もう不要ならWindows 7をオープンソース化しろ! …… って、まず、スピンアウトならともかく、オープンソースはちょっとね。

窓の杜の記事である。フリーソフトウェア財団が7のオープンソース化を求めていると言う記事だ。まあ、分からないでもないが、7だけを切り離すのは無理だろう。そもそも、7の技術は6.xであり、8系とも同じベースである。


<もしやるならWindows 10を含めてソースコード公開するもの……キャンペーンかな?>

もしも、Windowsをオープンソース化するなら、Windows 10も含めて開示するしかない。Windowsは更新されていく中で、機能を追加してきたからだ。Windows 7でさえも、10で利用されている技術が使われているし、10もまたWindows 7で利用する技術が備わっている。Windows 7のライセンスサポートが終わった部分だけを公開したからと言って、Windows 7で使っていたアプリケーションが動く環境を構築できる訳では無いということである。

.Net Frameworkなど使えなくなる機能も多々出てくるだろうし、Internet Explorer 12はWindows 10でも8.1でも使われるので、7のサポートがキレたからと提供する訳にはいかない。ドライバーコンポーネントの一部もOSパッケージからは切り離すことになるだろう。そうやって、Windows 10や8.1で使われている機能を外していくと、きっとオープンソースにして公開しても、元々のWindows 7と同じ動きや操作性は維持できないだろう。

きっと求めている団体もそんなことは100も承知であくまで、こういったキャンペーンをすることで、知名度を上げて、財団としての資金を集めているのだろう。


<現実問題としてオープンソース化は出来るのか?>

という話になると、Windows 10も含めて全てやるなら出来ない事はないだろう。実際に、マ社もOS事業におけるメリットが徐々に削がれていけば売却や、分社(可能性が高いのはこれだろう)、オープンソース化を検討する可能性はあるが、個人的にはWindowのオープンソース化はすべきではないと思っている。たぶん、商用OSとしての完成度を考えた場合、Windowsをオープンソース化すると、Windowsの良い部分は崩れることになるだろう。

何故かというと、Windowsは唯一無二の商用OSだからこそ利用者が増え、信頼を勝ち取ってきたからだ。オープンソースにすると言うことは、AndroidやLinuxのようになるということであり、メーカーによって仕様が大きく変わる可能性も出てくる。ドライバーの管理などもマイクロソフトだから、Windows Updateなどで供給できるが、オープンソースになれば、そのサーバーは維持管理出来ないはずだ。Windowsの強みが失われる可能性は高い。

だから、もしやるとしたらマイクロソフトからのスピンアウト(OS事業の分社化)だろう。
消費者にとってはオープンソースをすぐにやってもメリットは殆どない。退化するだけであると考える。


ただ、Windows 7を使い続けたい人には、これは魅力的だ。結局、OSのサポートや保守にどれほどの金が掛かって居るのかとか、どれほどサーバーの準備が必要かという労力を見ないからこそ言えることだ。


<美味しい餌>

財団は全くオープンソースになれば、ラッキーとは思っているかというと、どうだろうか?思っている人もいるかもしれないが、コストロスを分かっている人は、思っていないだろう。むしろ、困ることであり、出来ないからこそこの請願を求めた可能性が高い。

まあ、PCなど買い換える頻度が減っている時代に、Windows 7が良かったというのは分からないでもない。私は、既に10に慣れているが、年齢を重ねるほど慣れるのは難しくなり保守的になっていくのは当然であり、新しいものにせざる終えないのは分かっていても、覚えるのが結構辛いと思うようになる物だ。

だから、そういう人を狙えば賛同者は得られるし、プログラマーの一部も喜ぶだろう。

しかし、コストロスをちゃんと考えてこういう請願をしているのかは、見極めておかないと、じゃあ「やっちゃる」とマイクロソフト社が本当にいって、例えば7や10の技術を公開し、もう「やーめた」「いちぬけた!」と言われたら、一番困るのはその一部の人の請願のせいで、捨てられる大半の消費者だろう。
そして、その目は必ず請願者に向くはずだ。マ社並みに出来るんだよな?と……。

そうはならないから、言えることだが、実はこういうもうやーめたというのは、実際に近年主に政治関連で増えている。そして、後で代償を皆が払わされることも多い。世界の大手の企業はこういうことまでしないが、美味しい餌に乗るのは気を付けた方が良いという例かもしれない。


世の中、仕組みが複雑なだけにその団体や企業が狙っている利益が何なのかも分からず、難しい。
また、それを個人の利益として見るか、国際社会で見たときに本当に利益なるかという損得の幅をどう捉えるかとか、明日利益が出るか、10年後利益が出るかという期間によって判断が変わっていくことでも、難しさがある。

こういう記事を見て思うことは、こんな現実的ではないような狭い範囲の話でも、本気で考えるとその団体の狙いと、社会の人(それに賛同した人)の狙いが実は微妙に違うかも知れないという複雑さを見せてくれるということだ。簡単に見えて、実は結構深い話かもしれない。

ちなみに、Windows 7がもしもオープンソース化されても、ちゃんと人並みの保守を求めるなら、10を素直に買った方がよいだろう。オープンソース化すると、少なくともWindows Updateを管理するのは無理だろう。サーバーの管理費を手に入れるのが難しい。

この記事へのコメント

はっく
2020年01月29日 22:37
Windows 4より前の Win16のソース全公開とかやってくれないかなー……。
それでも単純にびっくりするし、仮想環境に乗せるとかやっても面白いよね。

この記事へのトラックバック