新型肺炎の重症患者に抗ウイルス2剤が効果 …… オセルタミビルとロピナビル・リトナビル配合剤が効果!?
朝日新聞やブルームバーグ、AFPBBなどの記事だが、元々は海外で昨夜流れた記事だ。
患者は71歳の女性で、重症だったようだが、劇的に改善したそうだ。
ただ、まだ詳しい臨床・試験データは出ていないようなので、それ待ちというところになる。
副作用無く短時間で回復するなら良いことだ。ただ、インフルエンザでも抗ウィルス薬を使って短時間回復を行うと、耐性ウィルスが発現しやすくなることが知られており、下気道に感染するこのウィルスは、どこから検体を採取するかで、検出しにくくなることも有り得る。最低でも14日の発症潜伏がある病気なので、予後検査を何度か行った方が良いと思われるが、そういう点まで行われているのかは気になるところだ。
<日本でもこの手の治療は出来るのか?日本ではやらなかったのか?>
ちなみに、日本では何故このテストをしないのかというと、まず重症患者が日本にはいないというのが大きいだろう。重度の呼吸器症を発症していないなら、薬剤投薬をする必要は無く、治るからだ。副作用などを考えた場合、それで治るなら治るに越したことはない。日本の場合は、それだけ医療機関が多くあることも幸いしている。
もう一つは、日本の医療制度として治験をするには、申請が必要で通るまでに相応の時間が掛かることも多いことが挙げられる。元々の目的とは違う薬を使うにしても、簡単には処方して使えない薬もある。オセルタミビル(タミフルなど)は、インフルエンザ予防として投与する事はできなくは無いが(予防薬としての投薬は出来るはずなので)、HIVの薬をHIVではない患者に投薬できるかというと……そのあたりは、どうだろう?
<AIDS/HIV-1治療の薬を使うってことはHIVのようなウィルスに変異したの?>
ちなみに、HIVの薬が効いたからといって、HIVのウィルス成分が2019-nCoVに含まれている訳では無いので、間違えないで欲しい。一部にそういう発言をしている人がいるが、それは陰謀論などを信じている人の誤りだ。尚、世界で分離されているCoVウィルスの株情報は以下でも公開されている。(一部サービスは関係者専用である)
そもそも、ロピナビルやリトナビルというのはProtease inhibitor(プロテアーゼ阻害剤)と呼ばれるものだ。リトナビルとロピナビルは1つの薬に2種類が含まれた物(配合剤)を使っているので、1つの薬となる。
プロテアーゼとはタンパク質分解を行う酵素の一種だ。これを使って、当該のウィルスなどが細胞に入り込み増えるのだが、それが作られるのを防ぐのが、阻害剤である。阻害されると、ウィルスは細胞に入ってその機能を利用した分裂は出来ないため、体内で増えることが出来ない。そうやって、ウィルスの数を減らし減らしていくという訳だ。
このプロテアーゼ阻害剤は他の病気にも効果があることが近年わかり始めており、実は癌治療や、肝炎(主にC型)、一部の寄生虫感染症などにも効果があるとして治験などが行われている。ただ、副作用などの関係もあるので、有効性のある利用方法などが十分に確立されないと、誰でも使える薬にはならないという点がある。
<オセルタミビルを使うのはインフルエンザっぽいから?>
これも、上記と同じだ。neuraminidase inhibitor(ノイラミニラーゼ阻害剤)がこのオセルタミビルの本当の役割であり薬の意味を持つ名称だ。
これも、酵素の一種であり、ウィルスが増殖するために細胞に取り憑き分離する際に使うのだが、それを阻害することでウィルスが細胞に入って増殖するのを抑えるものである。
<2種類の薬を使うということ>
この2種類の薬を使うと言うことは即ち、この2つの阻害剤がなければ効果はないということだ。そして、2つを使うから強い効果がでるようなウィルスの増殖パターンを持っているということだ。これは、他のcoronavirusにも有用な可能性があるが、そもそもcoronavirusはSARSやMERSなどの重症化しやすいものを除けば、一般の人には殆ど脅威ではない。よほど、免疫が落ちていたり、他の病気の合併症を発症しない限りは、ただの風邪だ。
だから、これらを試す理由も無かったわけで、今回の大きな流行をもって試されたという訳だ。
<後は副作用との関係と効果がどこまであるのかの確認>
今後重要なのは、副作用の出現率などと、残滓がどれほど残るのかだろう。回復が早くても、無症状でウィルスが体内に残ると感染をむしろ拡大させることも有り得るからだ。だから、緊急対策としてはこれで十分だが、一般的な治療として使うには、今後の効果確認が必須となっていく。緊急用ならすぐにでも使われるだろうが、いわゆる重篤ではない患者の治療に使うには、まだ数ヶ月の臨床期間が必要かも知れないが、今回の中国国内での広がりによって、これらが必要であることが明確になったのは間違いない。
何故なら、2度3度あることは4度目があると見ることが出来るからだ。たぶん、このCoV感染症のピークが過ぎても、薬の開発は続くと思われる。
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