京急事故等に思う……ネットで犯人捜しはいけないけれど、報道も悪者を決めつけてませんか?
日経ニュースを見た後に、ニュースのザッピングを朝行うのだが、今日は京急ネタが多かった。まあ、あまりに同じような話題が多いと、すぐにテレビから離れる生活になってしまったので、これも長くは見ていない。
今日は、きっと京急デーになるのだろう。いや、暫くそうなるかもしれない。ほぼ見ていないが番組表や一部の人の話を聞いて見て、哀れに思った韓国問題も、そろそろ飽きられていたはずなので、これはとても美味しい蜜である。
ただ、昨夜のNHKの報道や、今朝、軽く見た民放を見る限り……この事故報道もまた長く持たないだろう。
新聞社の記事は比較的まともで産経新聞社はトラックの運行会社の方の捜査をすることも発表しているが、本当に重点報道すべきはそちらだろう。まあ、トラック運転手が亡くなられているので、放送するのに躊躇しているのかも知れないが、それこそ京都の放火事件で事件の真相がといったマスコミが批判されるようなことになったのは、テレビが変な報道をするからである。それに気がつけない状況が続いているから、人々はウンザリしているのだ。
<事件の概要>
事件の真相はある程度分かってきている。亡くなったトラック運転手は朝4時頃からの勤務だったようだ。
大型のトラック(13トン車)を運転して荷物を引き取り、目的地に向かう予定だったのだろう。
たぶん近道でもしようとしたか、または朝早いことを考えると途中でどこかによって、食事や何か用事を済ませた後で、誤って京急沿線の狭い道に迷い込んでしまったのだろうと考えられているが、既に本人は事故で亡くなられているのでここは推測しか出来ない。
まあとにかく、狭い道に何かのはずみ(間違い9または目的で入ったか、これが近道になると勘違いして選んだのだと思われる。
しかし、それが間違いだったことに気付き広い幹線に再び抜け出そうとした、踏切側ではない幹線道を目指したが、数分~数十分かけても曲がりきれず……標識にぶつけてしまったのだろう。
そして、何度か切り返して、最終的に幹線ではなく踏切を渡る決断をした。大型な車両ほど内輪差があるため、曲がる方向とは反対にすこし膨らせて曲がらないと、脱輪や巻き込みが起きる。そのため、当初と反対の方角に舵を切れば今なら行けると判断したのだろう。
しかし、それが徒となったようだ。ちょうど踏切に入りかけたその時踏切の遮断機が下りた……。
尚、当該のトラックが脱輪していたとか、そういう話が当初はあったが、今はそういう話が出て来ないので、まだ調査中か、脱輪はしていなかった可能性もある。遮断機が降りたことで、パニックになって前に進むのを止めてしまった可能性の方が高いのかも知れない。本当は、そういう部分をもっとしっかり調べる時間が昨夜から今朝にかけてあったはずだが……今のメディアは本当に全くの機能不全である。どうでもよい専門家の情報ばかり出して、実際に運転手がどうして直進して抜け出さなかったのか(十数秒時間があったとされる)などは、はっきりしない。
まあ、まごまごしている間に列車はぶつかった。
事故の激しさは映像などを見れば分かるが、この事故での死亡者はトラック運転者だけだったのは、鉄道車両の大きさも影響しているだろう。
京急は新幹線と同じ標準軌レールを利用しているはずだ。車両も横幅がJRなどの在来線より広い新幹線型のレールを使っているのだ。車両速度が一般的な在来線より速いのは、このどっしりとした車幅にもある。一方で、それ故に、例え大型トラックでも横からぶつかられれば、命の保証はない。JRなどであれば、電車の方が損傷する可能性もあるが、この手の高速車両はむしろ前にあるものを弾き飛ばせるぐらいの丈夫さを持たせているからだ。そうしなければ、衝突して電車の方が倒れると多くの人が亡くなりかねない。
だから、高速で走行することが前提の車両はカーブなどで遠心力に振り回されないように主に車体下部に向かって重く筐体フレームも重力加速度や、走行時の線路異物に耐えられるよう丈夫に作られている。ちなみに、新幹線は丈夫さも確かにあるが、基本的に丈夫なのはフロントバンパーで、車体そのものはその速度性能の割に軽い。これは、新幹線に関してはミニ新幹線を除いて線路上に人やものが立ち入ることはない前提の高規格線路(高架などで踏切を原則設けない線路)だからである。こっちが同じ標準軌でも2倍~3倍高速に出来るのは、そこにある。
ちなみに、80km~120km/hで走行する鉄道の制動距離は約550~660mとされる。ブレーキをかけるまでの判断に50~60m、そこから緊急ブレーキをかけ始めて600mぐらいだ。今は、昔よりブレーキの性能も上がっているのでもう少し短くなっていると思うが、2000年前後だとそれぐらいだった。
自動車に比べて数倍距離が長いのは、自動車と違って車輪と線路の摩擦係数が低いからだ。車なら、タイヤの回転をロックすれば、路面の凹凸とタイヤのトレッドによる摩擦力によって、短い距離で止まることが出来るが、線路の場合はレールは鉄(金属)で、車輪も鉄(金属)である。それ故に、車輪をロックしても、よく滑るのだ。だから、すぐには止まれない。
だから、メディアはそれを報道しようとした。そして、それがいつのまにかヒートアップしてそれが鉄道会社のシステム不備のように伝えられる。それを見て、人々はこう思うはずだ。いやいや、悪いのは鉄道会社より、運転者の方だよねと……。
ちなみに、当該の車両にはカーナビやドライブレコーダーなどの装備はなかったことも上記の記事の一部に書かれている。
<電車の運転手がいつ気づいたかは大事だが……>
電車の運転手がいつ気が付いたのかは、衝突の状況と規模を確認するのに大事なことであり、今後の事故対策を練る上で大事な事だ。
だから、警察や鉄道会社は今その情報を確認しているはずだ。しかし、テレビ局は少なくともそういう視点で見ていないようだ。
どうも、ATSが警報遮断機と連動していなかったことが事故を大きくしていると伝えたいようだ。ただ、それはどうなんだろうか?
これから京急が安全なシステム、安全な運行、信頼される鉄道を目指す上で考えて行くことについては、誰もが期待することであり、もしかすると今回の事故で落胆した人もいるかもしれない。しかし、警察や検察が鉄道の運転士や、鉄道会社に落ち度があったとして捜査を開始しない限りは、メディアが極端にまくし立てる話ではない。遮断機が下りる最中に車が入って何分もなかったなら、鉄道会社で何とか出来たということはほぼないだろう。
まあ、列車自動停止装置(Automatic Train Stop/ATS)と遮断機侵入検知装置を連動させていたなら、ドライバーも助かっていたかも知れないが、それがないことが、法律上の違反だった訳でも無い。この部分は、これから民間の鉄道会社として彼らが、安全評価を高めて行く上で、行っていく課題であり、もしそれを指摘するなら、そういう部分も含めて批難的な発言ではなく、今後ATSを整備することが課題になるでしょうで済ませることである。
<専門家も専門の線が難しい>
例えば、昨日、この事故が速報で流れていた時間に、車が炎上したことに対して、何故燃えたのかが不可解という発言した人もいた。(1時頃に10分ぐらい某ワイドショーを他の作業をしながら、見る時間があった。)軽油は引火し難いから燃えるのが信じられないとか何とか……。知らないなら知らないでも良い。事故の専門家でもエンジンのことを知らない人は沢山いるからだ。しかし、こういう発言をせざる終えない状況になっているように見える。
一応説明しよう。大型トラックの多くはディーゼルで燃料がガソリンではなく軽油で動くだから、燃えないはずという話が出たのだ。
しかし、それはそもそも認識が間違っている。
エンジンを切っていないなら、エンジンの内燃機関が損傷すれば、火災は起きることがある。また、燃料パイプが損傷し、車と車両との摩擦火花などが直接振れれば軽油でも着火はする可能性はある。エンジン周りなら温度が高いからだ。電気系統の破損から発火することもある。ガソリンより遙かに引火しにくいだけで、着火は軽油の方が低い温度で起きるのだから。引火にしても今なら炎天下で熱したボンネットやダッシュボードの温度で軽油は引火点に達する。
ただ、揮発油としての特性がガソリンより弱いため、引火し難いそれだけのことだ。
どういう意味かというと、他のものから引火するにはガソリンより高い熱量がいるということを示す。ガソリンは-40度でも引火するが、-40度以下のガソリン温度なら火を近づけても引火しないぐらい危険なものである。
では、軽油はというと、50度以上ぐらいで火を近づけると引火可能になる。40度台なら引火しないが、このところの昼間の車のダッシュボードの温度ぐらいで火が付けられる程度の温度になる。
ガソリンに火を付けると、ちゃんと燃やすための仕組みを考えて作っていなければ、燃料タンクまで引火して爆発することがあるのは、この引火の温度にある。簡単に言えば、-40度でも燃えるというのは、酸素が遮蔽されていないなら、ガソリン自体が強力な導火線になるということだ。だから、燃料タンクの手前や中まで炎が到達する。そして、爆発する。常温どころか冬の寒い日でも引火するからだ。軽油や灯油は砂漠の昼間や、炎天下に放置した車の中などでなければ、例え酸素が十分でも燃料全体への引火はしない。
ちなみに着火というのは、火を近づけなくとも自然発火する温度である。軽油はガソリンより50度ほど低い250度前後とされる。まあ、天ぷら油などでも、鍋に入れてガスコンロや電気コンロの火を付けてずっと加熱すると火を直接近づけていなくとも、そのうち中の油に着火し燃えはじめる。これが、着火だ。油自体の温度が、着火点に達すると直接火を近づけなくても、物質が受け取った熱量だけで燃焼が始まり、燃え上がるのだ。
これらを自動車のエンジンに当てはめれば自ずと答えは出る。
エンジンがアイドリングまたはストップした直後の場合、エンジンが損傷すれば、燃焼室内の温度は数百度ある。しかも、アイドリング状態ならエンジンの破損が起きれば燃料パイプも破損することが多く、漏れた燃料に連続的引火や発火をもたらす。だから、車両から火が出る。これが、トラック同士、または自動車対トラックの自動車同士の事故で、トラック側には起きにくいのは、トラックが道路を走る自動車車両の中では最も丈夫だからだ。エンジンルームまで破損するリスクは低い。
しかし、それが鉄道などより丈夫で大きな力を持つ者相手なら、当然エンジンルーム等も破損する恐れがあり、燃えることもある。
だから、ワイドショー系の報道が増えていく今の日本のテレビ放送は信用度が下がる。なお、これは専門家に問題があるというわけではない。単純に専門家も専門家として語るには、何か専門家らしいものを出さないといけないのだ。その際に、あまり確認が出来ていない内容でも披露しなければいけないというプレッシャーがあるのだろうと思われる。特に、緊急番組などであるとそうなりやすい心理は働くだろう。無理に、そういう専門性の安売りをテレビも求めずに、ちゃんと後からでも、ドキュメントでながした方が視聴する人々によっては、長い目で見てプラスになる。
まあ、生出演させて、議論や討論する番組はもっと最小限に減らして、ちゃんとしっかりした品質を保たないと、いつか酷いミスリードをしてしまうという例だ。
<事故の原因と対策を一緒くたにしてはいけない>
まあ、とにかくこの件で、大事な事は事故原因を調べて犯人を捜査することと、今後取るべき対策を混同してはいけないということ、そして専門家らしい視点を無理に見せる必要はないということだ。
確かに、被害者から見ると、鉄道会社や事故を起こした相手などに、対応を求めることになるだろうが、それはそれとしてそういう話が、被害者から出てきたら別に伝えるべき事だ。早くから煽る話ではない。
火災にしても、原因は今後の捜査で分かるのだから、急ぐ必要もない。
事故の原因や要因として考えるのは、どういう制御をしていたかということと、止まれたか?車は遮断機が下りてから何故そこに立ち往生し続けたのか?の方に力を注ぐことが大事だ。脱輪していたのか、いなかったのか、逃げる時間は無かったのか?といった点を調べることだ。まあ、ここでは一晩で調べられたのではと書いたが、これはあくまで鉄道会社を叩くようなニュースを構成する時間があったなら、そっちの方が良かっただろうという話だ。
一方で、鉄道会社にこれから求めるのは、ATSと遮断機への侵入検知を繋ぐような対策だろう。これは、これから求めるものであって、これが無かったから事故が起きたのだという伝え方に聞こえてはいけない。これがある方が良かったのは確かだろうし、それを専門家が示したいのは分かるが、これが無かったことが、法に反するわけでもないなら、これはあくまでオプション(外付け、後付け、追加)の対策だ。
今後の捜査から運転士に問題があり、書類送検でもされるなら別だが、そうじゃないなら鉄道会社の落ち度のようにし向けてはいけない。
何より、もしこれを標準にすべきというなら、法律としてそれを定めましょうと社会に求めるのが本来示すべき筋道だ。(ちなみに、これには弊害があり、こういうシステムを組み込むことを義務化すると採算性がギリギリの地方ローカル鉄道は廃線が相次ぐ恐れがある。まあ、ローカルじゃなくてもJRの某2つのグループはさらに厳しくなることが予想される。)
こういう社会における段階(制度設計の手順)を踏まずに、ここが足りない、あそこが悪いと決めてしまっては、ダメだろう。
まあ、既に報道に期待していないが……この国の報道は誰かを悪者に仕立てることしか出来ないのだろうか?も
それをやっているから、苦情の電話が鳴り止まないとか、そういうのをしてしまう人が増えるのではないだろうか?
これは、事件としてみるのであれば、鉄道会社に問題があるとするならば、その証拠として警察や検察がそこにも調査を入れ、起訴または書類送検の準備を始めている報道をまずするべきだろう。
そういう情報がないなら、鉄道会社が出来たのはオプションの対策であり、彼らが悪いと証明されたものではない。そして、オプションがあったとしても、実は死亡事故にならなかったとは限らない。これは、自動車に衝突軽減ブレーキがあるから、死なない訳では無いと言うのと同じだ。それでも事故は起き、亡くなってしまうケースはある。悪いか良いかは捜査当局が調べ、起訴し司法が最終的に判断を下す。それを忘れて感情に走ってはいけない。
今回の場合は、鉄道の問題も指摘するなら、その道路に何故運転者は入ってしまったのか?何かのミスで迷い込んだとしたら、標識などに不備がないか?
そういう、助かるチャンスの全てを洗い出していくべきだろう。そうすれば、もしかしたらどこか一つでも対策がされることで、類似事故を減らすことは出来るかも知れない。
まあ、ネットで犯人捜しをして誤って別の人を犯人扱いしてしまうケースが以前ニュースになっていたが、テレビや新聞などで法に基づくルールとは別のオプショナルな部分を批判してしまうマスコミも実は、そういう人が生まれやすい環境を作っているような気もする。
個人的には、生番組でワイドショー的にここが問題という放送を急ぐあまり、それが本当に問題の本質なのかを考えずに扱っているように見えてならない。それなら、情報番組を一日中どこかのチャンネルでながすような体制を止めた方が良い。ドラマの再放送でもした方が、きっと人々ももう少し大らかに物事を考えられるようになるのでは無いだろうか?
この記事へのコメント