USB4.0仕様比較表……前回の続き
昨日、USB4.0が一般に正式発表された。即日仕様も公開されたと書かれた記事もあったが、
ここを読んでいた人は知っているだろうが、仕様書等のデータが公開されたのは、8月29日である。
たまたま、その日USB-IFを見ていたから私も気が付いたのだが、製品化開発のための仕様は、先に先行公開されることがあるということだろう。
いわゆる近所の人を集めた内覧会(プレオープン)みたいなものだ。
その少し早くから読めた仕様書を元に、過去に作った比較表に4.0を追加してみたのだが……この仕様を見ると一抹の不安がある。
尚、画像はPCでは2回クリックで拡大される。

まず、修正点がいくつかある。
1つは、Thunderboltの速度だが、USBの仕様書によると41.25Gbpsであることが分かったのでこれに修正している。これは、PCIeトンネル仕様であるため、PCIeのレーン速度と連動しているようだ。ちょうど5GB/sになる速度というわけだ。
それから、USBの標準電源仕様だが3.2の仕様を2,000mAhとしていたが、1,000mAhのままのようだ。2Laneだから2,000になっているわけではなくホスト辺りの標準供給は1,000mAhで2Lane供給できても、倍にはならないからだ。なぜ、倍にしなかったのかについては、4.0の話もあるので、後述する。
<たぶん解消されないUSBのカオス(混沌)状態>
さて、仕様を見て分かるのは、USB4.0はThunderbolt3.0のTBT互換モード(PCIe/DPトンネルモード)とUSB3.xモード、USB4.0モード、USB2.0モードの4つがあることが分かる。そして、備考欄の4に書いているが、これにUSB-PD3.0や2.0の仕様は内包されていない。
その上で注意しなければならないのは、確かに4.0ポートは全てThunderbolt互換になるはずなのだが、ハブを噛ませる場合でTBT互換のトンネルを使うには、ハブがトンネルリンクをサポートする必要があるようだ。それがない場合は、TBTトンネルリンクは使えない。即ち、USB4.0では使えるが、Thunderboltとしては機能しないのだ。そして、USBホストコントローラーの下にはたいていゲート用のハブ(ルートハブ)がある。まあ、製品が出てみないとわからないが、USB4.0ホストが製造され実装されれば、Thunderboltが使えないPCは無くなっていくだろう。
しかし、どのポートでもThunderboltのデバイスが使えるかというと……。あくまで、4.0ハブのトンネルはオプションのようなので……。
それから、PDの仕様を組み込んでいない点だが、これは、USB3.2などの仕様でも言えることだ。何故、PDを入れないのか?入れたら便利なのにと思うのが普通だが、そうは行かない理由が明確にある。この仕様は、ホストが提供する標準仕様であり、全てのホストが必ずその仕様を受け入れなければいけない。即ち、100Wの仕様を入れたらそのホストは、100Wの電源をぶら下がっているUSBルートハブに対して、必ず繋がないといけないのだ。
これの問題点は1つだ。今では最も使われているであろうスマートフォンというデバイスを考えると良い。
100Wの電源をホスト辺りとは言え義務化すると、使わない時には電源は供給されないが、一度デバイスを繋ぐと、そこまでの電力余力が必要になるわけで……。当然だが、バッテリー持続時間を大幅に減らしたり、ハードの許容量を超える電力を求められる恐れがあり、スマホにそのインターフェースは使えなくなる。
そのため、PDは別仕様のままにして、PD対応のポートは別立てのままにしたようだ。
そう即ち、ここまでを見るとUSB3.2までとそれほど大きな変わりがあるようには見えないかもしれない。
<メリットはこれ>
じゃあ、何が違うのかというと、USB4.0のホストには必ずTBT Compatibility(デイジーチェーンで6台のTBTデバイスが接続出来る。PCIe信号のトンネルモードとDPのトンネルモード)の技術が搭載されるため、これまで別立てだったTBTのホストが不要になるという製造側のメリット。(その代わりルートハブ等の対応が必要だから利用側が使えるかは、製造側の頑張り次第。たぶん殆どの製品が対応するだろうが、スマホなど一部では難しいと思われる)
後は、40Gbpsの転送モードをTBTではないUSB4.0(Enhanced Super Speed)の仕様として搭載したことにある。これは、デイジーチェーンではなく、USB3.2までと同じように使えると思われる(その代わりPCIeトンネルモードはなく、ホスト仲介が必須となるため遅延はあるだろう。)。この後者のモードで動くデバイスがどれほど増えるかが、USB4.0が普及するかどうかを決める鍵となりそうだ。
基本的にはこの2つが中心で、速度も、もう一般的な個人が使う速度としては、2,3デバイスを繋いで使い切れないほど高速なので……周辺機器が鬼のように出てくる事もなく、ホストだけが早くなってその新しいモードは使わない人も多いだろう。
だから、過度な期待を寄せるものではない。むしろ、一番大きいのは製造側のコストが下がることと、一応はこれでTBTとUSBに分離する流れはなくなったということだ。既にTBTを使っている人には互換性を気にすることがなくなる訳だ。それ以外は、これを求めたい人が期待した通りに行くか製造するメーカー次第になる。
既に、Tunderboltを使っている人は心配することはなく今後もそれを使えるだろうし、これからのPCでも使えるだろう。
一方、使っていない人がThunderbolt以上を期待して待つなら、それほど凄いものではなく、どちらかというと、製造するメーカーとして物理層を一体化してコストを下げることが目的だったという方が正しい認識である。あまりUSB4.0が出るのを待とうとか思う必要まである技術でも無い。
まあ、インパクトは確かにデカいが、大抵の人はUSB2.0のデバイス(プリンターなど)は大量に持っていても、3.0になるとUSBハードディスクやUSBフラッシュストレージなどの高速ストレージを除けば、殆どの人は持っていないはずだ。USB3.1 Gen2など利用できるハードも少なく、USB3.2なんて肝心のホストが登場していない。そう考えると、技術としてみると面白いが、何か今と大きく変わるかというと、そうでもないかもしれない。
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