、ある程度決まったメーカーが市場を持っており、シェアを他から奪い取るのは難しい。短時間での消毒を売りにするということだろうが、それが買替えなどの需要に繋がるのかはある種掛けだろう。
だから、ある種面白い話なのだ。飛びついている人は、きっとこれまでこういう医療や衛生、科学といったものにあまり興味が無かった人なのか、デイトレーダーで乱高下を見越して買いを掛けたのかといったところだろう。
世界で記事になったので、商品の方にも注目は向かう可能性はある一方で、こういう商品を欲する人は、紫外線装置を使っていたり欠点を知っている人が多いので……果たしてという点もある。投資家がそうであるように、こういう衛生用の紫外線クリーン装置を無知のまま望む消費者や企業が沢山いれば良いのだが、一部なのか全部なのか、投資家が思ったように伸びるのか、注目といえる。
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