トヨタのコネクティッド・シティ(Connectied City)、Woven Cityが東富士工場跡地に誕生予定……2021年着工。~災害の多い日本でスマートシティは成功するか~

Car Watchや日経新聞社の記事である。近未来都市の開発をトヨタグループが大規模に行うというものだ。


自動車産業界は電動化が進む中で既存技術を持つ大手メーカーの優位性が徐々に削がれリセットの脅威にさらされている。そんな中で、都市開発や住宅建設というのはいわゆる家電事業などを行う事業社などが相次いで参入しているフロンティアの一つである。まあ、一体的に開発すれば、保守と管理でまるでサブスクリプション(定額料金制)のように一定の収入を生み出せる、賃貸なら特にそこで稼げるものは大きくなるそれを狙う訳だ。

トヨタグループにはトヨタホームとその子会社のミサワホームがあり、住宅事業にも精力的に取り組んできた。パナホーム(Panasonic Homes)を持つPanasonicのような感じだが、トヨタの方が参入は遅いが、Panasonicとの大きな違いは、自動車会社が親であるため、電化住宅においてEVやPHEVのバッテリーとの相互補完がやりやすいという点だろう。まあ、オール電化住宅で且つ光熱費ゼロを目指した住宅の場合は、別に蓄電用バッテリーを宅内に備えるのが普通なので、目指しているのはそれより先で完全な電子住宅(スマートホーム)になる。しかも、グループで自社の工場跡地となった土地に作るのだから大規模開発となる。

尚、東富士工場は関連子会社の事業所も含めて、宮城と岩手に拠点を移すことが決定したのが、2018年~2019年のことである。
ここには、研究拠点や運転試験場もあるため、かなり広大な敷地である。これらが、全てトヨタグループと連携する関連企業の力で、一つの都市へと変わるという訳だ。



<富士山に問題がなければ良い場所>

自動車工場として見ると、関東に出荷するだけならよいのだろうが、海外や他の地域(圏域外)への輸送コストが嵩みやすい場所と言える。
これは、付近に大型空港や港湾施設がなく必ず長距離トラック輸送が必須になるからだ。部材の搬入や土地などの資産税も含めてコストが嵩みやすく、それを補えるほど最新化し規模をさらに大きくして製造できる見込みや国内で売れる見込みもここではないと考えられるため、ここからは離れることにしたのだろうと思われる。

ちなみに、ここが敵地として選ばれたのは、元々鉄道輸送が出来る場所だったからである。今ではカートレイン自体が日本では駆逐されたが、昔は完成車の輸送にも使われた。また、製造物資も構内引き込み線を用いて大手企業の敷地内まで鉄道貨物が輸送されていた。そのため、この場所は敵地だったわけだ。

日産が昔、設備も古くなっていた村山工場(現在のイオンモールむさし村山)を撤退させたのも鉄道網を除けば似たような理由だが、これをやったのは今話題の海外に逃亡したゴーン氏である。



閑話休題。
この工場跡地は、土砂災害警戒区域や、一級河川(国土交通省が管理する危険河川)である黄瀬川の最大浸水想定域に掛かっていないこともあり、都市を開発するには良い場所だ。まあ、富士山が噴火するとどうなるかは分からないが、それを言い出せばキリが無いので、それは別として考えると、内陸であることもプラス要因だろう。
内陸なので、台風などの潮風や強い海風の影響も受けにくく、住宅地や商業地としては、住む人が集まるなら好立地になり得る。トヨタグループが総力を挙げて、最先端のスマートシティを作り上げるなら土地の広さから考えても、魅力的だと思う若者は多いかも知れない。

一方で懸念もあるにはある。それは、交通アクセスとして高速道路が近いものの、鉄道は御殿場線の岩波駅のみとなる点だろう。
たぶんだからこそ、自動運転車などの採用試験に適していると見ているのだろうと予想される。即ち、トヨタのスマートシティプロジェクトとしては最適な場所になるわけだ。後は、スマートシティに参画する企業がどういう企業体になるのか?例えば、Appleと組むのか、Microsoftと組むのか、はたまたGoogleか、トヨタが中心にやるのか?まさかソフトバンクか?(トヨタと提携はしているが……)、スマートホーム関連に積極的だが、このところ移り気傾向がある元々関連会社だったKDDIか、日本の雄である鉄板のNTTか?

この辺りが重要になってくるだろう。まあ、子供なら出来ることが楽しい話だが、大人になるとそうはいかない。日本は少子高齢化を克服できる見込みも今のところ無いので、開発がもしもチープな業者や、技術的に劣るとか、将来的な資本体力が曖昧だとか、セキュリティで突破されかねないメーカーに託せば、ゴーストタウンに近い街が出来る可能性だって今の日本なら十分にある。

<本命は自動車と住宅と社会の融合>

尚、トヨタの本命は自動車だ。たぶん同社が最もやりたいのは、スマートハウスの電力需給を自動車と連動させること。自動車の中の情報と自宅内や屋外(スマホ)で扱っている情報を一体化(MaaS、パーソナルモビリティ)させることだろう。また、車両のカメラも含めた監視ソリューションなども、関連事業社とセットになり、開発していくかも知れない。

高速道路のインターチェンジ側(そば)に都市が出来るのは、先に述べたようにトヨタにとっては自動車会社としての立場を示すにもプラスだ。場合によっては、自動運転による高速バスなども将来的に可能になれば、輸送・交通の問題も解決するかも知れないからだ。また、災害等による停電にもスマートシティは強くなり得る。自動車が電動化されているなら、自宅内のUPS電源(スマートホーム蓄電池)が枯渇しても、車両の電源がUPS代わりになる。最悪、PHEVならガソリンを車両に補給すれば車を発電機としても使える。

水害で水に沈むことがないなら、災害が多い日本ではある種打ってつけの商品説明になるとも言える。

このスマートシティーを作り上げることが出来れば、トヨタの都市をモデルケースにして他の地域でも、それを求める声は出てくるだろう。車が自動化されれば、場合によっては車の中でも住宅と差して変わらないことが出来るようになるかもしれない。車の中でコーヒーを飲みながらタブレットでニュースを見て、テレビを見て、職場まで行くなんてことも十分有り得ることだ。駐車場に止めるとお金が掛かるので、車はそのまま自宅の車庫に帰り、夕方再び指定した時間に迎えに来るとかやってくれると、車を運転できない人でも車は魅力的になるだろう。

もしかすると、その都市内限定ならそういうことも可能になるかもしれない(映像にはそれっぽいものもあった)。それが、Woven Cityの目標であるなら個人に限らず、自治体の職員や政治家、ビジネスマンなど誰もが興味を持つことになるだろう。

まあ、イメージ通りの現実を実現するのはなかなか難しいもので、夢は必ずしも現実と同じにはならないが、大阪万博よりもこちらの方が凄いと言われるぐらいになると大成功。イメージ図の内容の半分以上を達成し、入居する人々が納得出来る巣順なら成功になるだろう。


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