「海に放出しかない」=福島第1原発の処理水-原田環境相……説明出来ない行政と政治。そして、環境相がこれって。
時事通信社の記事である。政権支持している人でも、これは妥当な言葉に聞こえるのだろうか?
だとしたら、目指しているのは絶対王政のような政治なのか、それとも投げやり政治かな?
ここで問題なのはtritium(三重水素/トリチウム)がどれほどの量含有された状態でどのように流すのか、そしてその結果どういう可能性が考えられるのか?他の方法はどうだったのか?という点は述べないことだろう。これなら、問題になるのは当然だ。
まあ、そもそもの話、今の段階で原子炉建屋はほぼ機能していないわけだ。そして地下水が原子炉建屋には流れ込んでいることも分かっている。
その状況で……皆までは言わないが、もっと大きな問題があるんじゃないの?という話は世の中されないところでも既に一部からは不審がられているわけで……。何を持ってアンダーコントロール(Under Control/制御下・収拾済み)で何を持って、クリティカル(Critical/危険)とするのかの矛盾も既にある。
だから、トリチウムを含んだ水を流してもよいとか、ダメとか、そういう話をする人はいても……。誰も科学などの根拠をちゃんと皆に分かってもらえるように説明したり、案がいくつあってどうしてそれになったのかを、しっかり説明する人はいない。本来は、それを説明するのは経産大臣(国民と環境相に説明)→それを受けて環境大臣→環境アセスをかけた上で納得してから、「しかない」ではない説明が必要だ。
環境大臣がこれでは、大臣として適正なのという話になるのは当たり前だ。
今回もどれほどのトリチウムを含んだ水を、一体何ヶ月排出する予定なのか等詳しいデータは示されていないようだし、トリチウム以外は本当に完全除去されていると証明できているのかも、よく分からない。
<科学的根拠の説明>
IAEAは以下のような報告書を出しているが(英語)
日本の環境省は以下のレベルである。本来環境省は、自然環境に対して保全や安全を図るための組織だが、この件に関してはあまり本気ではないのだろう。だから、問題視されるのだ。本来は、是正などの観点で動くべきで、環境省はむしろこれに対しては、最後まで否定する方が、社会からは評価されるだろう。環境相はここ数年ろくでもないことを発言することが増えた。
ちなみに、トリチウムの処分などをデータで出しているのは経済産業省である。こっちは、かなり詳細に書かれているが、如何せんデータが既に古いように見える。もしかすると別にあるのかも知れないが、私がパッと調べた限りではタスクフォースが目に入った。
これらを、原発から汚染水を汲み上げ続ける限りずっと排出するのか、それとも一気に1度タンクを空にして、次の10年ぐらいは予定では搬出を始めるため、後は貯めるのか……全体の目処を示すこと、それに国民の多くから同意をいただけるように発言する(説明する)ことが大事だがそれも明確には行われていない。気になったら以下を読んでねって……。
<トリチウムの危険性・安全性>
では、トリチウムは危険なものなのか安全なものなのかというと、上記した量を一気に流せばリスクが伴う可能性はあるだろうし、先も見えずにずっと流し続けてよいかというと、不安になる人が出るのは当たり前であり、例え海外ではという話をしても実は海外でも時よりの漏洩・漏出事故と、制御下での放出は生じるものの大量に溜めたタンクからの意図的放出は行ったことがない。だから、日本政府は少なくとも日本人に対しては明確にその状況を示し、ロードマップを正確に開示しなければならない。
そもそも、絶対に安全とはだれも言っていない。
あくまで、測定限界に近づく程度に早期に希釈されるか、一時的に体内に少量入っても、リスクには至らないというものである。(ちなみに持続的に入ったり、既定を超える容量を摂取すると危険とされる)
だからこそ、危険性という観点では、今の研究ではそれほど大きくはないだろうとされている。まあ、危険があったとしても水溶だとそれがトリチウムによるものかを確認する術がまだ十分になく、体内に入ると自然環境中よりも早期に同位体は崩壊するようで、長期視点での観察はまだ出来ていないとも言えるのかも知れない。日本の記事は微妙なので、以下の記事などがよいだろう。
実はトリチウムは蓄光塗料(蛍光塗料)として90年代まで時計などに使われていたものだ。今は、別の物質が使われている。
これの長期被爆リスクというのは、上記したように現状でも存在しており、十分に希釈されないなら、リスクがあるとされ、安全に配慮するなら含まないに越したことはない。そこで問題となるのは福島第一原発の沿岸部は希釈に適した地形(海流)なのかだろう。
海流などを計算の上で、問題なく世界に満遍なく広がるなら影響はまず出ないと考えられる。しかし、もし第一原発周辺に留まるような状況ならその周辺で長く排出を続けると汚染される可能性がある。また、半減期が12.3年と短いとしてもずっと12.3年の半減期が排出されるようなら……って問題もある。
一時期か長期の話かというのもこれにおける大事な点だ。
まあ、そもそも海に放出する選択をして他を選ばなかった理由が、予算だったならその説明なども会見などで総理大臣や経産大臣などが腰を落ち着けて国民に説明するのが好ましい。しかし、今の政権はそういう説明をしない。この点は民主党政権より悪い部分だ。都合の悪い話は、都合の悪いままに受け流しておけば、一部の賢い支持者が反対者は大馬鹿者ぐらいで広めてくれると思っているからだ。
しかし、反対者がそういうのも当然で、知らない人々は、ちゃんとかみ砕いて説明をしてもらわないと分からない。
問題は、環境大臣なども説明出来ないのであれば、彼らも実は納得出来ていないのではないかということを意味している訳だが、そういう話に向かうことも今のメディア(報道)では起きない。結果的に、馬鹿(自分の好きな人に私が正しいと言われるとそれを鵜呑みにする輩)と阿呆(自分で調べて欠点と利点の間を探れない人)の応酬になる。
いっそ国民投票法でも(本来は憲法用)使って、金を使ってでも地中保管、空中散布(気化)、またはタンクを今の3倍ぐらいに増やして、回収まで時間を稼ぐ案も模索するか、保存、無茶苦茶な値段(コスト)が掛かるが除去技術を確立するなど提案するのも一つの手だろうが、そういうのをするにも、説明もされていないのだから……政治も、行政も情けない話だ。
<国民に説明しなければ理解も反対も対策も得られない>
これは常識だ。そして、説明するというのは国会だけで専門の者が、説明すりゃあ良いとかそういう話じゃない。必ず大臣なり責任者が出てきて自分が、最終責任を取ってもよいと言えるだけの納得が出来ましたという状況でなければならない。今の政治はそれを恐れてやりたくないから、その説明をせずに、それしか無いとか言ってしまう。それでは、誰かがこれしかないんですと言ったから、仕方なくやる。でも、自分は何かあっても責任が取れませんと言っていることになる。
総理にしろ今の政権内の担当相にしろ、都合のよいときに自分の支持率に繋がることだけ、国民に向けて発信することがあるが、あれをこれでやればよい。それで、納得が得られないなら、既にタスクフォースで出ている他の案でボツ案をどれか選ぶしかない。どれもダメというのは現状ではあり得ないはずだ。
国民全体でその中から一つを選ぶのだ。そこに税を投じても、東電を破綻させて資産を売り払ってでも……。
尚、海外と日本の違いを一つ書くと、実は海外は大きな河川に連なる場所など、一定の流れがある場所に原発を作ることが多い。これは、日本とは違って大陸は、急峻な斜面が少なく、川が氾濫しにくいからだ。そして、流れがある方が、水温が一定に保たれやすく、管理がしやすい。
そのため、よほど大量に漏れ出さない限りは、計測限界にすぐに達してしまうことに強みがある。日本は、河川が急峻な場所も多く、水量も天候によって左右されやすい。だから、海沿いで海水をベースにする一次冷却水の取り込みと排出を行っている。それ故に、流れが川ほどは生じない場所もある。だから、取水と放水の設備には場所によっていくつか違いがある訳だ。だから、実は余計に説明が必要なのだ。(以下URLは電気事業連合会の温排水対策)
福島第一原発は果たしてどうなのか?そもそも、炉心溶融が同時に複数で起きた原発において、その量はIAEAと、東電や政府と、それとは別の第三者機関(資本関係が全く無い国外や国内の機関2つぐらいが望ましい)などに調査をちゃんと依頼して、調べた結果なのか?などは重要だ。ここまでやれば、ほぼ間違いなく、どの国も日本に対して危険という認識はしないだろう。
それでもし、問題があるならそれはそれで、それに従った対策を取れば、評価が得られるわけでやりやすくなる。今の日本の原発対応は、結局臭いものに蓋をして避けているように見えるから、多くの人が懸念しているのである。そして、大臣も自分が何の大臣なのか分かっていないもの問題だ。環境大臣は、環境アセスを元に、最後に説得させられる側であり、しかないからやるだったら、絶対に放出は反対する側だろう。
それがこうなっていることが、選挙に行きたくない人を増やし、政治不信を増やしている訳だ。
東電やその関連会社(東芝など)も元が民間企業なら、こんな対応じゃいけないことぐらい分かっているはずだ。政府や行政はそういう企業が懸念を払拭するために何をすれば効果的かもう一度吸い上げて、国民に理解が得られる説明と説明するためのデータの提供を尽くすべきだろう。
<説明などしないだろう>
まあ、どうせ強行するのだろう。それでも、政権支持率は下がらないことが分かっている。これは下手をすれば大きく支持率が墜ちる恐れもあり、面倒くさい話だ。だから、責任はとれないけどそれしかないんだと言って後は、ひたすら風が止むのを待つだけだろう。
この国は、既に無関心や、仕方ない、他よりマシ、またはアンチ総理という形で、政治としては民衆が終わっているのだから。民主制の合理的な議論や説明というプロセスは死語である。ちなみに、ちゃんと合理的に説明出来る人ほど、野党アンチと与党アンチは粗を探しまくって強く批判をするので、ドンドン質が低下するという足の引っ張り合いもセットで付いてくる。だから、余計に人は説明しなくなる。
本来は説明に対して、批判しつつも間違いがあるなら指摘して、よいところはよりよく評価しつつ悪い所を修正するのが議論や討論の重要な点であり、廃案、批難、強行可決なら政治家など要らない。そのレベルなら、政治家ではなく官僚と元老で内々の話だけでもよいし、国王が「これで決まり!」と言ってもよい。
そういう政治を願う人はきっと少ないはずだが、多くの人は政治の本質を見失い我を忘れているようだ。特に、強く政権擁護と政権批判をする人は、話にならない人が多い。専門家さえも……。
私が調べた限りでは、放出しかないと、断定でき、それが安全だと示せるデータはまだ開示されていないように見えるが、それを責任者が出して示し、暫く世間の評価を聞く必要があるだろう。
しかし、この発言をしたと言うことは、最初から説明する気など無く、何か問題があっても自分は責任を取れないし取らないと言ったことになる。環境アセスの専門である環境大臣がそれほど匙を投げているということは、内閣の誰も責任は未来に対して取れないということだろう。逆に言えば、危険かも知れないとか、海外から批難されるかも知れないと恐れているのが見え見えだ。
どうせ、マスコミも今は都合の悪い話はせず、叩ける相手を批難する世の中だ。即ち、説明は果たす気がないのだろう。
まあ、原子力というのは事故が起きなければ、面白い物理科学分野である。ただ、それをこの国で災害時でも確実にコントロールできるのかは、議論の余地があり、その議論は決してある程度多くの人にとって分かり易くなるようには行われていない。絶対必要派と不要派の応酬で終わっている。本来はそこではなく、如何に安全を担保出来るのか?出来ないのか?ゴミは処分出来るのか?出来ないのか?が問題なのだ。
これしかないから、これをやらないと今都合が悪いからやるというのは、後でそれをやると言った人、またはやると言った人の子孫でも責任を取って貰うことが出来るなら、それでも良いだろうが、仕方ないで先延ばしにするなら、それは運が悪ければ福島第一原発の事故と同じ事が再び繰り返されると示している。国民の代表たる政治家がそれでは問題以外の何者でも無い。
そして、それを政治家として選んだ有権者は本当にこの人を信任してよいのか?考えて欲しいものだ。
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