ロシュ開発の新型コロナ抗体検査、米FDAの緊急使用許可を取得 …… ものすごい勢いで承認されるSARS-CoV-2関連製品。

ブルームバーグの記事である。F. Hoffmann-La Roche AGが開発したSARS-CoV-2 抗体検出試薬がFDAの緊急承認を受けたという記事である。
これとは別のある記事ではほぼ100%と書かれていたが……。まあ、そうだろうなとは思うが……これはあくまで緊急承認なので真に正確なのかと判断するには、時間が足りていないのは間違いない。あくまで、今回の目安として必要だから承認されたのだろう。一応そこを説明しておく。


尚、製品の仕様は以下の通りである。興味がある方は読むと良いだろう。(英語です)

仕組みは、同社の分析機材と試薬を利用して、抗体があるのかどうかを検出する。Cut off Indexの閾値は1.0で、同社のrRT-PCR検査を行った患者の血液を元に、この試薬を開発したということのようだ。詳細はPDFファイルにあるが、抗原を元にした免疫複合体を作り、そこから電子処理にかけて測定することで、抗体が適量あるかどうかを調べるようだ。

この検査による測定方法の試験は、どうも同社のrRT-PCR検査を行った被験者の血液で試験を何度か行って、完治した患者と感染していない(歴のない)ランダムサンプルなどを元に抗体検査として承認されたようだ。

この短期間でここまで製品化出来るのだから凄い。問題は、この抗原反応が本当にSARS-CoV-2特有で他の感染症では生じないものなのかだろう。これは、たぶんこの期間では正確には把握できていない(サンプル数や時間から考えると全網羅するにはまだ少ないだろう)と思われるので、今後、抗体検査で免疫があるとされた人が、どの程度のちに発症するかというのも大事な点になりそうだ。

もし、発症者が相当数出るなら、この検査では他の要素がまだ十分に除去できていない可能性がある。

そこのところが、WHOなどが懸念している点かも知れない。WHOが言いたいのはそこなんだろうが、残念な事にトップが、会見する度に火に油を注ぐので、この問題点はあまり扱われないのだろう。報道も言われた通りのことしか報道しない報道機関も増えており、気になったことを詳しく調べようというスタンスもないところも多い。嫌な時代だ。

まあ、それでも藁をも摑むほどに、世界がこの病気に対して、喫緊の指針を求めており、米国や他の国が社会生活再開の目安を求めているというのは分かる。そして、この検査が全く価値がないわけではなく、目安としてはある程度使えると思われるのは確かだ。いや、米国の場合は他の粗悪な抗体検査が出回り始めていることもあって、急いだ側面もあるだろう。下手なもので評価されるよりこっちの方が絶対に良いからだ。

ただ、抗体未取得なのに抗体があると判断されるケースは多少なりあるかもしれない。(その率が定かでない。ゼロで正確かも知れないし、逆にかなりあるかもしれない。)逆の抗体があるのにないという判定が出る可能性は、この感染症が広がっている今なら無さそうだ。先々は分からない。このSARS-CoV-2の免疫反応にはまだ分からない事が多くあるため、中長期の免疫動向や、他の感染症や持病で同じような抗体特性を示すケースがあるかないかを明確に判断するには、時間が足りていないだろう。(たぶん、もしそういう部分が分かればRoches側もすぐに対応するだろう。)

これが、緊急のトレードオフであるが、冷静にそこを見る人も減ってしまうのが、緊急時の危なっかしいところでもある。昔はそこも含めて説明する人(これを専門家という)がいたが、今はそういう人が不在だから、その参考値に含まれるかも知れない問題点を、読み取れずにミスをすることがあるのが玉に瑕だ。まあ、これを下が知らなくても、上でそれを見る人がそういう部分を含めて上手に対策を打ってくれるだけで良い。それだけのことだ。





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