韓国、難路続く燃料電池車対策 水素社会に高い壁……日本も同じ状況。

ロイターの記事である。低炭素社会を目指すと最終的にはhydrogen(水素)に至るとされていたが、未だFCVが究極のエコカーとして広がらないのは、効率が悪いからだ。水を電気分解するとか、空気から水素を作るとかそういう研究は進んでいるが、それならそのまま電気として貯留するか、電線を通って各戸に回した方が効率が良い。

そこに水素の持つ問題がある。まあ、日本の場合は化学プラントも多いので、やろうと思えばある程度の水素社会は可能だが……。それも……。

<水素の充填に残るリスク>

水素ステーションは、ガソリンより危険度が高い。揮発油でもあるガソリンは常温でも揮発するためリスクはあるが、水素のように常温で気体のものを低温圧縮して入れる水素ステーションよりは遙かにマシだ。700気圧(70MPa)という高圧で、やっとガソリン車並に近い水準で走ることが出来るこれを、3分で満タンにするには、700気圧を最初から供給できる充填機が必要だが、今のところそれ自体がない。それを示しているのが上記の記事である。

フル充填に20分掛かるというものだ。結果、5割から8割の充填で利用されることになり、走行距離は半減~3/4程まで低下する。それなら電気自動車で良いじゃんという話になる。

他にも水素は酸素がある場所で、火種でもあれば、ガソリンとは段違いの燃焼を起こす。さらに、液体の水素はマイナス252.6度以下でなければ存在できない。ということは、万が一漏れ出しでもして、そこに人でもいれば、下手をすると発火しなくても大やけどを負い死ぬことになる。だから、高圧処理時の気体安定性を保たねばならない。
それらを踏まえると、防火体制や安全体制、充填方法などにまだ課題が多いのだ。

これらが解消されたときに始めて、やっと普及の最初のステージが見込めるようになる。


<燃費は微妙>

尚、燃費は施設での管理なども費用に含めた場合、実はガソリンより悪いと言われる。だから、環境発電による空気や水からの水素生成を研究しているわけだが、今のところそれも、難しい。そもそも、水素を高圧で充填するには、過冷却関連の問題を解決するため、充填時温度を保つ必要がある。これらにコストが掛かるから、石油社会で普及させるのは難しいのだ。

但し、一部個人記事に書かれているような、熱効率(熱変換効率やエネルギー効率)は、実は凄まじい程高い。ガソリンなら1kg(1L)辺り、30kmぐらいしか走れないが、水素の場合は1Kgで100kmぐらいは軽く行くのだ。但し、水素は比重が極めて軽いため、同じタンクに1気圧で入れると、重さにして3%以下しかない。そう言われると700気圧になる理由が分かるだろう。

EVが次世代となってしまったのもそのせいである。


<それでも必要?>

と言われると、必要とされる。何故かというと、水素は水からも電気分解によって作り出すことが出来るからだ。
それが出来ると言うことは、蓄電池の代わりになり得る。但し、現状では燃料電池システムそのものの発電効率がまだ理に適うほどには達していないので、ガス温水器のようなシステムでなければ、効率が得られない訳だ。最も、ガス温水器は都市ガスを使うので、究極のエコにはほど遠い。だから、2030年や40年に市場で大きなシェアを得られるようにはなり得ないと考えられ始めている。

まあ、これも実は卵かニワトリかの話と似ていると言われる。別に発電効率が低下し無駄が多いとしても、太陽光発電などで電力が余るような社会なら、実はそれで水素を作り、燃料電池として扱うことは出来る。燃料電池システムの寿命がバッテリーのサイクル寿命を上回るなら、その方が実は長期的には良いエコロジーになるだろう。

しかし、今の時点でまさに電力が足りない状況にあり、火力発電所などで作っている電力で水素を生成するなら、それはエゴロジーになってしまう。エコロジーサイクルではなく、エコと称したエゴなのだ。

尚、現在水素ステーションで使われる水素の多くは、石油精製時などに生まれる中間生成物や、LNG、LPGなどのガスを生成する際などに生じる二次生成物が利用される。

まあ、日本ではこれでも韓国などに比べると遙かに、世界から見れば普及させやすい土壌がある。化学プラントをもつ事業者が多いからだ。そんな日本でも、水素ステーションの設置管理コストは未だ高く、自動車ハード(FCV)のお値段も高いため、2030年や40年の目標を達成するのは無理だろう。もしもそれを本気でやるなら、EVよりもFCVを徹底して普及させないと難しい。そして、車両補助金を、MIRAI換算で4/5補助するぐらいになれば、売れるかも知れないが水素ステーションの設置は追いつかず、結局水素ステーションも採算が取れず赤字になるかもしれない。そして、財政にも痛みを伴うだろう。


とどのつまりは、ガソリン車やディーゼル車(軽油車)は大量に普及しているが故に他が参入するには難しい程に安く、手軽になっているということだ。これをチェンジするには、国などがEVなり、FCVなりに仕向けるしかないと言うことだろう。まあ、実際にEVシフトは今の経済情勢がよほど悪化しなければ、時間の問題になりそうだ。



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